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【特集】終末期患者もコロナ禍で面会制限...増える「在宅医療」 家々に訪問続ける医師の思いは

2020年05月18日(月)放送

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医療の現場で奮闘しているのは、新型コロナウイルスの患者を受け入れている病院の医療従事者だけではありません。今、コロナウイルスの影響で、入院から「在宅医療」に切り替える人が増えているといいます。自宅で人生の最期を迎えると決めた患者たちの命と向き合う医師を取材しました。

“オフィシャルじゃない感じ”で訪問

大阪府枚方市で診療所を構える大越猛院長(44)。医師ですが、白衣には着替えません。

「在宅というのは患者さんにとって一番穏やかに過ごせる。見た目はラフなオフィシャルじゃない感じで伺って、お家の方と同じような雰囲気でお話させていただくというのを大事にしていますね。」(大越猛医師)

大越医師らの専門は、通院が困難な患者の自宅に赴く「訪問診療」です。
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この日、大越医師が訪ねたのは、枚方市に住む河邉武美さん(83)宅。河邉さんは、次第に全身の自由が利かなくなる神経の難病「多系統萎縮症」を患っています。

   (大越医師)「どうですかね。その後調子の方は?」
   (河邉さん)「腰が…。」
(妻・左和子さん)「今ちょっと腰が痛いと言っています。」
   (大越医師)「そうですか。」
    
河邉さんはリハビリのため介護施設に通っていますが、やはり、施設で新型コロナウイルスに感染してしまうのではないかと心配しています。

(妻・左和子さん)「この時期で、コロナ流行っているので、私も心配になって。ちょっとお休みさせてもらおうかなと思って。」
   (大越医師)「デイサービス自体は開いているけど?」
(妻・左和子さん)「開いているんですけど、やっぱり…。」
   (大越医師)「枚方のデイサービスではコロナの方が出たとかは聞いていないですけどね。」
(妻・左和子さん)「(感染者が)どこかにいてはるんやろうなと思ったら、心配になってきて。」

患者やその家族が抱える不安を取り除くことも訪問診療の大きな役割だと考える大越医師は、河邉さんに訪問型のリハビリに切り替えて大好きな畑仕事を続けて欲しいと提案しました。

(大越医師)「畑では感染しませんから。行ってください。」

「対話で手当て」不安の正体を明らかに

1日に10軒以上の家を訪問することもあるという大越医師。多くの患者が目に見えない恐怖に怯え、大きなストレスを抱えていると話します。

「想像を膨らませてしまって恐れておられる。不安の正体を明らかにしてあげて、それは恐れるに足りないとか、もしくは、こういう対策をすれば大丈夫だねというような。対話で手当てをしていくというのが大事かなと思います。」(大越猛医師)

患者の家に上がって診療を行うため、自らの健康管理には細心の注意を払っています。

「在宅で過ごされる患者さんは、基礎疾患があって非常に脆弱な方たちばかりなので。(コロナに)うつってしまうと多くの方が重症化すると思いますし。(ウイルスを)持ち込まないということは絶対にやっていかなくてはいけないと思ってやっています。」(大越猛医師)

“患者の人生に伴走”

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大越医師は、去年アフガニスタンで銃撃されて死亡した中村哲医師に憧れ、大学院の修士課程を修了後、中村医師と共に危険で厳しい地域で井戸や用水路作りに取り組みました。帰国後、35歳で大学の医学部を卒業し、以降は死期が迫るがん患者らと向き合い苦痛を和らげる「緩和ケア」に携わってきました。診療所を開設して2年になりますが終末期医療に対する思いは変わりません。

「単にその人の苦痛を取るとか、状態を管理するという医学だけではなくて、もっと大きく言えばその人の生活、さらにその人の人生そのものにフォーカスを当てて、そこに伴走するというか、寄り添う意識でやらせていただいていますね。」(大越猛医師)

「先生の顔を見るために過ごしている」

今年5月6日、大越医師は末期がんの西山スミエさんを訪ねました。1人暮らしの西山さんは2週間に1度、大越医師の診療を受けています。

【診療の様子】
(大越医師)「いいですね、はいはい。お腹の方を見せてください。今回はあまりお水溜まってこないですね。」
(西山さん)「そうですか、よかったわ。」

西山さんは去年、乳がんが肺や骨にも転移していることがわかり、治療法はもうないと宣告されました。

(西山さん)「マスク作ったんです。先生に付けてもらおうかなと思って一生懸命やっているんですけど。」
(大越医師)「ありがとうございます。」

今、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、各地の病院では終末期の患者にも面会を制限する動きが広がり、最期の時さえ家族が看取ることができないというケースが起きています。西山さんは週に3回ほど見舞いに来てくれる娘たちと少しでも長く一緒にいるため、入院はせず、自宅で最期を迎えると決めました。
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「先生はいつも笑顔で大丈夫大丈夫って言ってくれますからね。やっぱり気持ち的にものすごく楽です。先生の顔見るまでが不安なんですよ。2週間に1回だけど、本当は1週間に1回でも来てほしいんですけどね。先生も忙しいからそんなわけにもいかないしね。今は先生の顔を見るために過ごしています。」(西山スミエさん)

「コロナが何らかの影響を及ぼして、(最期を)お家で過ごすという選択をされる方が今後増えてくるのかなと思いますね。ご自身のお家で穏やかにご本人らしく過ごすという穏やかさというのをこの慌ただしい中でも失わないようにすることが一番大事かなと思っています。」(大越猛医師)

“限られた最後の時間を家族と一緒に過ごしたい”という患者の切なる願いに寄り添うため、家々を回る医師の活動が続きます。

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