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【最前線】新型コロナ"感染者治療"行う医師が語る『1か月での状況変化』『日本の医療崩壊の可能性は?』『人工呼吸器等の増産効果は?』

2020年04月02日(木)放送

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感染拡大が続く新型コロナウイルス。実際に“感染者の治療”にもあたっている大阪市立総合医療センター・感染症内科の白野倫徳医師に、新型コロナウイルス対応の最前線について解説して頂きました。

すでに現場ではキャパシティオーバーで受け入れられないケースも

―――直近1か月間で状況はどのように変わりましたか?
まず、大阪でのライブハウスのクラスターで患者さんが一気に急増して、ライブハウスのクラスターはだいたい経過を終えて落ち着いてきたが、最近はどこで感染したのかわからないケースが増えている。海外帰りだったり、ニュースになっている大阪の飲食店だったり。ある程度推測できるケースもあるが、本当にどこで感染したかわからないものが増えている。

―――4月1日の専門家会議で東京と大阪の感染拡大が指摘されましたが?
東京より人口規模は少ないが、(大阪も)同じように、じわじわ増えている印象。このままいくと、東京と同じ状況になる。いったん増え始めると、単純に増えるのではなく、倍々で増えていくので、4から8、8から16、16から32という感じなので、そこがすごく心配。
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―――イタリアやアメリカ・ニューヨークの映像は衝撃的ですが、日本もそうなりかねない危惧を?
イタリアと比べると医療機能などはいくぶんマシだと思うが、それに近い状況になるんじゃないかという懸念はある。

―――病院のキャパシティはどのような状況?
病棟としては常に満床に近い状況で、何とか患者さんを割り振ってやりくりしているが、入院の依頼を断ったりしないといけない状況。軽い人は他の病院に行ってもらったり。重症の場合でも、集中治療室で治療している人がいると、次の重症の人が受けられない。心苦しいが、他の機関にあたってもらっているケースもある。

急激な悪化の“サイン”

―――志村けんさんの感染と急死で驚いた人も多いですが、急に悪化するというのはこの1か月でわかってきた?
実感としては最近かもしれないが、元々は中国の報告を見て予想していたことで、一見軽症に見えても、いったん悪くなると数時間単位で悪くなるというのはやはり経験していた。ただ、高齢の方・持病のある方・ヘビースモーカー・血圧が高い方に限られるのかという印象だったが、最近は若くて元気な人でもそういうケースも出ていて、ますます危機感を強めている。

―――ヨーロッパで若い人でも亡くなったニュースが出ていますが、中国が発表している“40歳以下の死亡率=1%未満”を一概にあてはめることはできない?
中国の中でも武漢を含む湖北省とそれ以外ではだいぶ差があるし、医療機能とか、人々の病院に行くハードルの高さも違うので、一概に比較できないが、ある程度参考になる。中国で武漢があんなことになって、それ以外の地域ではそこまで死亡率が高くないというのは、医療崩壊というのは全国で一斉に起きるものではなく、局地的に起こるものなのかなと。イタリアもそうですし。

―――医療崩壊を起こさせないためには?
新たな感染者を出さないこと。それは政府も東京・大阪の知事も言っているが、人混みを避ける。いわゆる「3密」。新たな感染者を出さないことが1つ。それでも一定の割合で重症になる人もいるので、適切に医療を受けられるように、まず病床・人工呼吸器・「ECMO」の配分などが大事。そして、病床と機械があればなんとかなるものではなく、管理する集中治療に詳しい医師や看護師が適切に配分されることが何より大事。

―――軽症者の急激な悪化はどうやってわかる?
ほとんどは肺炎なので、呼吸の症状が出て、最初は熱・せきが出て、体はしんどくなくて。ご飯をしっかり食べていたが、動くのが嫌になって。ぐったりしてしんどくて、動いたら息が苦しいというのが危険なサインで…。報道で見ただけだが、志村けんさんもそういうタイミングがあったのではないかと。収録もできずに帰ったというが、今思えばその時が重症化した時点なのかな。

