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【特集】「専門医無し」「仕切りはついたてだけ」"恐怖感持ちながら"コロナ患者受け入れる公立病院の懸命対応

2020年05月12日(火)放送

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新型コロナウイルス感染者の受け入れを始めた兵庫県内の“ある公立病院”。感染症指定病院ではないため、専門医もおらず十分な設備もない中、懸命に対応を続ける現場の苦悩を取材しました。

新型コロナ患者受け入れた兵庫県内の公立病院

「かなり厳しい状況に特定の病院がなりつつある。医療破壊につながりかねない。」(兵庫県・井戸敏三知事 3月24日)

新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた3月、兵庫県内の“ある公立病院”は、急遽、県から新型コロナ患者の受け入れを求められました。

「突然、県の方から『コロナ感染症の患者を受け入れなさい』という要請がありまして、3月26日からそういう病棟をオープンすることにしました。」(兵庫県内の公立病院の副院長)

元々、新型コロナウイルス患者の受け入れは、専門の医師や設備を備えた「感染症指定医療機関」に限られていて、兵庫県には9つありました。しかし、十分な病床を確保できないため、県は“感染症の専門でない病院”にも患者の受け入れを要請し、県内で41の病院がこれに応じました。

当初、ほとんどの職員が新型コロナウイルスの患者受け入れに反発していたと、取材した公立病院の副院長は言います。

「私もそうなんですけど、とても強い…できるかどうか…ダメなんじゃないかという意見が大半でした。設備が全くありませんので。」(副院長)

『グリーン』と『レッド』を“ついたて”で分ける病棟

取材した公立病院では、患者受け入れを始めて1か月余り、模索する日々だったといいます。感染症病棟がないため、新型コロナの患者を入院させるために、まず消化器内科などに使われていた1フロアを『新型コロナウイルス専用』としました。そして、患者が通る「レッドゾーン」と、ウイルスに汚染されていない「グリーンゾーン」に分けました。

「スタッフルーム、それからナースステーションに入るまでは『グリーンゾーン』で、患者さんのエリアが『レッドゾーン』になるんですけど、患者さんが入院される経路はエレベーターから入ってこられるので、そちらの経路が『レッドゾーン』になっております。」(副院長)
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そして、既存の病室のうち、5室は1人用の個室、残り5室は4人部屋に距離をおいて2人を入れることで、15人を受け入れられるようにしたのです。

「“ついたて”で『グリーンゾーン』と『レッドゾーン』を分けているんですけど、“ついたて”の間が『グリーンゾーン』ですね。」(副院長)

本来感染症対策にはレッドゾーンからグリーンゾーンにウイルスが流れ出ないよう、気圧を下げる陰圧設備があるのが望ましいのですが、取材した病院では陰圧設備を整えることができませんでした。

「アメリカのそういう医療機器(陰圧設備)の輸出規制があって、実際には6月まで入ってこないんです。機械がないもので、そこは“ついたて”だけの区切りとなっています。」(副院長)

「感染症対策チーム」のサブリーダーは“血液内科”の医師

また感染症の専門医がいないこの病院では、新型コロナウイルスの患者の受け入れにあたり、急遽「感染症対策チーム」を作り、他の医師を指導する体制をとりました。そのサブリーダーを任されたのが血液内科の血液疾患の治療を主に担当する医師でした。感染症をメインにしている医師ではありません。

それだけに、最も気にしたのが病院内で感染者が広がる「院内感染」です。兵庫県内では、5つの病院で院内感染が発生し、中でも神戸市の中央市民病院では、感染症指定医療機関でありながら看護師や医師ら35人が感染しました。そのため外来患者の受け入れを約1か月間中止する事態に陥りました。

「血液内科の患者さんは特に普通の状態でも感染に弱い患者さんが多い中なので、そういう患者さんと共に兼任でやるというのはリスクもあるし、予防対策をしながら万全の状況で、両方とも何とかやってきているという形ですね。」(感染症対策チーム サブリーダーの医師)

“フィルター付きの車いす”でPCR検査

病院では新型コロナウイルス患者には欠かせないPCR検査を実施しますが、実はこの検査を行う時が最も感染リスクが高いのです。

「一番怖いのはPCR検査なんです。鼻に綿棒を突っ込んで採取すると、その時にどうしてもくしゃみが出るので飛沫感染が非常に怖い」(副院長)
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そこで少しでも感染リスクを下げるため、カバーで覆われ陰圧機も付いた“フィルター付きの車いす”を使った独自のPCR検査法を編み出しました。

車いすに座った患者の横に立ち、そこからカバーの中に手を入れて検体を採取。患者の正面を避け、カバーの中が陰圧になっていることで、患者がせき込むなどしても、医療従事者らの感染の可能性を最小限にできるということです。

防護服足りず…看護師らがゴミ袋で手作り

さらに困っているのが感染防止に必須の防護服が足りていないことです。そこで看護師らは臨時の防護服づくりを始めました。ゴミ袋を裁断し自ら防護服を作っているのです。医師や看護師らはぎりぎりの物資で、感染リスクと隣り合わせの中で日々業務にあたっています。

「自分たちもうつったらどうしよう、自分だけじゃなくても友達とか家族もいっぱいいるので、その辺の不安は大きいですよね。どうしたら自分がうつらない、他人にうつさないことができるかを考えながら、今も業務しているところですけどね。」(看護師)

病院でこれまで受け入れた新型コロナウイルスの患者は5月12日時点で21人。限られた施設と物資の中、未知のウイルスと対峙する日々が続きます。
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「公立病院としての使命ですね。看護師もよくやってくれていると思います。強引に(コロナ病棟を)開設した経緯もあるんですけど、よくついてきてくれたなと思いますね。開設してから1か月以上経過しましたけど、恐怖感というのは全然おさまらないですね。慣れてしまうと感染を引き起こす危険性がありますので、恐怖感を持ちながら仕事を続けていきたいと思います。」(副院長)

※兵庫県では感染症指定医療機関以外の新型コロナウイルス患者の受け入れ病院は、検査を求めて患者が殺到することを防ぐため、病院名は非公表となっています。

(5月12日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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