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【特集】『自分らしい生活』を思い思いに楽しむ姿を見てほしい 障がい者たちの放送局が伝えたい思い

2020年08月05日(水)放送

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企画から取材、収録まで。知的障がいのある人たちが中心となって活動する『インターネット放送局』が東大阪市にあります。社会に出て思い思いに楽しむ障がい者の姿を見てほしい。彼らの強い思いの背景には、あの事件の存在もありました。

知的障がい者たちが中心となって製作する番組

東大阪市にあるスタジオで2人のキャスター福田さんと辰巳さんが収録に臨んでいます。

「きぼうのつばさへようこそ。」(福田さんと辰巳さん)

原稿を読むのがちょっと苦手なようで…

(福田さん)「地域で自分らしく暮らそうとしている…」
  (職員)「“仲間”を。」
(福田さん)「仲間を紹介します。」
  (職員)「一回止めてもらって。」
(福田さん)「緊張すんねん。」
  (職員)「深呼吸して。背筋伸ばして。じゃあカメラお願いします。」

ここはインターネット放送局「パンジーメディア」。知的障がい者らが中心となって製作しています。キャスターの2人にも知的障がいがあります。

(福田さん)「一生懸命生きてきた、よつたさんの75年…が詰まってます。」
  (職員)「75年って言いにくい?75年だけ言ってみて。」
(福田さん)「75年」
  (職員)「言えたー。」
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カンペが読みにくいときは…

(職員)「福田さんの読みの癖を考えてカンペを作らないと。」
(職員)「ハサミで切ったらいいじゃん。」

一文ずつ読めるようにハサミで切って、順番にカンペを出します。

パンジーメディアはグループホームを運営する社会福祉法人が中心となって2016年に活動を始めました。約50分の番組『きぼうのつばさ』を月に1本製作しています。
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そこに映るのは、料理や釣りなど、好きなことを思い思いに楽しむ障がい者の姿です。放送開始前に起こったあの事件が影響していました。

「津久井やまゆり園」殺傷事件受け…知的障がい者らから寄せられた意見や思いを紹介

パンジーメディアが発足した直後の2016年、神奈川県相模原市の知的障がい者施設「津久井やまゆり園」で、元職員の男が入所者らを刃物で刺し、19人が死亡、26人が重軽傷を負いました。

パンジーメディアは知的障がい者らから寄せられた意見や思いを紹介するなど、この事件と向き合ってきました。
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「(事件を)伝えた時に当事者が受け止め切れるだろうか。みんなもニュースで聞いて知っているが、口にしていいのかどうか…。そういうふうに思っていた人が多くて。知的障がい者がまだまだ一般的に自分の思いを発信できていない、そういう中で私たちの役割は発信していくことだね、というふうになって。」(パンジーメディア 林淑美さん)

「やまゆり園の支援の質に疑問を持っている」息子を転居させた男性

当時、次男がやまゆり園に入所していた、平野泰史さん(69)。事件の前から、園の方針に疑問を持っていたといいます。

「(事件が起きたことに)不思議なことに僕はそれほどびっくりしなかった。こういうことが起きてもおかしくない施設の雰囲気や土壌は元々感じていたし。」(次男がやまゆり園に入所 平野泰史さん)

神奈川県の調査で、やまゆり園では長時間部屋を施錠するなど、入所者に対する身体拘束が25件あったことがわかっています。平野さんは事件後、息子を施設ではなく、一般の住宅で障がい者同士が共同生活する「グループホーム」に転居させました。

「やまゆり園の支援の質に疑問を持っているので、建物だけ新しくしたところで変わるとは思えない。(グループホームは)施設よりは、はるかに自由度はあるし、本人の思いは通じやすい。」(平野泰史さん)

やまゆり園は『入所施設』にあたります。ここでは施設の入所者に入浴・排せつ・食事の介護などを行います。入所者は1日のスケジュールが決まっていて、ルールに従って生活し、施設への出入りが制限されていることが多いといわれています。

一方で『グループホーム(共同生活援助)』は、同じ障がいのある人同士で共同生活を行う住居です。職員が訪れて家事などの援助や相談を行う場合はありますが、入所者は自分らしい生活を送ることができるという声があります。ただ、障がいや性格によってはなじめない場合もあるといいます。

「地域でのびのび悠々と暮らしてほしい」グループホームで生活する女性

パンジーメディアで記者をしていた永井広美さん(47)。家事などは少し手伝いが必要な場面もありますが、グループホームで生活しています。

(Q洗濯とかも自分でやる?)
「はい、しんどい時は介護者に手伝ってもらっているけど、これは自分で干します。」(永井広美さん)

永井さんはやまゆり園の事件から1年後、“施設のあり方”に疑問を持っていた先述の平野さんを取材しました。永井さん自身も過去に障がい者施設で暮らしていて、26歳の時に虐待を受けた経験がありました。

「障がい者じゃなくて普通の人間になりたい。ちょっと辛いなって…障がい者。こんな施設(入所施設)は二度と行きたくない。」(永井広美さん)

建て替え工事が進む「やまゆり園」。残された入所者は、新しい施設で暮らすのか、選択を迫られていますが、取材した永井さんは。

「地域でのびのび悠々と暮らしてほしい。今は幸せ、グループホームに来て。幸せに生きていきたい。」(永井広美さん)

パンジーメディアが発信したいこと『自立して暮らす方法がある』

『障がいがあっても自立して暮らす方法がある』

パンジーメディアは、障がい者や介助をする人たちに向けた上映会を行い、こうしたメッセージを発信しています。この日は東大阪市にある草の根共生会で行われていました。

【上映会の中で流された映像】
『今まで入所施設におって、おれはもう…今までずっと生きてきたけど、奈良に来てとてもうれしかった。』
『入所施設ではなく、安心して過ごせる場所があるんだということを知ってもらえると思います。』

上映会に参加した人は…

「障がいがある人もない人も、自分らしく生きることは大事だと思うので、自分が大切にされていると感じられるような支援をしていきたいなと思いました。」(参加者)

「将来は結婚したい」永井さんの夢

再び、永井さん。施設を出て11年、永井さんには夢があります。男性と2人で写る写真を見せてくれました。

「将来は結婚したい。(Q彼はどのような存在ですか?)優しい、支えになってる。将来は結婚したい、こういう家の部屋で。」(永井広美さん)

(8月5日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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