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【特集】"鉄筋コンクリ城"が『木造』回帰!?費用82億円がコロナ禍で厳しく...悩む和歌山城天守閣

2020年11月27日(金)放送

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空襲で焼け落ち、戦後に鉄筋コンクリートで復元された城が、老朽化に直面しています。補修や耐震補強で乗り切る城がある一方、注目されているのが『木造再建』です。徳川家ゆかりの名城も木造での再建を目指していますが、様々な課題も浮き彫りになってきました。

和歌山城 ひび割れした“市のシンボル”

和歌山市の中心部に位置する和歌山城。1585年に豊臣秀吉の命で築城され、江戸時代にはここを居城とした紀州徳川家から8代将軍・吉宗らが輩出しました。現在は国の史跡に指定されていて、天守閣には年間20万人の観光客が訪れています。

(訪れた人)
「景色もいいし、立派なお城。」
「やっぱり素朴。武士(もののふ)の時代が残っている感じ。」
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市のシンボルとも言える和歌山城ですが、今、老朽化の危機に直面しています。天守閣の外壁にはひび割れが複数の場所で確認できます。

(和歌山市・和歌山城整備企画課 岡本和也課長)
「クラック(ひび)から雨が浸透して、中の鉄筋を錆びさせる原因の1つになる。錆びた鉄筋が膨張して躯体に悪影響を及ぼす。」
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天守閣の内部には天井部分の至るところに雨漏りでできた大きなシミが広がっています。4年前の台風で大雨が降った際の写真を見ると、天井から雨が漏れていて、それをバケツで受け止めていました。
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内部には貴重な展示品が並んでいますが、雨漏りの末、黒いカビが生えてしまったところもあります。

南海トラフ巨大地震で倒壊する恐れも

和歌山城の天守閣は、元々は木造の建物でしたが、終戦直前の1945年7月にアメリカ軍の空襲で焼け落ち、1958年に外観をそのままに鉄筋コンクリートで復元されました。

(和歌山市・和歌山城整備企画課 岡本和也課長)
「戦争の空襲で焼けて、木造は耐火性が低いというところもあって、RC(鉄筋コンクリート)構造で再建した。」

しかし、鉄筋コンクリートの耐用年数は50年~60年程度とされていて、今、建物として限界を迎えているのです。
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また、天守閣は太い柱でしっかりと支えられているようにも見えますが、耐震強度が不足していて、地震で倒壊する可能性があるということです。今後30年以内に70%~80%の確率で起きるとされている「南海トラフ巨大地震」では、大きな揺れが各地を襲い、和歌山市内は最大で震度7に見舞われると想定されています。ところが和歌山城は、2018年に行われた市の耐震診断で「震度6強~7の揺れで天守閣が倒壊する危険性が高い」と判定されました。

目指す「木造再建」の工事費は82億円…

そこで市は、取り急ぎ耐震補強工事を行う方針ですが、“それだけ”ではないようです。

(和歌山市・和歌山城整備企画課 岡本和也課長)
「往時の江戸時代の姿が木造だった。和歌山城を木造にすると魅力がまたアップするのかな。」
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そう、『木造再建』です。城郭考古学を専門とする奈良大学の千田嘉博教授も木造再建の意義についてこう話します。

(奈良大学文学部 千田嘉博教授)
「数百年前に武将たちが見ていた天守の外観だけじゃなくて内部の様子も歴史体験できるわけですから、どっちが優れているかといえば、木造で内部も復元したもののほうが、文化財の復元としてはより精度が高い。」

その上、伝統技術の継承にもつながるといいます。

(奈良大学文学部 千田嘉博教授)
「江戸時代の天守などに受け継がれてきた木造大建築の技術が、このままでは継承していくことが難しい。大工さんもそうですけど、壁を塗る左官さんや、瓦を作る職人さん。我が国の卓越した伝統技術を継承していって、次の時代に伝えていくということでも、大変大きな意義があると思います。」
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ただ、今ある城を解体して木造で再建するには82億円もの工事費がかかると試算されています。和歌山市民の受け止めは…?

(和歌山市民)
「後世にも受け継がれていくものだと思うので、お金を十分に使ってもらって、(木造で)建て直してもらったらと思います。」
「(木造再建の方が)風情があるし、財政的に許せるならやったらいいのでは。」
「その金額を聞いちゃうとちょっとビビります。違う形で税金を使っていただけた方が一個人としては嬉しいかなと思います。」

名古屋城 木造再建ですでに完成しているはずが…

一方、一足先に木造再建を表明している天守閣があります。和歌山城と同じく、戦後に鉄筋コンクリートで再建された名古屋城です。

(名古屋市 河村たかし市長 2009年)
「名古屋市民のシンボルという意味において、木造による復元が一番良いというのが私の持論です。」
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空襲前の写真や図面を基に復元し、当初は今年7月に新たな天守閣が完成する予定でした。ところが、築城当時の石垣を保護するための対策が不十分だとして、文化庁が天守閣の解体を許可せず、着工の延期が続いているのです。

(名古屋市・名古屋城総合事務所 荒井敦徳主幹)
「慶長の時代(1596年~1615年)から残っている石垣だとされていますので、これ自身が本当の大切な文化財。この石垣に影響がないような方法で解体・復元をしていかないといけないです。」
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名古屋市はスケジュールを練り直し、現在は2028年の完成を目指しているといいますが、天守閣の中に入れない状態が続いています。

新型コロナで和歌山市の財政も厳しく

和歌山城も、石垣の保護などに関し、文化庁の許可を得るのに時間がかかる見通しです。さらに…

(和歌山市・和歌山城整備企画課 岡本和也課長)
「昨今の新型コロナウイルス感染症の関係で、市全体の財源も問題になってくるかなと思いますし。その辺は(耐震補強に向けた)スケジュール感を見直す必要があるのかなと。」
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急ぎ必要な耐震補強工事の調査費すら来年度予算に盛り込むことが難しい状況だといいます。市長はどのように考えているのでしょうか。

(和歌山市 尾花正啓市長 11月24日)
「コロナの影響もあって、財源的には非常に厳しくなっているのは事実で、そうした中で耐震補強を優先しつつ、木造の復元についても視野に入れていきたいと思います。」

尾花市長は、スケジュールなどはいったん見直しながらも、木造再建を目指す考えは変わらないとしました。昭和の時代に鉄筋コンクリートで再建された城が、今、岐路に立っています。

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