―――それまでは自覚がなくても、例えば急に呼吸の回数が多くなったりすることが1つのサイン?
そうですね。

―――軽症の人を入院ではなく隔離するという選択も検討されているが、重症者を見つけていくこととは逆行するような印象もありますが?
重症化するかもしれないから軽症の人を全て病院でというのは難しい。軽症の人は、自宅待機なり施設隔離でもいいが常に連絡が取れる状況にしておいて、自宅待機の人でも保健所に一日一回連絡を取るなり、もし持病などがあってかかりつけ医がいるなら連絡をとったり、常に何かあった時にすぐに対応できる体制にしておく必要がある。

―――ヨーロッパで亡くなった若い人は持病がなかったという報道もあるが、重症化するメカニズムはわかってきている?
わかっていることとわかっていないことがある。糖尿病は悪化しやすいと言われているが、それまで糖尿病とわかっていなくて、若くて元気だから病院にも行っていなくて、今回初めて病院に行ったら実は血糖値が前から高かったのではないか、というケースはある。持病に気付いていない人も一定の割合でいるのも事実。

―――若くして重症になった人の中には危険因子に気付いていなかったことも否定できない?
その可能性はある。ただそれを考慮しても、本当に何も持病がない人も一定の割合でいる。

―――山梨で0歳の乳児の感染が見つかりましたが?
中国では新生児の感染も報告はあったので不思議ではなかった。ただ圧倒的に多いのは高齢者。

医療現場の現状

―――人工呼吸器の管理など、スタッフの皆さんはどのように仕事をしている?
今のところは通常のシフト通りだが、多少該当する部署には応援で人を増やしてもらったりして対応している。

―――医師に注目が集まりがちですが、看護師など相当数のスタッフが必要?
重症患者を1人受け入れると、人工呼吸器やECMOという人工肺装置も使うが、常に機械を扱うのは臨床工学技士だったりするし、患者さんの日々のケアは看護師なので、場合によっては痰がたまると吸引しないといけなかったりするし、ずっと寝ていたら褥瘡(じょくそう)ができるので体位を変えないといけないし、リハビリの理学療法士がサポートしたり。寝たきりの人の場合、筋力が弱るので、とにかく多くのスタッフが関わります。

―――ECMOや人工呼吸器の増産で対処できるもの?
機械がないと始まらないので増産はありがたいが、扱うのは難しいので、それなりに訓練を受けた集中治療の専門医や経験のある看護師が要る。人の配分も同時に考えないといけない。2009年の新型インフルエンザが流行った時に、ECMOが良いらしいと聞いて、ECMOの使用経験がないところまで一斉に使って、不適切な使用に繋がった事案もあったと聞いている。扱いに慣れたスタッフがいるのも最低条件。

―――いつ終わるかわからない状況についてどのような印象?
それが辛いところ。災害だと今までに経験があるし、このインフラが回復したらどうなるとか、だんだん終わりが見えてくるが、この感染症は人類が経験したことのないような状況で、いつまで続くのか見えないのが気持ち的には辛いところがある。

―――医療者の二次感染も非常に心配ですね。
ここのスタッフは心配を常に抱えながら細心の注意を払ってやっているし、恐らくかなり高いレベルで感染対策はしているが、どんなにしっかりしていても穴はある。特に患者さんが増えて忙しくなると、どうしても隙が出てくるので、そこで感染が起きてしまうのが一番怖い。ひとたび職員が感染すると、一緒に休憩室にいたりカンファレンスをしたり、そういった人達も濃厚接触として自宅待機になると現場が回らなくなる。今も多くの病院が外来や入院を閉鎖しているが、当院のように重症の新型コロナ陽性患者を受けているところがそういうことになると、他に受け入れるところがなくなるので懸念している。

―――公的な病院として普段以上に患者受け入れ要請が行政からあるが、他の市中の病院が治療にもっと手をあげて欲しいと思いますか?
大阪府が工夫して、今まで休んでいた病棟を開けたりしているので、大阪府は公的病院以外でも割と受け入れてもらえていると聞いている。今のところ、そこは大阪府が始めたフォローアップセンターの機能が上手くいっていると思う。ただ、これから東京都みたいに感染者が増えた時に、キャパオーバーになるとどうなるのかという懸念はある。大阪はライブハウスのクラスターから始まったところがあるので比較的若い人が多かった。東京の10人の患者さんが出ている総合病院だったり、他の県でも高齢者や障がい者施設でも出ているが、高齢者や障がい者が集まるところでクラスターが発生すると対応が難しくなると思う。

