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【特集】『城跡の遺構は何もない』誤った認識で芦屋市が鉄塔工事...一部の遺構は破壊され住民憤懣「あまりにお粗末」

2020年07月06日(月)放送

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文化財が埋まっているとして遺跡に指定された山で、鉄塔の工事が始まり、地元住民らが憤懣しています。文化財に影響しないよう事前の調査などが法律で規定されていますが、すでに一部の遺構は破壊されてしまいました。なぜこんなことに…自治体のずさんな認識が浮き彫りになりました。

歴史を感じる芦屋市北部の「鷹尾山」

兵庫・芦屋市北部にある「鷹尾山」。かつて城があったことから“城山”と呼ばれ、今は手軽にハイキングが楽しめる場所として地元の人たちに親しまれています。山頂からは芦屋市内を一望できます。
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「芦屋市民のアイデンティティというか、この街のあり方を示すものなので。芦屋は芦屋で古代から開けてきた街なんだよと。」(山田美智子さん)

芦屋市内に住む山田美智子さん(73)は、鷹尾山のいたるところで芦屋の歴史が感じられるといいます。例えば…
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「これが『刻印石』で、ここから切り出されたということで。」(山田美智子さん)

一見、何の変哲もない石に見えますが、江戸時代の17世紀ごろ、大坂城を築城する際に切り出した石と言われているのだとか。

さらに戦国時代、敵が城に侵入するのを防ぐために掘られた『空堀』も残っていました。
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また1980年に芦屋市などが行った調査では、弥生時代などに作られた多数の土器も見つかっています。
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鷹尾山は、ふもとから山頂まで、様々な時代を感じることができるといいます。

鉄塔工事で「空堀」の一部埋まる

ところが2020年4月、山頂付近で鉄塔を建設する工事が始まったのです。すでに2000平方メートルにわたり木が伐採されました。

「登ってきてパッと見たら開けているし、全部平地で堀は埋められているし、あまりの状況の変化にびっくりしたというのが本音ですね。」(山田美智子さん)
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工事の影響は戦国時代に作られた貴重な空堀にも及んでいたのです。山田さんによりますと、ここにあった空堀は工事で掘り起こされた土で一部が埋まってしまったといいます。

そもそも鷹尾山は、文化財の価値があると推定されるものが埋まっている「埋蔵文化財包蔵地」に指定されています。そのため文化財保護法により、工事が遺跡に影響を及ぼさないか事前に確認が必要となります。

「城跡としての遺構は何も残っていません」と芦屋市が断言

ではなぜ、空堀は無残な姿になってしまったのか。芦屋市の歴史に詳しい郷土史家の藤川祐作さん(76)は市の認識不足を指摘します。

「(工事で)土が動いている。ちゃんとした指導がなされていたら、ブルドーザーで傷つかないけど、あの状態だったら傷つくわな。(市の)認識不足、すなわち勉強不足だと思う。」(郷土史家 藤川祐作さん)
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それを裏付けるかのように、市が2018年に山のふもとに設置した案内板では、『遺構は何もない』と断言されていたのです。

【案内板に書かれた説明文】
「城山(鷹尾城跡):永正8年(1511)細川高国・澄元の両軍勢による鷹尾城と芦屋河原の合戦は阪神地方の代表的な古戦場として知られています。現在は、中世の城跡としての遺構は何も残っていませんが、大阪湾を一望できる眺めも素晴らしく、動植物の観察や高座の滝までのハイキングコースとして親しまれています。」

「『城跡としての遺構は何も残っていませんが』とあるので、全く間違っていますよね。あまりにもちょっとお粗末というか、事実と違いすぎる。市役所内での遺構に対しての関心が薄いということが、浮き彫りになってくるんじゃないかなと。」(山田美智子さん)

「認識不足」認める 対策済みとして工事は再開

こうした指摘に対し、芦屋市は「職員の認識不足だった」とずさんな対応を認めました。

「(Qその場所に堀があるというのを知らなかった?)なかなか現地を事前に確認することができておりませんでしたので、今回、城の堀跡が埋まっているのではないかということは、事前に把握することはできませんでした。(Q市民の指摘がなければ、市としては遺跡を認知していなかった?)市としては認知はしていましたけれども、担当者によっては知識や経験が不足しているような状況もございました。」(芦屋市教育委員会生涯学習課 長岡良徳課長)
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『遺構は何も残っていない』と記した案内板については、表記の書き換えを検討したいとしています。

「今回そういうご指摘もいただいたので、再度、表現については検討している状況です。」(長岡良徳課長)

現在は遺跡に影響が出ないよう対策を取っているとして、工事は再開されています。

「やはり原点ですからね。芦屋の街が出来ていく原点ですよね。遺跡として、芦屋市は把握をして、それを後世につないでいくべきだと思います。」(山田美智子さん)

「埋蔵文化財包蔵地」全国に約46万か所

鷹尾山のような埋蔵文化財包蔵地は全国に約46万か所もあり、考古学の専門家は同様の被害を防ぐには街一体となっての協力体制が必要だと指摘します。

「周知の埋蔵文化財包蔵地と呼ばれるものは全国にたくさんあります。全てを調査するのはなかなか難しい。『文化財部局だけが守ります』ではだめですし、街だけで守るのもだめですから、地域住民と一体となって守って、これからも継承していくということが必要になってきますよね。」(奈良大学文学部文化財学科 相原嘉之准教授)

全国で眠る文化財を守るため。せめてこの失敗が「他山の石」となってほしいものです。

(7月6日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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