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【特集】2018年の西日本豪雨を教訓に...ダム『事前放流』の課題は?脅威増す豪雨に備え"安全な運用"目指す

2020年06月30日(火)放送

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死者・行方不明者が240人以上に上った西日本豪雨から2年。近年、こうした集中豪雨や大型化した台風による被害が相次いでいます。そこで力を発揮するといわれるのがダムです。しかし、その水量が限界に近づくと、緊急的に大量の水を放流するため、洪水で死者が出た事例もありました。ダムを安全に運用するため、“先手を打つ”取り組みが始まっています。

西日本豪雨で行われたダムの最終手段『緊急放流』

2018年7月、岡山県や広島県などで甚大な被害をもたらした西日本豪雨。京都・嵐山では桂川から水が溢れだし、京都府や兵庫県など11府県で「大雨特別警報」が発表され、死者・行方不明者数は240人を超えました。
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あの日、建設以来初となる緊急事態に直面したダムがありました。兵庫県川西市にある「一庫ダム」です。下流に位置する猪名川の洪水を防ぐなどの目的で、約638億円かけて1983年に完成しました。
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豪雨前の2018年7月2日午前10時頃のダムにせき止められた貯水池の様子を見てみると、水位には余裕があるように見えます。
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しかし、2018年7月6日午後5時頃の様子を見ると、水位が大幅に上昇しているのがわかります。大雨により大量の水がダムへと流れ込み、みるみるうちに水位が上昇したのです。万が一、ダムがあふれたら、その被害は計り知れません。

「もし仮に水がダムを越えてくるような事態になった場合、おそらく制御できない状態になるので、下流に流す水をコントロールできなくなる。住宅に被害が出てしまうので、そういったことは避けないといけないと思っています。」(一庫ダム管理所 齊藤光悦所長代理)

そこで行われたのが最終手段とされる『緊急放流』でした。緊急放流とは、大量の雨がダムに流入し続け、水位が限界に達する見通しになった場合、さらなる水位の上昇を避けるため、流入量とほぼ同じ量の放流を行う操作のことです。
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一庫ダムの2018年7月の緊急放流時の映像を確認すると、茶色く濁った水が勢いよく吐き出されています。1秒間で最大332tもの水が下流へと流れていきました。
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「降雨予測が結構変動したので、(実施の)判断が難しかったと聞いている。降雨予測が多く降ると出たりとか、その1時間後には多く出た予測が低くなったりとか、上がり下がりの変動があったので。」(一庫ダム管理所 齊藤光悦所長代理)

その後、雨のピークが過ぎたこともあり、一庫ダムの下流で氾濫被害が発生することはなかったといいますが…

「雨がもっとたくさん降ると、さらに放流量を増やさないといけないので、もっと雨が降っていたら、被害が出ていた可能性もあると思います。」(一庫ダム管理所 齊藤光悦所長代理)

緊急放流で川が氾濫し住民9人犠牲に

一方、同じ頃、緊急放流後に最悪の事態が起きたダムもありました。愛媛県の「鹿野川ダム」と「野村ダム」でも水位が限界が近づき、同様に緊急放流を実施しましたが、放流後に肱川の水が溢れだし、周辺住民9人が犠牲になりました。

後の検証で、「避難指示の発表が放流開始のわずか5分前だったこと」や「大雨の中、放流を知らせるサイレンが聞こえなかった人がいたこと」などが明らかになっています。

緊急放流を避けるための『事前放流』とは

この出来事を受け、国土交通省は検討会を開催し、警報設備の改善や自治体との連絡体制の強化などを提言しました。その上で新たに求めたのが『事前放流』です。

事前放流とは、水位が限界に達する雨量が想定された場合、あらかじめダムの水位を下げる措置です。これにより、『緊急放流』を避けられる可能性が高まります。さっそく、2020年から『事前放流』を行うことを決めたダムがあります。

京都府南丹市の「日吉ダム」です。桂川の洪水を防ぐなどの目的で約1831億円かけて1998年に完成しました。これまで日吉ダムは2回緊急放流を実施していて、一度目は京都・嵐山で広範囲の浸水被害が起きた2013年の台風18号。そして二度目が2018年の西日本豪雨でした。
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緊急放流を避けるためにも事前放流は欠かせませんが、降水予測を基に判断するため、前日くらいまで実施の判断は行えません。

「どこまで貯水容量を確保していくか見極められるので、そういう意味では当然(降水量は)早くわかったほうがいい。(Q早くわかっている方が容量を減らせる?)そういうことです。洪水調節容量をより確保できる。」(日吉ダム管理所 新井誠輔所長)

ダムのより安全な運用へ…15日先までの降雨予測を51パターン解析

京都大学の角哲也教授は「貯水量が減りすぎてしまうとダムの役割が果たせない」と指摘します。

「本来ためているのは、来たるべき渇水や農業用水のため。ためている水を一時的に放流してしまうことになるので、実際にそれに相当する雨が降らなければ、ダムを空にしたまま終わってしまう。」(京都大学防災研究所 角哲也教授)

そこで…

「近畿地方の雨の降り方を51個のパターンで予測した結果です。」(京都大学防災研究所 角哲也教授)

角教授によりますと、15日先までの降雨予測を51パターン解析し、ダムに流入する雨量の予測精度を高めることで、1週間ほど前から十分な事前放流を行えるようになるといいます。実用化すればダムはより安全な運用ができますが、それでも角教授は「ダムを過信しないこと」が重要だと話します。

「ダムは万能ではないと。ダムが洪水を止めるので、ここは未来永劫、洪水が来ないと過信してしまうケースが多々ある。だけども大きな洪水の時はダムからあふれて水が出てくるので。ダムが身を挺して、ためている時間を無駄にせず、避難行動をとってもらいたい。」(京都大学防災研究所 角哲也教授)

(6月30日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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