模索が続く治療方法

―――重症者の治療薬の模索が続いていますが、治療方針はどのように?
今、「アビガン」(ファビピラビル)というインフルエンザの薬を臨床試験という形で使用している。原則は国立国際医療研究センターが出している治療薬の手引きに応じて、酸素を吸う必要があるような中等度以上に限って使っている状況。今後、軽症の人にも使う臨床試験も予定されているが、今、当院では中くらいの症状の人に薬を飲んでもらっている。

―――手ごたえは?
良くなっている人もいるが、正直薬が効いたのか、たまたま本人が元気になっただけなのか、わからない。実感としては効く人には効くなと。効かない人には何をやっても効かない。急激に悪くなる人は適切なタイミングで薬を飲んでもらっても食い止めることはできないような感じです。

―――「アビガン」をはじめとする薬の効果の結果はいつ頃出る?
直接は把握していないが、数か月はかかる。今から患者さんが来て、使って、割り振って、データをまとめるので。

―――現時点で患者さんの治療は、人工呼吸管理かアビガンか支持療法かという状況?
一概に選ぶものというか、全部まとめて行うこともある。方針は(1か月前と)大きく変わっていなくて、軽症の人は経過観察か必要に応じて症状を抑える薬。中等度以上は「アビガン」。「デムデシベル」(エボラ出血熱の薬)というのは日本では承認されていない薬で、アメリカでインフルエンザ治療薬として開発されたもの。それを臨床試験として使用する動きは出ている。当院でも試験に参加するかは保留中。あと、他の薬剤でも効果あるのではと。マラリア薬の「クロロキン」とか、抗凝固剤やBCGがいいのではとあるが、もう少しデータが集まるのを見ながら慎重にと思っていて、(候補の薬が)出たからすぐに飛びつくわけではない。ぜんそく薬も言われたが、在庫が少ないので積極的には使っていないが、ケースバイケースで使ってもいいのでは。

―――特効薬がない中、どの薬を使うかは難しい判断?
よくインフルエンザと比較することが多いが、インフルも重症化する時はするし毎年冬に流行っているが、インフルは治療薬もあるしワクチンもあるしすぐに診断できるキットもあるので、トータルで考えるとマネジメントしやすい。コロナは確実な薬もないしワクチンもない。迅速診断キットもいろいろ開発されてきて徐々に使えるが、まだ十分とは言えない。どうしても診断も治療も手探りになる。しかもワクチンもないので、自分達を守ることができないので、不安の中で治療しているのが実態。

―――4月2日時点で、病院で最大で何人の患者を診ている?
のべでいうと30人以上です。

―――重症化の人も?
そうですね。大体2割くらいの人が重症で。退院された人もいる。

―――中国で抗体の話も出ていて、取り寄せるなどいろいろ言われているが?
抗体は他人の血液なので、HIVやB型肝炎などなんらかの感染症もゼロではない。何らかのアレルギー反応が起こることもあるので、そこは賛否両論。積極的に是非みんなで使うものではないと思っている。

「感染防御」と「共存」

―――コロナについて、最初に出てきた情報から今に至るまで、感染症の専門家としてどんな印象?
我々は2002年などのSARSや2013年のMARSを経験していたので、当初はあんなものかと思っていたが、はるか想像の上をいく広がり、重症度。今、改めて1月くらいのニュースで自分達を含む専門家が何を言っていたのか検証してみたりするが、「インフルに毛が生えた程度」と言われていた。間違いではないし、確かに当時ではそうだったが、多くの人にとって想像以上の社会へのインパクトだった。

