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【特集】"○○"を食べさせ臭みが消えた?!厄介魚『ニザダイ』を寿司ネタに!大手回転寿司バイヤーの挑戦

2020年10月20日(火)放送

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「ニザダイ」という魚。実は海では厄介者扱いで、味も少々クセのある味だというのですが、ある“野菜”をエサにしたところ劇的に生まれ変わったといいます。

特有の臭み「ニザダイ」に目を付けた回転寿司バイヤー

和歌山県由良町。漁師らが引き上げた網には、高級食材の伊勢エビなどがかかっていました。一方で「ニザダイ」という魚もよく網にかかるといいます。ニザダイの顔つきはカワハギに似ているものの、スズキの仲間。体長は40cmほど、尾びれの3本線が特徴で、別名「サンノジ」とも呼ばれています。そんなニザダイ、ちょっと難点があるようで。
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(地元の漁師)
「食べる人が少ない。臭みがきついから。臭みが消えたらおいしい魚だと思います。年中、脂があるから。」

特有の臭みが敬遠され、ほとんど値がつかないんだといいます。
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そんな厄介者の魚に目を付けたのが、大手回転寿司店「くら寿司」の敏腕バイヤー・大濱喬王さん(33)でした。

(くら寿司・天然魚バイヤー 大濱喬王さん)
「ニザダイという魚は全国で漁獲されるのですが、ずっとなんとかならないものか、と考え尽くしてきた魚でした。」
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大濱喬王さんはこれまでに「みかんぶり」や「みかんサーモン」などのヒット商品を生み出してきました。なぜニザダイに目を付けたのでしょうか?

(大濱喬王さん)
「『低利用魚』という、あまり活用されていない魚を、おいしく召し上がっていただく環境を整備することで、漁師さんにも喜んでいただける。当社としてはお客様に新しい商品として提供できる。」

厄介な「臭い」と海藻を食べ尽くす「生態」

「タイ」というだけに、刺身にしたニザダイの見た目はタイそのものですが、課題の臭みはどんなものなのか。記者が刺身を試食してみました。

(記者リポート)
「食べている間はそんなににおいはしないんですけど、後味にすこし独特のにおいが残ります。」

わかったような、わからないような…。
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そこで、専門的な施設で分析を依頼しました。すると。
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(日本分析化学専門学校 渡邉快記副校長)
「ニザダイの切り身は『ヘプタン』という臭いが強く感じられる、という結果が出ました。いわゆる発酵食品のキムチと同じような臭いがするという検出結果が出ています。」

分析の結果によりますと「キムチのような臭いの魚」というわけです。
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さらにニザダイにはもうひとつ厄介な問題がありました。浅瀬に生息するニザダイは岩場に生える海藻などを主食としています。温暖化による海水温度の上昇で冬場も活発になって海藻を食べ尽くしてしまい、海を砂漠化する「磯焼け」の原因のひとつとされ、駆除の対象にもなっているのです。

解決策は『キャベツ』?!

商品化できれば「消費者よし」「漁師よし」「環境よし」と『三方良しの魚』となるニザダイ。敏腕バイヤーの大濱さんにはとっておきの秘策がありました。和歌山市内にある施設にやってきた大濱さん。そこに持ってきたものとは…

(くら寿司・天然魚バイヤー 大濱喬王さん)
「キャベツです。あと外の葉、捨ててしまう廃棄の部分をもらってきました。」

キャベツをエサに?突拍子もない発想に思えますが、確かな根拠があるようです。

(大濱喬王さん)
「ウニのエサとしてキャベツを活用するという取り組みが各地でされていて、その中で魚も(キャベツを)食べるというのを知りまして。」
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神奈川県水産技術センターの研究によりますと、同じ「磯焼け」の原因とされるムラサキウニにキャベツを食べさせたところ、海藻以上によく食べた上、甘み成分が天然のウニよりも増加したというのです。
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大濱さん、さっそくキャベツを串刺しにして、ニザダイがいる水槽に沈めますが…

(大濱喬王さん)
「食べないですね。やっぱり警戒していますね。」

そう簡単には食べてくれないようです。

キャベツを食べた!

別の日。キャベツを持った大濱さんは船に乗り込みました。

(大濱喬王さん)
「いけすに行きます。エサやりで食べてくれるか、確認しに行きます。」

海の中のいけすは魚にとってストレスが少なく、ここなら…と漁師らの協力を得て、キャベツを与え続けていたのです。また、キャベツの大きさを変えるなど、試行錯誤していました。串刺しにしたキャベツをゆっくり沈めていきます。いけすにいる約300匹のニザダイはキャベツを口にするのか。すると…
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  (漁師)「あ、食べてる!食べてる!下の食べてる!」
(大濱さん)「あ、すごい!初めて見た!」
  (漁師)「ほんまに、おいしくなったらええんやけどな、これ。」

海中の映像で見てみると、吊るされたキャベツにニザダイが寄ってきて…確かに食べたようです。長年、頭を悩ませてきた漁師も「キャベツニザダイ」に期待を寄せます。
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(紀州日高漁協 山口太志副組合長)
「いままでは『こんなやつか』と邪魔者にしていたけど、消費者が食べてくれるのであれば、それだけの価値がある。売れるとなれば少しでも収入源になるかな。」

キャベツを食べたニザダイを試食 お味は?

いけすでの食べっぷりを目の当たりにした大濱さん。キャベツで飼育されたニザダイを自らさばき、いざ試食。その感想は…?

(大濱喬王さん)
「渋みというか特有の臭いが、本当にその部分が消えていて、ただうまみの部分はしっかりあって、歯ごたえはタイとかハマチとか以上にコリコリした食感があるので、これはお客様にも喜んでいただけるのではないかなと。」

においが軽減され、さらに“柑橘系”のにおいも検出

ということで再び科学的な分析を依頼すると…。

(日本分析化学専門学校 渡邉快記副校長)
「あ、違うか。違うかも。臭いが半分ぐらいに減っている。弱く感じられないという結果が出ました。キャベツを食べたことによっておそらく発酵過程でその“においのもと”が、何かしら変わったのか軽減されたということが考えられます。」

分析の結果、においの性質が変わっただけでなく、新たな香りが出てきたことも判明しました。
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(渡邉快記副校長)
「レモンとかキャラメルのにおいが、キャベツを食べた時だと、(実際に)含まれているわけではないが、なんとなくそういうにおいが感じられる。ちょっと似ているぞと(数値が)出てきたので。もしかしたらキャベツを食べることで、柑橘系とか甘みのあるにおいが出ているのではないかと、このグラフからは言えます。」

「キャベツニザダイ」お客さんの反応は?

そして10月中旬、まだ試作段階ではありますが「キャベツニザダイ」の寿司を、くら寿司・東貝塚店の来店客に試食してもらうことに。大濱さんも緊張した面持ちで立ち会います。

(2人組の客)
「ニザダイ?初めて聞きます。」
「タイって出しても…」
「全然わからへん。タイめっちゃ好きやから、普通にタイやと思って食べてしまう。」

(客)
「なにこれ?おいしい。後味、みかんの味もする。」

反応は上々。海の厄介者が商品化に向けて大きく前進しました。
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(くら寿司・天然魚バイヤー 大濱喬王さん)
「魚の持っている味を、皆さんがどう判断されるのかなと思っていたのですが、思った以上に、ご好評いただけたかなと思います。漁師さんからお声をいただいて、お客様に『おいしい』と言っていただく、この流れが完成しないとお出しできないので。販売に向けて弾みがついたかなと思います。」

(10月20日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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