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【特集】「犬・猫殺処分ゼロ」目指すはずが... 不妊去勢手術費用のために寄付金「2800万円」集まるも 昨年度の手術はわずか"猫8匹"

2020年10月05日(月)放送

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和歌山市が犬や猫の「殺処分ゼロ」を目指し、3000万円近い寄付金を集めました。ところが、寄付金の管理から施設の態勢までずさんな対応が次々と発覚し、波紋が広がっています。

“クラウドファンディング”で集まった「2800万円」 その使用用途に波紋

9月24日の和歌山市議会・厚生委員会。議員が強い口調で担当者に詰め寄ります。

(和歌山市議会 芝本和己市議)
「いい加減にしてくださいよ、局長。クラウドファンディングした人からすれば、ふざんけんなよって話になってきません?」
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和歌山市は犬や猫の殺処分を減らそうと2019年10月、約2億円をかけて動物愛護管理センターを開設しました。それに先立ち、2018年に不妊去勢手術の費用をクラウドファンディングで募集したところ、目標額を上回る約2800万円の寄付が集まりました。ところが…

【和歌山市議会・厚生委員会 9月24日】
(芝本市議)
「報償金、自動車保険料、火災保険料。こんな今言ったような話がクラウドファンディングで使われましたって、(寄付)した人からすれば、そんなことに使っていただいたんですか、ありがとうございます、と本当に思うのですか?」
(和歌山市 健康局長)
「動物の関係で自動車を使うこともありますので、動物愛護の関連には使わせていただいていると考えております。」

寄付金を自動車保険の支払いなどに使っていたと説明し、議会は紛糾。この様子はSNSなどで全国に拡散され、市には苦情が殺到しました。しかし、その4日後の9月28日、和歌山市議会・厚生委員会で…
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(和歌山市 尾花正啓市長)
「当局の答弁に大きな誤りがありました。寄付金については全額使用しているのではなく、本年度末において約1370万円残る見込みとなっております。」

市の説明によりますと、集まった寄付金2800万円について、担当者は“年度内に使い切らないといけない”と勘違いし、設備費用のほかは保険代などで使い切ったと“虚偽の説明”をしたというのです。実際は寄付金の「目的外使用」はないと言い、まだ1400万円ほど残っていると説明を一転しました。寄付金を管理するため条例で基金を設立し、今後は手術に関する経費にのみ使うことが確認されました。これで「一件落着」に見えましたが…取材班が調べてみると、ずさんな実態が明らかになりました。

2019年度の不妊去勢手術は「猫8匹」

城下町にゃんこの会代表の奥康子さん。市の動物愛護管理センターから猫を引き取り、猫の譲渡会を主催しています。奥さんは今回のクラウドファンディングに怒り心頭です。

(城下町にゃんこの会・代表 奥康子さん)
「手術するって言ってクラウドファンディングをして、ならば手術に使わないとダメなんですよ。ダメだと私は思うんで、何を言っても言い訳にしかならない。」
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奥さんらは殺処分を防ぐためセンターの猫を引き取って譲渡先を探しますが、その際、事前の不妊去勢手術は欠かせません。和歌山市に期待を寄せ、仲間らと10万円以上寄付したといいます。しかし、センターが2019年度に手術した件数はわずか猫8匹だけ。奥さんはこれまでにセンターから猫58匹を引き取りましたが、手術済みだったのは2匹のみで、残りは団体の持ち出しで手術したといいます。

(城下町にゃんこの会・代表 奥康子さん)
「(Q不妊去勢手術の費用は?)メス1匹で8800円、オス1匹で5500円。(Qその分センターから補助は出るんですか?)まったくもらえないです。自腹で回しています。私たちがかけている医療費は2019年度で300万円くらい。」

手術8件の麻酔代に“18万円” 動物病院「あり得ない金額」

さらに、センターが手術に要した費用にも疑念が。和歌山市の資料によりますと、2019年度の手術8件でかかった麻酔代は18万円となっています。
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年間100件程度の手術を行っているという和歌山市の動物病院「アル動物病院」は「高額すぎる」と、驚きを隠せません。

(アル動物病院 阪井浩巳院長)
「麻酔代、薬剤費、縫う糸、その後の鎮痛処置であるとか。最低でも(1匹あたり)平均5000円くらい。(麻酔薬)18万円で8件ということは。(Q1匹2万円超えますね)その経費ということですよね。それはありえない金額になります。」

寄付で購入した機器にも疑問

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直接話を聞くため取材班は、和歌山市動物愛護管理センターへ向かいました。施設内には寄付で購入したという手術機器などがあります。

(動物愛護管理センター 廣岡貴之センター長)
「これが手術台(99万円)になります。クラウドファンディングで購入しました。照明器具は103万円。こちらの麻酔装置、これが割と高額ですね、118万8000円。」
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他にも寄付で購入したという「猫用の流水ユニット」。時間が来ると定期的に水が流れる仕組みになっていて、糞尿を洗い流す装置になっています。本当に手術に必要なのかはわかりませんが、流水ユニットは2つで475万円です。設備は標準的なのか質問すると…

(廣岡貴之センター長)
「動物病院さんでさまざま違うと思うんですけど、一応、動物病院の先生方にどのようなものが必要か確認したうえで、このようなものがあったら便利じゃない、割とやりやすくなるんじゃないというご指導を頂いて、機器については整備しました。」

手術件数「少ない理由」と「高額すぎる麻酔代」のワケは?

きちんと整備したというのなら、手術件数はなぜこんなにも少ないのでしょうか?

(廣岡貴之センター長)
「獣医師といっても今までは(手術を)一切やっていませんでしたので、学生時代にやっていたことをみんなで一生懸命思い出していた。それで実際に時間がかかっていたのもある。学生時代はメスを握ったこともあるし、実習もしますけど、卒業してからはその間30年以上一切それがなかったんです。」

この日も手術でしたが、3人の獣医師はそもそも手術経験がなかったというのです。一方、高額すぎる麻酔代などについては…。

(廣岡貴之センター長)
「麻酔をかけるにしても当然5分で済む麻酔と30分、1時間かかる麻酔では使用量が異なってきますよね。1頭当たりにすごく時間がかかっていたのが事実としてあるので、そういったところでお金がかかってしまっているのかなと。」
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クラウドファンディングは「殺処分ゼロを目指す」という目標を掲げていたはず。8件という手術件数では態勢に不備があると言わざるを得ません。手術していくために開設したのであれば、事前準備や民間病院と協力はできなかったのでしょうか。

(廣岡貴之センター長)
「動物病院さんも患者さんから預かっている猫ですよね。それを我々に練習に提供してくれ、というわけにはいきませんので、事前の準備はあくまで机上で訓練していくしか方法が無かった。」

専門家「極めて無計画な事業」

地方自治に詳しい専門家は寄付金を集めることに対し、和歌山市の認識が甘すぎると指摘します。

(同志社大学大学院・総合政策科学研究科 新川達郎教授)
「使途目的を限定した、特定した寄付を受けるということになりますと、それに対応した自治体側の体制作りも重要になってきている。設備がいるから、そのお金だけを集めてくればなんとかなるという、極めて無計画な事業と思えてならない。」

善意を踏みにじる行政の怠慢。和歌山市の尾花市長は関係者の処分も検討しているということです。

(10月5日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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