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【特集】"使えないマスク"が医療現場に支給!?『N95』と『KN95』の違い...医師からは危険性を指摘する声も

2020年05月29日(金)放送

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医療現場で“あるマスク”が物議を醸しています。通常は「N95」というタイプのマスクが使われますが、これは需給がひっ迫しています。そこで国や自治体は代用品として別のタイプのマスクを支給しました。しかし、医療現場からは「使い物にならない」との声が次々と上がっています。

医療物資不足する中で届いたのが…

大阪府堺市の耳原総合病院では、医療物資の不足が深刻な問題だと院長は話します。

「特にN95マスクは供給がかなり厳しい状況になっています。なくなると感染防御ができません。」(耳原総合病院 奥村伸二院長)
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『N95マスク』とは、直径0.3μm(マイクロメートル)の微粒子を95%以上防いでくれる高性能なマスクで、新型コロナウイルスなど感染症の疑いがある患者の診察には必須となります。通常は一度使えば廃棄するN95マスクですが、十分な量が確保できず、ゴムがちぎれるまで再利用しているといいます。そんな中、自治体から支給されたのが『N95』ならぬ、『KN95』マスクでした。

「国か府か市からの支援物品といってもらったものが来ていますね、『KN95』は。」(看護師)
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『KN95』マスクは、名前はよく似ていますが、医療物資の検品を担当する看護師がチェックしたところ…

「KN95は、両耳にかけても空気が横から漏れてくる。私の顔でも耳が痛くて取れてくるんです。」(看護師)

N95のような性能は期待できないと判断し、使わないことに決めました。

「息がスースーと抜けていく。使うこと自体が危険」

同じ声は全国であがっていました。佐賀県の小柳記念病院で発熱外来を担当している百田康紀医師もその1人です。

「4月になってマスクが不足してきた。N95マスクをうちの病院でもある程度は確保しておかなければならないということで、いろんなところに探し始めました。その中で、“N95相当”ということで、KN95マスクを初めて知りまして。」(小柳記念病院 百田康紀医師)

百田医師は2種類のKN95マスクのサンプルを取り寄せました。ところが…

「普通はN95マスクをしますと、もう息苦しさを感じるんですけれど、KN95マスクを付けても全然息苦しさを感じません。息がスースー抜けていきます。十分な空気が吸えますし、自分の吐いた息もマスクのフィルターを通して出ていきます。」(百田康紀医師)
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別のKN95マスクも、頬のすき間から指が1本入ってしまうほどです。

「これは使えないなと。これを使うこと自体が危険だなと思います。」(百田康紀医師)

国が自治体を通じて医療機関へ

多くの医療従事者が「使えない」と話すKN95マスク。KN95マスクは中国の規格で、主に工事現場で粉じんを吸い込まないようにするためのマスクです。ではなぜ、医療現場に続々と届いているのでしょうか。その手がかりは厚生労働省が今年4月10日に出した事務連絡にありました。

【厚労省・4月10日事務連絡より】
『KN95マスクなどの医療用マスクもN95マスクに相当するものとして取り扱い、活用するよう努めること』

国はKN95マスクを自治体を通じて各地の医療現場に届けていたのです。厚労省は、代用できるとした根拠に、アメリカのFDA(食品医薬品局)が「緊急使用承認」を出したことをあげています。

厚労省側“マスクの使用は現場判断で”

一方、医療現場の感染対策の専門家である済生会横浜市東部病院の大石貴幸医学博士は、この判断に疑問を持っています。

「FDAは基本的にはマスクのフィルター性を確認しているところではなくて、(マスクの)販売の許可をしているところです。たとえFDAが認証したとしても、フィルター性能は担保されているわけではないので、病院の医療従事者としては担保されていないものを安易に使うのは危険性があるのかなと。」(済生会横浜市東部病院 大石貴幸医学博士)
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アメリカ・FDAは今年4月、マスク不足を受けてKN95マスクの医療現場での使用を認めました。しかし、別の研究機関の検査で、空気の「ろ過基準」を満たさないマスクが多数見つかり、5月になって認可は一部のKN95マスクだけに切り替えました。これについて厚労省の担当者は…
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「KN95マスク全てが使えるわけではないということは認識していますし、KN95マスクの中でも緊急使用承認が取り下げられているものもいくつかあると聞いています。KN95マスクであろうと、N95マスクであろうと、フィッティングテストはぜひやっていただかなくてはならないことになりますので、どういったマスクを使うのかというのは各医療機関の判断になるんですけども、適切な情報・有益な情報であれば積極的にお示しする必要があるかなと考えます。」(厚生労働省・結核感染症課 加藤拓馬医師)
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使えないものがあるという認識はあるものの、フィッティングをはじめ、あくまで現場で判断してほしいといいます。これでは院内感染を起こしかねないと大石医学博士は警鐘を鳴らします。

「(フィッティングテスト自体を)『病院に丸投げ』『自己で判断しろ』というのは、指導する側としては安易というか配慮に欠けるのかなと。エアロゾル(ウイルスを含む微粒子)が出るシーンで(KN95マスクを)安易に使ったりすると、実はスカスカで院内感染が広がる可能性がある。」(大石貴幸医学博士)

感染と常に隣り合わせの医療現場。丸投げではなく、“漏れのない”対応が求められます。

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