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【特集】野球部マネージャーは『脳性まひ』部活に誘ってくれた支えてくれた仲間のために抱く目標

2020年06月24日(水)放送

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かつて甲子園を沸かせた滋賀県の小さな学校の野球部。33年ぶりの甲子園という夢は新型コロナウイルスの影響でついえてしまいましたが、夏の県大会に向けて練習に励んでいます。そんな野球部には「脳性まひ」のマネージャーがいます。彼には支えてくれた仲間のために成し遂げたい目標があります。

「脳性まひ」の野球部マネージャー

6月1日、滋賀県長浜市にある県立伊香高校の野球部が2か月ぶりに全体練習を再開しました。小島義博監督(34)が部員たちに呼びかけます。

(小島監督)「バッティング練習とか各自課題を持って練習していこう。ええか。」
(野球部員)「はい。」
(小島監督)「みんな先、外野から行こ。」

一人、車いすに乗った部員がいます。伊香高校2年生の山本陸君(18)、この野球部のマネージャーです。

(山本君)「外野行こ。オッケー」
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部員が車いすを押し、グラウンドへ向かいます。山本君は生まれつき重度の脳性まひで手足を自由に動かせません。とはいっても、練習では他のマネージャーと同じことを任されています。
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山本君は練習のノックに参加します。監督にボールを渡す役割ですが…

 (小島監督)「届く?」
  (山本君)「ケースちょっと高くないですか?」
 (小島監督)「ちひろ、ケースもう1個低いやつ(に換えて)」
(ちひろさん)「はい。」
  (山本君)「ありがとう。」

マネージャーのちひろさんと監督がボールのケースを入れ替え、取りやすい位置になりました。少しの配慮は必要です。

(小島監督)「おっしゃいこか。」
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タイミングよく監督にボールを渡す山本君。久しぶりの練習に笑顔がこぼれました。
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練習が終わると、部員たちが山本君のところへ集まります。

(野球部員)「ありがとう陸。」
(野球部員)「ありがとう。」
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山本君が困ったら近くにいる部員がサポートをします。

 (山本君)「体なおしてもらっていいかな?」
(野球部員)「オッケー。」

車いすの体の位置が少しずれていたようで、部員が山本君を抱え、元の位置に戻しました。これが普段の練習風景です。
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(Q特別扱いはしない?)
(小島監督)「それは彼との話のなかでの条件だったので。僕はノックのペースは落としたくないので。陸には『僕のペースについてきてや』と言ってます。結構速めやな?」
 (山本君)「はい、速いです。」
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滋賀県の最北端にある伊香高校の野球部はかつて名門と呼ばれていました。伊香高校野球部はこれまで春夏あわせて5度の甲子園出場経験がありますが、1987年の夏の甲子園出場を最後に、30年以上、甲子園から遠ざかっています。去年秋の県大会では23年ぶりにベスト4に進出。夏の甲子園での古豪復活を目指しましたが、大会は中止となりました。3年生は7月から始まる滋賀県大会が最後となります。

1時間かけて通学 自宅ではほとんど勉強

山本君は電車で片道1時間かけて通学しています。本来なら今年で3年生ですが、1年生の時に勉強についていけず留年し、今は2年生です。

障がいの影響で記憶が定着しにくく、高校の進級はそう簡単ではありません。自宅ではほとんどの時間を勉強に費やしています。母の聡枝さんは…
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「普通の子の倍やっても同じようには覚えられないと思います。本当にもう日々繰り返すっていうのは、すごく努力家やなって思います。」(母・聡枝さん)

「野球部に入りたい」と自分から言い出せなかった

中学までは特別支援学級に入っていた山本君。友達はほとんどできませんでした。『高校では友達を作って大好きな野球がしたい』と、支援学校ではなく伊香高校に入学。ただ“野球部に入りたい”と自分から言い出せませんでした。

「一番の理由は、自分なんかが入って何ができる、何もできないんじゃないか。かつ、部員の邪魔になるだけじゃないかと思い続けたのが、なかなか勇気が出せなかったきっかけです。」(山本君)

「障がい関係ない」山本君を野球部に誘った部員

そんな山本君を野球部に誘ったのは、3年生でエースの隼瀬一樹君です。2人は1年生の時に同じクラスで、大好きな野球の話題で話が合いました。

「障がいがあろうがあるまいが関係がないと思っていたので。そこらへんの坂を登るのも、みんなで手伝ってやったら、そんな大変やなと思うことはあんまりない。」(伊香高校3年生 隼瀬一樹君)
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山本君は2018年の秋にマネージャーとして入部し、仲間に教わりながら、できることをひとつずつ増やしていきました。

「野球に関わること自体が楽しいですけど、友達と一緒に野球ができることがまず一番楽しいです。」(山本君)

山本君と駅から登校するのが“部員の日課” 

部員たちの日課になっていることがあります。毎朝、交代で山本君を最寄り駅まで迎えに行きます。徒歩10分ほどの道のりを一緒に登校しています。

 (山本君)「お前ら1時間目なんなん?」
(野球部員)「1時間目、国語。」
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「正直想像を超えることを部員たちがしてくれています。自分の家族がそうなったらやってあげるというのは、みんなすると思う。そんな感じが野球部の中で生まれてきたのは、僕がお願いしたわけではないので、彼女たち、彼らの自発的な行動でやってくれています。」(伊香高校野球部 小島義博監督)

懸命のリハビリでできるようになった「外野ノックのボール渡し」

部員に支えられているだけではありません。市立長浜病院にやって来た山本君は、野球部の役に立ちたいと、日々リハビリに励んでいます。車いすを降りると自力で座ることができず、バランスを崩して倒れこんでしまいます。最初はボールをつかむこともできませんでしたが、必死に練習を重ねてできるようになったのが“外野ノックのボール渡し”です。

「コーチが手を出したところに、陸君が合わせて手を出すのはかなり難しいと思うので、努力したんじゃないかな。大成長。」(理学療法士 山口卓也さん)

「一度だけでいいから勝負がしてみたい」

6月21日。今年初めての対外試合が開かれました。保護者や地元の人たちも応援に駆けつけました。3年生は高校生活の集大成を『最後の夏』にぶつけます。仲間を見守る山本君。支えられながら成長できたことへの感謝の気持ちを自分なりの方法で伝えたい。目標を打ち明けました。
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「やっぱりあいつらと対戦したいという目標があって。それであいつらに勝っても負けても、一度だけでいいから勝負がしてみたいという思いがあります。お前らが簡単にやっていることでも、僕は難しいけど、頑張ったよってことをみせたくて。」(伊香高校2年生・野球部マネージャー 山本陸君)

(6月24日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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