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【特集】限りなく本人に近い『AI音声』 進化する"合成音声"技術が難病患者を手助け

2020年07月02日(木)放送

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スマートフォンやAIロボットなどに搭載された「合成音声」の技術が急成長しています。人間のように話すことはもちろん、ある特定の人物の声を真似することもできます。これまでエンターテインメント性の強かった合成音声ですが、今、難病患者と社会との懸け橋になろうとしています。

歌姫の声をAIが生み出す

2020年2月、昭和の国民的歌姫・美空ひばりさんのファンが集う「喫茶ひばり」(大阪・北区)を訪れました。

「小学3年生くらいの時から美空ひばりのファンやねん。見に行ったら震えが来るわな、さぶいぼが立つような感じを受けんねや。」(喫茶ひばり 宮本世津子さん)
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店で筋金入りのファンらが聞き入っているのは、2019年に30年ぶりに発売されたひばりさんの新曲「あれから」です。といっても、ひばりさんがこの歌を歌ったことは一度もありません。膨大に残る音源から作り出された「AI」が歌声を生み出したのです。
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AIだろうと、その歌声をかみしめる店主の宮本さん。

「もう30年も前の話やからね、亡くなって。それから新たに出てきて、また降りてきてくれたんやなーって思って。」(宮本世津子さん)

一方で、こんなファンもいます。

「すごくよく似てるんだけれども、味はない。血が通ってないからダメ。すばらしいのよ、技術は。」(美空ひばりファン)

アクセントや息使いなどを含めて学習

合成音声はAIロボットやスマートスピーカーなどあらゆるものに使われています。しかもその技術は今、驚くほどの速さで進んでいるといいます。

「昔だと合成音も機械的な合成音でしか作れなかったのが、自分の声で出せるようになり、その人の声で新しいことをしゃべってもらうということもできるようになった。」(和歌山大学システム工学部 入野俊夫教授)
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声を作り出す場合、以前は「あ」「い」「う」と一文字ずつ録音。それを切り貼りして文章を読み上げていました。しかし、音のつながりが不自然になるため、例えば「こんにちは」の場合、「こん」「んに」「にち」など膨大な組み合わせを録音する必要がありました。そこで使われるようになったのがAIです。AIは人が読み上げた複数の文章からアクセントや息使いなどを含めて学習。声の波形を作り出すため、なめらかに聞こえるようになったのです。

「本人の声っていうのはたくさん集められるかっていうとたくさん集められなくて、ある程度限界があるわけですよね。なるべく少ないデータで本人の真似をする。」(和歌山大学システム工学部 入野俊夫教授)
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この技術を使った「コエステーション」というアプリがあります。このアプリでは、例文を読み上げAIに学習させていくことで、限りなく自分に近いAIの声を作ることが可能です。

難病を患う男性が自分の声を録音 その理由は…

合成音声のニーズは多様化しています。2020年2月、岡山市に住むギャビン・トーマスさん(49)に話を聞きました。ギャビンさんはALS=筋萎縮性側索硬化症という病気を患っています。筋肉が痩せていく難病で、進行が早い人の場合、わずか8か月ほどで声を出すことが難しくなるといいます。ギャビンさんは2018年にALSと診断された直後から、自分の声を日々録音しているのです。

「300くらいの文章を録音すると、コンピュータの方で新しい録音していなかった単語ができます。」(ギャビン・トーマスさん)
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【ギャビンさんのAI音声】
「大阪はすばらしいまちですよね」
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18年前から大学で英語を教えているというギャビンさん。実践的な英会話を大切にしていて、2年前の授業の様子を撮影した動画をみると、授業では積極的に学生に歩み寄っています。

「働くのは楽しいものですね。私は大変でも役に立ちたい。いつか声がなくなったら教室でAI音声をスピーカーから出すんです。この病気はどんどんできないことが増えるんですけど、テクノロジーを使ったらまだできることはあります。」(ギャビン・トーマスさん)
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【ギャビンさんのAI音声】
「この授業は英語の授業だから英語で説明します」
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家族にとってもギャビンさんの声には思い入れがあります。

Q家族が聞いた「AI音声」は?
「夫の声だと思います。夫らしさが出てる。」(妻・千秋さん)

「いつかAI音声を使えたら」

この取材から4か月後の6月下旬、改めてギャビンさんにオンラインで話を聞きました。新型コロナウイルスの影響で授業は全てオンラインで行っているようですが、病状は少しずつ進んでいました。

「たまにちょっとしゃべることが難しくなりましたね。でも、まだ声は出せる。自分の声が出しにくくなればAI音声はすばらしい情報ですね。いつか使えたらいいですけど。」(ギャビン・トーマスさん)

一番そばにいる家族も、その声で社会とつながっていてほしいと願っています。例え、本人が発した声でなくても。

「自分の声が出せなくなったらテクノロジーに補ってもらって、自分らしくやりたいことを続けいくことができる可能性があるっていうことだから素晴らしいことだと思うし、続けていけたらいいかなと思っています。」(妻・千秋さん)

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