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【特集】エコノミークラス症候群で男性死亡...労災認定のカギとなる"過重負荷" 真相迫る「3日前の動画」

2020年07月30日(木)放送

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7年前、海外出張中に1人の会社員の男性が亡くなった。死因はエコノミークラス症候群。遺族は労災認定を求め、国と争っている。「仕事が原因だと証明したい」とする遺族が見せてくれたのは、男性が亡くなる直前に撮影された動画だった。

海外出張最終日に死亡 時間外労働は過労死ラインを超える

電池メーカーで営業担当だった男性(当時36)は2013年、中国と香港への出張中に宿泊先のホテルで死亡しているのが見つかった。6日間の出張の最終日だった。

「香港に行ってなかったらこんなこともなかっただろうし、全て仕事で起こっている。仕事以外考えられない。」(男性の母)
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男性の母らが調べた結果、死亡する直前の2か月間の時間外労働は「過労死ライン」とされる月80時間以上を大幅に超えていた。死因は肺塞栓症、いわゆる「エコノミークラス症候群」だった。労基署は、死亡直前4か月連続で過労死ラインを超える時間外労働があったことを認定。ところが労災は認められなかった。立ちはだかったのは『対象疾病』という壁だった。

「なぜ同じ病気で、同じような認定基準がある中で、これほど大きな官民格差があるのかということを非常に不合理で不平等ではないかと感じております。」(遺族の代理人 李暎浩弁護士)

エコノミークラス症候群は公務員のみ対象疾病

国は過労死との関連が強い病気として、脳梗塞や心筋梗塞など8つを労災認定の対象疾病としている。「対象疾病を発症」し、「業務による過重負荷があった」という2つの要件が揃うと労基署は労災と認めている。しかし、エコノミークラス症候群は公務員のみ対象疾病とされ、民間には適用されない。そのため、過重労働によって発症したことを個別に証明する必要がある。

座っていた時間は6日間で計90時間に

発症の原因は過重労働だったと言えるのか。エコノミークラス症候群は長時間座り続けることが原因で足の血管に血栓(血液の塊)ができ、動いたときにその血栓が血流に乗って肺にたどり着き、血管に詰まることで起きる。

男性は出張中、ホテルに帰っても徹夜でパソコンを使って仕事をするなど、座っていた時間は6日間であわせて約90時間にのぼった。専門家は、出張中に長時間座っていたことに加え、「仕事上の心理的ストレスが大きく関わった」と指摘する。
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「自分が得意としていないものも抱えなくてはいけないとか、そういった様々な心理的なプレッシャーは相当なものだったようですね。(業務と発症の)因果関係はあるというふうに私ははっきりと思います。」(埼玉医科大学総合医療センター 山本晃士医師)

山本医師によると、血液中にはPAI-1というタンパク質の一種が存在し、血栓を溶かすのを妨げる。心理的ストレスによってこのPAI-1が増加し、血栓が徐々に大きくなっていくのだ。

「行くからには成果を残さないといけない」

男性は出張先の中国や香港で、新規取引先の開拓を求められていた。出張前に記されたノートには「行くからには成果を残さないといけない」などと記されていて、大きなプレッシャーがかかっていることがわかる。
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さらに、医師が注目したのは出張中に男性が妻と交わしたメールだ。

【出張初日のメールより】
「今日の打合わせは中国語で全く何言ってるか分かりませんでした。仕事はつらそうだけど、頑張るね。」

出張初日は前向きな言葉もみえた男性。しかし、次の日…
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【出張2日目のメールより】
「今日は最悪。少しメールしたいな。」

言葉が通じないことに、より強いストレスを感じたと綴られている。

"わさびだけの寿司"を食べさせられ…

このメールの翌日、会食の場で、“ある動画”が撮影された。撮っているのは、香港で働く男性の上司だ。男性が食べさせられているのは、わさびだけの寿司。

【会食で撮影された動画の内容】
(上司)「わさびを、いっちゃってください。どういう反応をするか、これでおもろいかどうかで、明日からの対応は変わりますからね。」
(男性)「ゴホゴホッ…(※わさびだけの寿司を食べて咳き込む)」
(上司)「落ち着いたら感想を一言お願いします。」

この日、ホテルに帰った後、妻にメールを送っている。

【出張3日目のメールより】
「体調はプレッシャーと不安で慢性的な寝不足の毎日ですが、何とかやってるので心配しないで下さいね。出張来てからもずっと肩凝ってるし。体調不良まではいかないけど、しんどいね。特に精神的に。」

そして3日後、死亡しているのが見つかった。
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「わさびたっぷりのお寿司を食べた時の反応によっては明日からの対応が変わるかもしれないと。これは業務上の評価に結びつくような言葉と受け止められても仕方がないと思います。職務上、被災者が大変大きなストレスを感じたという風に評価できるのではないかと思います。」(遺族の代理人 李暎浩弁護士)

遺族「二度とこんな悲しいことがあってほしくない」

遺族らは2016年、国を相手取り、労災認定を求めて提訴。裁判は大阪高裁に舞台を移し、2020年7月30日現在も争われている。

「(息子は)どうしてわかってもらえないかと歯がゆく思っていると思う。二度とこんな悲しいことがあってほしくない。みんなもこういうことが起こるんだということをわかってほしいです。」(男性の母)

遺族らの主張に対し、国側は「本件業務は通常業務であり、一般社会生活で生じる程度のストレスは血栓を作る原因とはなりえない」と反論している。

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