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【特集】難病ALSを生きる夫婦 嘱託殺人事件への思い

2020年08月04日(火)放送

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全身の筋肉が動かなくなる難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患った女性からの依頼を受けて殺害したとして2人の医師が逮捕されました。同じ病気を患う女性とその夫はどう感じたのでしょうか?

ALS患者の女性がSNSに綴った病気への思い

ALSは、運動神経系に障がいが起こる進行性の神経疾患で、徐々に自分の意思で体を動かすことが難しくなる一方、意識はしっかりとしていて精神的な働きはまったく障がいされないことが大きな特徴です。

2019年11月、京都市内の自宅で亡くなった林優里さん(51)。林さんからの依頼を受け、薬物を投与して殺害したとして2人の医師が嘱託殺人の疑いで逮捕されました。

林さんのブログやSNSには、病気への絶望感が綴られていました。
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【林さんのツイッターより一部抜粋】
『操り人形のように介助者に動かされる手足。惨めだ。こんな姿で生きたくないよ。』
『屈辱的で惨めな毎日がずっと続く ひとときも耐えられない #安楽死 させてください』

ALSを生きる夫婦

兵庫県西宮市の米田晴美さん(68)。今から19年前、48歳の時にALSを発症しました。呼吸器をつけているため喉に管を入れて痰を吸引する作業が欠かせません。
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以前は絵画教室の講師などとして活躍していた晴美さん。夫の米田裕治さん(69)は発症直後にサラリーマンを辞め、妻の介護を続けています。

7月29日、取材をさせて頂いた日は、理学療法士の方と裕治さんが、晴美さんの足の裏をトントンとたたいたり足首などを軽くもんだり、晴美さんの身体を動かしていました。

「この病気っていうのは、動かしてもらわないと硬縮してくるので。使わないから動かなくなるという現象が強くなるので、ストレッチとか。」(米田裕治さん)

晴美さんは、顔の筋肉が比較的よく動くため、唇の動きなどを使って意思疎通を行います。よく使う言葉であれば晴美さんの口の動きと文脈だけで相手も読み取ることができますし、わからない場合は相手が晴美さんに『あいうえお』と順番に声をかけて、それに合わせて晴美さんが顔の動きで合図をすることで、文章を作り上げていきます。

【晴美さんと意思疎通をする理学療法士】
「車いすに乗れ、あかさたな(合図)、乗れな、うく(合図)、乗れなく、なる、から、頑張る。」

週に2回のショッピング

この日は車いすに乗って百貨店へ買い物に行くといいます。裕治さんは晴美さんに、ピンクのスカートを着せています。

(裕治さん)「百貨店はね、カジュアルな格好で行っちゃいけない。百貨店に行くいうたら正装して出かけるぐらいの…ね。」

裕治さんの言葉に笑顔で応える晴美さん。そして裕治さんと理学療法士の方の2人で晴美さんを抱き上げます。
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(裕治さん)「軽っ!軽いと言わなあかんねん。必須や。」

夫の裕治さんは妻の晴美さんを車に乗せ、週に2回、ショッピングに行くといいます。晴美さんもおでかけするのが大好きだそうです。

アクセサリーのお店にやって来ました。裕治さんが声をかけ、晴美さんが表情で応えながら、買い物が進みます。

(裕治さん)「え?ヘアバンド?ヘアバンドとカチューシャどう違うの?ちょっと待って。(ヘアバンドを手に取って)こっちの方がよくない?これじゃないのね。グレー?こっち?下?」
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晴美さんが選んだヘアバンドを、裕治さんが早速晴美さんの頭に。スマートフォンで晴美さんの顔を映し、晴美さんがチェック。

(裕治さん)「こんなんでええやんな?ま、え、が、み、前髪出せ?ははははは!」
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元々は高校の同級生だったという2人。今も学生だった頃と変わらず、何気ない会話を交わしながらデートを楽しんでいます。

(裕治さん)「強いですこの人は。私の体力の続く限り付き合いますけど。ん?」

この言葉に対して晴美さんが笑顔で応えます。

(裕治さん)「ん?が、がん…『がんばりや』って言ってます。」

嘱託殺人事件 夫婦の思い

今でこそ穏やかな日々を送る2人ですが、症状が出た直後は病院をいくつも回って激痛を伴う検査を繰り返し受けるなど、辛い日々が続きました。別の日、2人に事件について聞いてみました。
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(Qお金を払ってまで死を選ぶという判断についてはいかがですか?)
(晴美さん)『めっちゃわかります。自分はずっと普通のつもりでもこんな顔になっているし。ショック。』
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(裕治さん)「(事件は)非常にショッキングでしたし、あまりに妻を取り巻く環境とは、おそらく大きく違ったんだろうなとは直感的に思いました。おそらくその方は、社会での存在価値が非常にあった方というか、すごく自負があったと思うんですね。存在価値に対するね。お仕事がバンバンできている時はね。悲しいかなそれが一切感じられなくなった時に、大きなショックを受けられたのかなと。」

存在価値が自分を支える

裕治さんは2019年、2人で高校の同窓会に出席した際の光景が、今も忘れられないと話します。

(裕治さん)「この人のまさに存在価値を僕はすごく感じたんですよね。最後の集合写真にしても、この人を中心に撮ってくれるというね。素晴らしい出来事が起こるわけですね。だから是非ね、そういうところまで頑張ってもらいたかったかなと。誰かがそういう道をつけてあげることができなかったのかなという思いも含めてね。それは私も晴美も思いましたね。存在価値と言うものは、長期的に自分を支えていくものではないのかなと。そういうものが、とっても今この人を支える力にはなっていると思いますね。」
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(8月4日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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