―――かつての様々なウイルスのように人類が打ち勝つことができる?
打ち勝つというより、ある程度共存する方なのかなと。新型インフルエンザでも、ある程度まで封じ込めて、もう無理となったらどこの医療機関でもみられるし、入院しなくてもいいし。当時新型だったH1N1のものが毎年のように流行るが、誰も大騒ぎしない、そんなふうになるのかなと。ただ、持病がある人や高齢者が重症化するのは間違いないので、これまで以上に個人個人の「感染防御」という考え方を強く意識する必要があると思う。そういった中で共存していく。当時のインフルと違うのは、薬もないしワクチンもないしすぐに診断できるものもない。当時はそれが全て揃っていた。新型とはいってもインフルAなので、診断キットもある程度有効だったし、タミフルなどの抗インフルエンザ薬も効くとわかっていたし。ワクチンも開発の目処が立っていたので、早い段階で共存しようとなった。しかし、新型コロナは諦めるには早い段階。少しでも抑えつつ、ワクチンや薬が出てくるのを待つというフェーズだと思う。

―――薬やワクチンはできる?
そうですね。開発は詳しくはないので何とも言えないが、ウイルスの薬は基本的に難しい。細菌は抗生物質が効くが、ウイルスは効かない。昔から風邪に効く薬はないというが、ウイルスは単純だから、単純だからこそ容易に変異するので。なかなか薬の開発は難しい。

―――政府の布マスク配布についての印象は?
不織布のマスクに比べると良くはないが、仕方がないのかなと。洗って使えるし。2枚というのはどうなのかなと。家族いるところはどうするんだと突っ込みも入る。

周囲の人が亡くなる危機感を強く持って

―――このウイルスとの闘いについて思うことは?
いつかそういう日が来ると思っていて、ここまで大きいとは思っていなかったが、それなりに感染症に忙殺される時期は、SARS・新型インフル・エボラとか、社会を揺るがす感染症は一定の割合で襲ってくる。今起こっていることは史上初のことばかりで。センバツが中止っていう時点でそんなことが起こるんだと思ったが、オリンピック延期も。2月くらいから、このままだと考えなくてはと思っていたが、現実になると歴史の中で無かったことが起こる。恐怖としてとらえている。それだけの凄いことが起きている。

―――ここまで感染が広がっている中、行動を変えられない人がいるが?
若い人の多くは、なったとしても症状が軽いし、そもそもならないことも多いので、実感としてわからないとは思う。確かに志村さんが亡くなられたことは凄いインパクトがあって、ちょっと前まで元気だった両親やおじいちゃんおばあちゃんが急に亡くなるかしれないということを強く感じるエピソードだったと思う。自分の周りの人が新型コロナで亡くなることも十分にある。そう考えたら、必要な外出はいいが、それ以外の外出は控えないと。もっと強く危機感を持っていただきたい。

―――そうしないと都市封鎖になりかねない?
経済の専門ではないので迂闊なことは言えないが、経済活動がこれ以上停滞するのは問題だと思うし、気持ちはわかるが、でもここで封じ込めないともっと大変なことになる。都市封鎖になるともっと経済は停滞するし、長引けば長引くほどそれが続く。今我慢して封じ込めるしかないのかなと思う。

―――公的な総合病院のジレンマもあると聞きますが?
風評被害というか、公立病院なのである程度受けないといけないが、ここにコロナの患者が来ていると言われると、他の患者さんが不安になったりとか外来に行くのが嫌だと受診を渋ったりするケースが出てくる。不安だと。「病院に入院しているんでしょ」「エレベーターで一緒になるのでは」と心配する声があるが、そんなことはない。こういう病院だからこそ動線を分けているし、熱が出て病院に来た人もすぐに振り分けて、大勢の所に行かないシステムになっているし、もし感染がわかったら一般の人とは違うエレベーターを使うなどの体制はできている。院内感染の可能性は極めて低い。対策はしっかりやっていると強調したい。

―――終息の目処はいつ頃だと?
終息はないんじゃないか。ある程度抑えられたところがその時。別の報告では、今までのコロナのパターンをみると、夏場に減って冬場に増える。コロナは低温と乾燥の状況を好むので冬の方が多い。まただらだらと減って、また増えてというのが続くのではないかと。

※このインタビューは2020年4月2日に行ったものです。

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