"日雇い労働者の街"と歩む病院がリニューアル 街を支える『ある時払いの催促なし』
2020年12月01日(火)放送
大阪市西成区の釜ヶ崎の唯一の総合病院が、12月1日にリニューアルオープンしました。半世紀にわたって日雇い労働者たちを支えてきた病院が、地域に開かれた総合病院として新たに生まれ変わります。
12月1日午前9時過ぎ。労働者の街・釜ヶ崎で大がかりな引っ越し作業が行われました。「あいりん総合センター」の中にある「大阪社会医療センター付属病院」。耐震強度不足による閉鎖によって、約30人の入院患者が200m離れた新しい病棟へ移されるのです。この地区で唯一の総合病院は釜ヶ崎の歴史と共にありました。
1970年、労働施設や病院などが入る「あいりん総合センター」が建てられました。バブル期には仕事を求めて多くの労働者たちが押し寄せました。
夕方になると、センターの5階~7階にある病院も、仕事帰りの労働者たちで溢れたといいます。
この病院で約40年間、ソーシャルワーカーとして働いてきた奥村晴彦さん。当時をこう振り返ります。
(大阪社会医療センター付属病院総務課総務係 奥村晴彦主査)
「殺気と言いますか。仕事が終わって、仕事道具を持って、診察に来られるという方が沢山いらっしゃいました。だから1日に1回2回は病院内でいざこざがありましたね。」
また病院の入口のガラス扉が割られることもありました。
(奥村晴彦主査)
「暴動の時にここの病院も投石などがあって、玄関のガラスが割られるということがあったんですよね。」
そして、この病院では開院以来、治療費は『ある時払いの催促なし』を実践してきました。今でも“生活に余裕ができたら返済する”という借用書を渡し、無料や安い価格で診療を行っています。
釜ヶ崎の人たちを半世紀にわたって支えてきたこの病院。老朽化は深刻で、大きな地震が起きれば倒壊する危険があることから、大阪市は病院の建て替えを決めました。
(奥村晴彦主査)
「水漏れを起こしたり、ひび割れを起こしてきたりとか、随所に見られている感じですね。」
そして2020年12月1日に開業した新病院。感染症対応を含む80の病床を備え、最新の設備などが導入されました。ただ、釜ヶ崎で働きたいという看護師は少なく、一部の病棟はまだ運用できていません。新たな課題を抱えながらの再出発です。
(奥村晴彦主査)
「きれいな病院やから来たいなと言われるような病院になったらいいなとは思います。地域の皆さまが利用できるような、地域の病院として利用してもらえるような、そんな病院作りが一番の課題じゃないかなと思っています。」