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【特集】仕事も住民票もないホームレスたちに"10万円"は届くのか...「西成・あいりん地区」で弁当配り見守る女性の活動

2020年05月26日(火)放送

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新型コロナウイルスの感染拡大は、大阪市西成区にある日雇い労働者の街「あいりん地区」にも大きな影響を及ぼしています。日雇いの仕事が激減し、さらには住民票がないホームレスたちにどうやって10万円の給付金を支払うのか、街の現状を取材しました。

「今が一番大変」居酒屋の店主

大阪市西成区にある日雇い労働者の街「あいりん地区」で、居酒屋「集い処はな」を営む尾崎美代子さん。店内には手書きのメニュー表がかけられています。

「きょうのメニュー、毎日変えています。一番高いのは造りで350円、あとは300円とか200円です。」(尾崎美代子さん)

18年前に始めた店は、普段は日雇い労働者や地元の住民たちで賑わうのですが、4月以降は客足が激減しました。

「今が一番大変なんちゃう?今、大変よ。(Qお客さんは減った?)そう。(Q何割くらいの減少ですか?)半分くらいじゃない?」(尾崎さん)

店内の消毒を徹底し、客同士の距離を保って営業を続けていますが、会話はやはり新型コロナウイルス一色です。

(尾崎さん)「やっぱり第二波怖いな。また閉鎖になっているの?違うよね?」
 (男性客)「特定のクラブとかディスコだけや。」
(尾崎さん)「ふーん。」

“マスクをしていない人”が目立つ街

「あいりん地区の厳しい現状を知ってほしい」と尾崎さんが街を案内してくれました。

  (記者)「あんまりマスクしている人いないですね?」
(尾崎さん)「いないですね。『体を守らなくちゃ、大丈夫かな?』という気持ちも萎えているのかな。『それよりまず食うことだ』ということじゃないかな。」
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外を歩くと、マスクをしている人はまばらで、街の中心に位置する萩之茶屋南公園(通称:三角公園)に居る人たちもほとんどがマスクをしていません。
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男性に話を聞きました。

  (記者)「普段はマスクされますか?」
  (男性)「いや、普段は…。」
(尾崎さん)「しなきゃだめよ。」
  (男性)「第二波とか言ってますけど、この人まずいなと思ったら、僕は(その人の)風下には行かない。」

新型コロナウイルス感染拡大で“炊き出し中止”

この公園では長年にわたって支援団体が日雇い労働者たちのために炊き出しを行ってきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大以降は中止されています。

(尾崎さん)「毎週火曜日と土曜日に炊き出しやるんですよ。それが大体300食から400食だったんですよね。知っている人がやっているんですけど、ばーっと並ぶので、三密になるから中止になったので、結構困っている人いるんじゃないかな。」
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日雇い労働者が大半を占める街ですが、多くの建設工事がストップしている影響で、今は仕事がほとんど無いといいます。ある会社の扉には「コロナの影響で仕事はありません」と張り紙が貼られていました。

  (記者)「この会社だけの話じゃない?」
(尾崎さん)「じゃないと思いますよ、うちのお客さんもそうなので。ゼネコンでも止めているところもあるでしょ。新型コロナウイルスが出たっていうので。うちのお客さんのところの現場は、中国からの資材が入らないからストップしているとか。」

弁当とマスクを「無償配布」

厳しい生活を強いられている日雇い労働者やホームレスたちのため、尾崎さんは5月初めから手作りのお弁当とマスクの無償配布を始めました。お弁当には白米に玉子焼き、肉団子や野菜炒めなどが詰められていました。
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尾崎さん、路上で次々に声をかけ、お弁当とマスクを手渡します。

(尾崎さん)「お父さん、弁当食べ。」
  (男性)「ありがとうございます」
(尾崎さん)「お父さん、野宿している?」
  (男性)「うん。」
(尾崎さん)「この辺?」
  (男性)「うん。」
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(尾崎さん)「お兄さん結構若いもんな。」
  (男性)「まあまあまあ。」
(尾崎さん)「まぁ10万円もらえるように頑張りましょうね。」

最近よく話題にのぼるのは10万円の特別定額給付金についてです。
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(記者)「今はお仕事は?」
(男性)「仕事なんてあるわけないやんけ。現場全部ストップしている。」
(記者)「生活保護を受けていないのですか?」
(男性)「受けたくないもん、わしにも意地があるわ。」
(記者)「10万円は大きいですよね?」
(男性)「大きいよ、トクソウ(高齢者特別清掃事業)で3万円ちょっとくらい、月に。4万円も出ない。それでわしは生活している。(10万円は)3か月分だから。」

遠い10万円給付…「住民登録がない」「どこに登録しているか分からない」「定まった住所がない」

政府が打ち出した、全国民に10万円を支払う特別定額給付金。対象は「4月27日時点で国内に住民登録されている人」と規定されていますが、ホームレスの中にはそもそも住民登録がない人や自分がどこに住民登録されているのかわからない人がいるのです。
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尾崎さんが声をかけた男性に住民票について聞いてみました。

(尾崎さん)「住民票どこやったっけ?」
  (男性)「何十年もほったらかしのまんまや。」
  (記者)「住民票がどこにあるかわかりませんか?」
  (男性)「うん、最近の住所は堺やけど。本籍地に戻っているんちゃうかな。19歳の頃からほったらかしやから。」

政府はホームレスやネットカフェ難民など住民登録されていない人について、新たに登録を行えば給付を行うとしていますが、ホームレスには住民登録できるような“定まった住所が無い”という問題があります。

“住民登録を抹消させられた”2088人

さらに、尾崎さんは「あいりん地区には住民登録を抹消された人が大勢いる」と話します。取材中に声をかけた中にも、実際にそう話す男性もいました。
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かつてあいりん地区では、約45平方メートルの土地などに3000人以上の住民登録が行われていました。これは日雇い労働者が失業保険の給付を受けるためで、区役所の担当者も黙認してきたものでした。しかし2007年、大阪市は他の場所へ移さなかった2088人の住民票を削除。それ以降、新たに住所登録せずにどこにも住民票がないままのホームレスが存在しているのです。

  (記者)「(当時削除された2088人の)住民票が今も無いかもれない?」
(尾崎さん)「そうですね。それから年も経っているので、亡くなった人もいるだろうけど。」
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住民登録がない人たちにどうやって10万円を給付するのか。5月20日、国会でもこの問題が取り上げられました。

「住民登録ができないという路上生活者の方々を、どう特別定額給付金からこぼれ落ちないように支えていくのか、支援していくのかっていうのは喫緊の課題。」(日本共産党 清水忠史衆院議員)
「現に居住している市区町村と認めていただけるように、必要な支援が行われるように総務省としても取り組んでまいりたい。」(総務省 斎藤洋明政務官)

「住民票無い人にも給付を」大阪市に要望書を提出

尾崎さんは現在、支援団体らと共に給付の実務を担う大阪市に対して、「住民票を持っていない人へも支給してほしい」などと要望しています。一方、大阪市は「給付金制度は国の制度で、実際に住んでいる場所に住民登録がされている人にしか給付することはできない」として、話は前に進んでいません。
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「働いていないから、税金も払っていないし、そんな人に(給付金10万円を)やらなくていいじゃないかって思う人もいるかもしれないけど。自分の仕事に誇りを持って何十年生きてきて、何の事情かわからないけど、色んな事情で野宿になったわけだから。住民票がないともらえないかもしれないっていうのは、ものすごく理不尽だと思います。貧しい人の方が今回の新型コロナウイルスも大変なんじゃないかな。」(尾崎美代子さん)

(5月26日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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