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【特集】「パイプオルガン譲ります」実はボロボロ...修繕されずにほったらかし...市が突然"事業廃止で譲渡表明"して奏者は困惑

2020年07月20日(月)放送

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兵庫県伊丹市が高さ7m・重さ9tの巨大なパイプオルガンの引き取り先を探しています。ところがパイプオルガンは肝心のパイプを中心に損傷だらけでした。ずさんな扱い、突然の譲渡表明…市民や演奏者が憤懣しています。

「パイプオルガン譲渡します」伊丹市が突如表明

1696本のパイプが織りなす重厚かつ繊細な音色。1993年に兵庫県伊丹市が約7000万円で購入したこのパイプオルガンは、ベルギーの職人がこの「サンシティホール」のために設計した、オンリーワンの楽器です。近年は7人のオルガン奏者が月に2回ほどのペースで演奏会を開催し、遠方からもファンが来ているといいます(現在は休止中)。ところが…。
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『パイプオルガンの譲渡先を随時募集します。』(伊丹市のHPより)

2020年3月、伊丹市は突如、このオルガン事業の中止を決定し、楽器の引き取り先を探し始めたのです。

「すごく寂しいですよね。あそこでコンサートをされているのを聞きに行っていたので。」(伊丹市民)
「もったいないね。せっかくの伊丹の財産みたいなものやのにね。」(伊丹市民)

この決定は、ホールのオルガン奏者たちにとっても寝耳に水だったと言います。

「『4月より譲渡の公募をして今年度末をもって事業を廃止する』という文書が届いただけです。」(サンシティホール・オルガン奏者 瀬尾千絵さん)
「『こういう文書が届きましたけどどういうことですか?』と電話しましたね。」(サンシティホール・オルガン奏者 木谷和子さん)
「それはもう、すごくショックでした。えーっという感じで。」(サンシティホール・オルガン奏者 神原のり子さん)

曲がったパイプ、倒れたパイプ、ビニールテープで巻かれたパイプ、音のならないパイプ

実はオルガン奏者たちは、以前からこのパイプオルガンの扱いを巡って伊丹市に憤懣していたといいます。

「変形しているところがこの音なんですけど、これだけ鳴らすと…(不安定な音が鳴る)曲がって横のパイプに触っているので。ここなんて鳴っていないですよね。スーっていっているだけで。」(瀬尾千絵さん)
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さらによく見てみると、他にも歪んでいるパイプがあったり、穴が空いてしまったのでしょうか…ビニールテープが巻かれていたり…。裏側から内部を覗くと、倒れたパイプも複数見られます。

「自然現象として経年劣化でどのパイプも変形してくるのは常なので。それを早くに見つけて、まだひどくない状態のときに支えをして、そういうのがメンテナンスなんです。それがちょっとできていない。すぐに修理してほしいんですけど、ちゃんとした人に修理してほしいんです。」(瀬尾千絵さん)

ピアノ調律師がパイプオルガンをメンテナンス

なぜ、きちんとしたメンテナンスができていなかったのでしょうか。日本では数少ないパイプオルガン職人の大久保壮介さんによりますと、希少な楽器ゆえの事情があるようです。

「ピアノ調律師の方が延長上でオルガンのメンテナンスをされることがあります。パイプオルガンのメンテナンスは、パイプオルガンを作る能力がないとできませんので、能力のない方がメンテナンスをしてしまうと、今回のようなことが起こってしまうのかなと思います。」(パイプオルガン職人 大久保壮介さん)

このパイプオルガンのメンテナンスを担当していたのも、やはり専門外の「ピアノ調律師」だったといいます。これについて伊丹市は?
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「メンテナンス業者につきましては、設置をしてくれた業者から、この方がいいんじゃないかということで推薦された経緯がございます。」(伊丹市 地域・高年福祉課 濱田雄生課長)

伊丹市によりますと、このパイプオルガンはベルギーのオルガン職人が設計したもので、日本在住の別のベルギー人オルガン奏者が仲介を行ったといいます。本来は職人自身がメンテナンスまでするといいますが、今回は仲介したオルガン奏者が知人の「ピアノ調律師」を推薦したというのです。

(Q職人ではない業者からの推薦であったにもかかわらず入札を経ずに選定したのはなぜ?)
「我々も市としても当時素人ばかりの中で、どういった業者がいいのかとなった時に、市としてはそういった推薦、裏付けではないですが、ここは大丈夫というようなものが必要だったと考えております。」(濱田雄生課長)

実はこのパイプオルガンがあるサンシティホールは音楽ホールではなく“高齢者福祉施設”。そのため担当となったのは文化振興の部署ではなく福祉関連の部署でした。楽器について“素人ばかり”だったため、つい仲介者の言いなりになったようです。

『修繕に年60万円強・大規模改修で1000万円超』という例も

バブル期の1990年代前半を中心に、関西でも数多くの公共施設でパイプオルガンが導入されました。伊丹市以外のパイプオルガンはどれも音楽ホールに設置され、文化振興の担当課が管理しています。

その中の一つ、兵庫県姫路市にあるパルナソスホールでは、メンテナンスが行き届いた壮麗なパイプオルガン(1990年完成)から鮮やかな音色があふれ出ていました。やはり、これだけのパイプオルガンを維持するのにはそれなりの経費が必要になると言います。
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「年1回定期的に保守点検しているのと、調律をコンサートのたびにやっていますので、平均して年間60万円強はかかると思います。1998年と2008年に2回大規模改修工事を行っていまして、1000万円は軽く超える金額の記録が残っています。」(姫路市文化国際交流財団 小林直樹事務局長)

「状態がひどいパイプオルガン」譲渡は…

伊丹市のパイプオルガンも3年前に大規模修繕も含めた検討がされましたが費用などの話がまとまらず、それ以降一切の修繕が止まったままです。専門外の部署の下、修繕に必要な経費も得られなかった不遇のパイプオルガン。しかも、そう簡単に譲渡できるものではなさそうです。

「ここまで状態がひどいオルガンになると、修復にかかる費用はかなりの額だと思います。こういった状態でももらってもらえますか?ということを伊丹市は表明されてませんよね。そういった情報提供をしないことには、誰ももらってくれないオルガンだと思います。」(パイプオルガン職人 大久保壮介さん)

(7月20日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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