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【特集】自治体独自の『妊娠届の質問』は必要なのか?妊婦も自治体も専門家でも分かれる意見

2020年11月19日(木)放送

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妊娠した女性が母子手帳を受け取るために提出する『妊娠届』。自治体によっては「中絶」などの辛い経験を尋ねる記載もあり、今、専門家や妊婦らの間で様々な意見が飛び交っている。

「流産・死産・中絶」質問は必要?

2020年8月、SNS上でこんなやり取りが繰り広げられていた。

【Facebookより一部抜粋 2020年8月】
『中絶や流産の有無を聞く茨木市・吹田市。もはや人権侵害。』
『妊娠した回数と出産回数まで聞かれた上に流産死産中絶まで聞かれる。モヤモヤしながらこの書面と向き合ってました。』

このコメントを投稿したのは茨木市に住む前田真理さん(44)。これまで5人の子どもを出産してきたが、毎回、妊娠届を市に提出することにためらいがあったと話す。

(前田真理さん)
「何でこれを書かないとアカンのかなということは思っていた。何か使われるのかと思ったら、5回書いても別にそのことを聞かれることもなかった。」

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茨木市は2020年9月2日に妊娠届の形式を変更した。“変更前”のものを見てみると、名前や妊娠月数のほかに、流産・死産・中絶の経験を尋ねる項目がある。前田さんには、こうした辛い経験をした過去があった。

(前田真理さん)
「嫌ですよね。それがどういう理由であれ、やはりお母さんは傷ついていると思う。それを毎回、忘れていることではないけれども、いちいち思い出さないといけないというのはしんどい。毎回、自分が妊娠して母子手帳をもらいに行って書く時に、それを思い出すので、今からって頑張ろうと思っている時に不安な気持ちにもなるし。必要ないよねと思います。」
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妊娠届とは、妊娠した女性が母子手帳を受け取るために自治体に提出する書面だ。妊娠届に記載する書式は、母子保健法の規則により名前・生年月日・妊娠月数・診断を受けた医療機関など6項目と決められている。しかし、多くの自治体で独自に質問項目を追加しているというのだ。

貝塚市「DVなどの有無を調べるため」

一体なぜ“流産などの辛い経験”を聞く必要があるのだろうか?取材班は、大阪府の43自治体の妊娠届を調べた。

守口市・吹田市・交野市・大阪市・田尻町の5つの自治体は、法律が定める6項目のみを尋ねる書式だった。一方、貝塚市の妊娠届を見ると“不妊治療”の経験を尋ねる項目が追加されている。どんな理由があるのか貝塚市に聞いてみた。

(貝塚市の職員)
「不妊治療も同意の元なのかどうなのかとか、DVが潜んでいる可能性があることも。全体像を掴むことによって、できるだけ早期に必要な人に必要な支援をスタートさせることが目的で作られているアンケートです。」

DVなどの有無を調べるために追加しているという。取材班が調べると、大阪府内では2020年11月19日現在は流産や中絶の経験を妊娠届に記載した自治体はなかった。

伊丹市「妊婦それぞれにあった支援につなげる」

さらに、関西のほかの自治体を調べてみた。兵庫県伊丹市の妊娠届には、流産・早産・中絶などの経験を尋ねる項目があった。その真意を聞いてみると…。

(伊丹市健康政策課 木村克治課長)
「死産や中絶といった項目につきましては、中には望まない妊娠をされた方もいらっしゃいますので、そういった方の支援にもつながると。病院等が決まっていない場合には、病院を紹介して、出産までの支援をつなげていくことが目的となっています。」

伊丹市では『妊婦それぞれにあった支援につなげるため』として、30年以上前から同じ書式で運用しているという。

「必要・不要」市民の間でも真っ二つに分かれる意見

では、市民はこうした記載についてどのように感じているのか。「必要」かそれとも「不要」かを聞いてみた。

(必要と答えた人の意見)
「問いかけは必要かなと思います。自分から中々言えない方とかもいるので。自治体から妊娠届を出すときに聞いてもらえると、初めてのお母さんとか安心かなと思います。」
「私自身が流産をしたことがあるので、病院の先生にはそういう経験があるということを知ってもらっていた方が、やはり次の妊娠の時に気にかけてもらえるかなと。知ってほしくない人には知ってほしくないという選択肢があるのが一番いいかな。」

(不要と答えた人の意見)
「流産の経験があります。1人目がいたのでそこまででしたが、当時は泣いて。当時聞かれていたら書きたくない項目かな思いますね。」
「不要かな。ずっと一生残るので。多分、すごく見たら思い出してしまうのかなと。人に見せるものではないと思うんですけど、中絶は不要かな。」
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伊丹市民50人に話を聞くと、必要だと感じる人と不要だと感じる人が25人ずつで、真っ二つに分かれる結果となった。

専門家でも分かれる意見

妊娠届の書式を巡っては、専門家の間でも意見は割れている。全国1200以上の自治体の妊娠届を調査した小児科の益邑千草医師は、『流産の有無などの項目は必要』だと話す。

(小児科 益邑千草医師)
「お母さんの体や精神に影響がある事情ということで、把握しないといけない情報のレベルとしては高い。虐待に近い状況になった家族の状況を分析しますと、(特に中絶経験者には)できるだけ早いうちに、まだリスクが小さいうちに関わって支えていく方がいいとわかってきて。それで妊娠届の時に十分に把握しようという話になった。」
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一方、毎月100人ほどの中絶希望者を診察する産婦人科の佐久間航医師は『自治体が中絶の過去まで把握する必要はない』と指摘する。

(産婦人科 佐久間航医師)
「やはり書面に残すのは非常にデリケートな問題だと思いますし。なんとか、そういう(妊娠・出産の)気持ちになれる精神状態に持っていけているわけだから。それをはなから要支援とかで色分けするのは、すごくその人たちにとってマイナスに作用するんじゃないのかなと。消せるものはどんどん消していけばいいと思うんですよ。」

大阪市「面談で聞く」対応

大阪・中央区にある「保健福祉センター」。妊娠した方が保健師と面談していた。

(保健師)
「妊娠おめでとうございます。保健師の門林といいます。いくつか聞かせていただきます。今回の妊娠ですが、つわりとかどうですか。」

大阪市では30年以上前から妊娠届を提出した妊婦全員と保健師が必ず面談を行っている。妊娠届に流産や中絶の記載はないが、面談で直接聞くようにしているという。

 (保健師)「今回の妊娠は3回目。今まで流産とか中絶とかはないですか。」
  (妊婦)「ないです。」
 (保健師)「ないですね。」

(保健師)
「何もなしでいきなりは、確かに抵抗あるかもしれませんよね。やりとりしていく中であれば、『話しても大丈夫だ』と思っていただいて、聞かせていただくということはできるのかなと思います。」

母親と生まれてくる子をどのように支援していくのか。その入口となる「妊娠届」の運用を巡っては試行錯誤が続いている。

(11月19日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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