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失明きっかけに『特性生かしたものづくり』続けるアイデアマン...外出には"刑事ドラマのアレ"!

2020年03月26日(木)放送

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視覚障がい者の男性が“ある自分の悩み”を解決すべく作ったものが反響を呼んでいます。作った経緯をご本人聞くため訪ねると、当事者の悩みに寄り添った様々な発明品がありました。

刑事ドラマをヒントに「ホルスター型かばん」作った男性

兵庫県豊岡市。待ち合わせ場所の駅前の広場には、スーツを着たサングラスの男性が1人、白い杖を持って立っていた。谷口和隆さん(58)。似ていると言われる有名人はもちろん、全国各地をブラブラする、あの人だ。

谷口さんが作った“人気のもの”があると聞いたのですが?

「これのことですかね。」(谷口さん)
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そう言って谷口さんがジャケットを開くと、脇の下には、刑事ドラマなどでよく見る拳銃ケースのようなものが。これは一体?

「スマートフォンや財布を入れるための、ホルスター型の“かばん”なんです。」(谷口さん)

脇の下にぴったりくっつく形の薄手の「ホルスター型かばん」。これが今大人気だ。この形になったのには、もちろん理由があった。
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30代で全盲になった谷口さんは、外出時には杖が欠かせないため、片手は必ず杖でふさがる。もう片方は手すりを持ったり安全確認のために開けておかねばならない。そのため、リュックやウエストポーチを使っていたが、ずっと困っていることがあった。

「スーツを着るとか、お葬式に行くとか、“フォーマルな服”を着る時に、そういったかばんは使えませんので。ものを入れる、収納するところに困っていたんですね。」(谷口さん)

スマートフォンだけでなく、財布や障がい者手帳なども入れられて、上着の中に隠せるかばんができないか…。悩んでいた時にふと思いついたのが、昔見た刑事ドラマの「ホルスター」だった。
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谷口さんは早速、ダンボールで「理想のかばん」の原型を作った。

「かばんの外側にスマートフォンを入れるように考えました。かばんの中に入れると、バイブの振動が分かりにくかったり、音が聞こえにくかったりするんですけど、外ポケットに付けることで振動も音もわかりやすいですし。」(谷口さん)

誰でも使いやすくて大人気 カバン職人がミリ単位で調整

幸い、谷口さんの住む兵庫県豊岡市は日本一のかばんの生産地。製品化してくれる店探しをする谷口さんに手を差し伸べてくれたのは、オーダーメイドのかばんも手がける「カバンツクリエーション0203」のかばん職人・中野嘉容さん(51)だ。

「かたっぱしからネットで探して電話をして話をしたんですけれど、散々断られてしまいまして。やっとたどり着いたのが中野さんだった。」(谷口さん)
「情熱といいますか、よっぽど困っているんだろうなと感じて。これは何とかうちでできるんだったら、してあげたいなと。」(中野さん)
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鞄職人歴20年の中野さんだが、作るのはそう簡単ではなかったという。

「ファスナーの位置も狭いと出し入れしにくいし。広がりすぎて、中身が落ちちゃうと、見えないので探すのが大変ということで、細かくセンチとかミリ単位で。」(中野さん)

約4か月かけて去年10月に完成。

「十分納得ができるものができて、実用的だなと思いましたね。」(谷口さん)
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完成品を手にした谷口さんは、他の視覚障がい者にとっても便利なはずだと考え、自ら販売することにした。すると、杖を持って外出する高齢者などからも好評で、発売から5か月で150個を超える注文があったという。ホルスター型かばん「TN19」は1万6500円(税込み)だ。(3月26日現在は黒色のみ、豊岡鞄装で販売)

『視覚障がい者用のカルテ管理ソフト』も開発

20代半ばで病気を発症するまで、メガネをかけることもなくスポーツや車の運転もしていた谷口さん。医師から将来失明すると言われ、手に職をつけなければと会社員を辞め、鍼灸の道に進んだ。ところが…

「(鍼灸院で)カルテをつけないといけないんですけれど、僕は点字がほとんどわからないので、カルテをつけることができなくて、困っていて。」(谷口さん)

そこで自ら開発したのが、パソコンの音声機能を使った『視覚障がい者用のカルテ管理ソフト』。これを作った時も…

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「自分の便利の良いものは、他の視覚障がい者にとっても便利が良いんじゃないかと。売り出したら、ヒットしてしまって。失明した時は、できなくなったことばかりを数えて、くさっていた時期があったんですけど。ちょっと助けてもらったら、色んなことが出来るなと分かってきて。自分の出来ることをひとつひとつ増やしていくのが、段々生きがいになってきて。」(谷口さん)

『スペースインベーダーゲーム』を開発したワケ

谷口さんは鍼灸院を辞めて会社を立ち上げ、カルテ管理だけでなく、現金出納帳など視覚障がい者向けのソフトを次々と開発。さらには、視覚障がい者も楽しめる『スペースインベーダーゲーム』も作ってしまった。しかし、どのように遊ぶのだろうか。

「目で見て、プレーすることが出来ませんので、ステレオのヘッドホンとかイヤホンをつけて、左右のステレオ効果で敵の位置や自分の位置がわかって、攻撃ができたり、攻撃をかわしたりできるようにしました。」(谷口さん)

幕張メッセで開かれた世界最大規模のゲームの展示会『東京ゲームショウ2008』でも紹介されたこの作品には、谷口さんの思いが詰まっている。

「僕の父親も目が悪かったものですから、子どもの頃、一緒にトランプしようとか人生ゲームしようと言っても、一緒に遊んでもらった記憶がないんですよね。目が悪くても、みんなで一緒に同じ土俵で楽しめるゲームが世の中にあったら、もっと笑顔が増えるんじゃないかなと思って。」(谷口さん)

悔しい思いから『歩行レコーダー』

そんな谷口さんが今取り組んでいるのが、視覚障がい者向けの『歩行レコーダー』。車のドライブレコーダーの歩行者版だ。

「ながらスマホ」が増える中、ぶつかった時などに相手が視覚障がい者だと分かると、そのまま逃げたり、一方的に悪者にされたりするケースがあり、谷口さんも何度か悔しい思いをしたという。そこで、万が一の時に客観的な証拠となる映像を残せないかと考えたのだ。
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この『歩行レコーダー』をかばんの肩紐などに装着しておけば、最長12時間録画が可能で、夜でも撮影が可能だ。

できないことに落ち込むより、「こうすればできる」と前を向きたい。その気持ちが谷口さんの原動力だ。

「僕にできることは、僕の特性(視覚障がい)をいかしたものづくり、それしかないので。分野にとらわれずに、自分がこうだったらいいなとか、困っていることを解決するようなものをどんど開発していきたいなと思っています。」

(3月26日放送 MBSテレビ「ミント!」内『辻憲のBUZZリポ』より)

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