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【特集】「まさか3倍とは」いきなり上がった固定資産税の評価額に困惑...50年以上続く町工場に何が

2020年02月24日(月)放送

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兵庫県尼崎市で50年以上続く町工場の『固定資産税の評価額』が、いきなりこれまでの3倍に膨れ上がったため、経営者は困惑しています。いったい、何が起きているのでしょうか。

固定資産税の評価額が「3倍」に

兵庫県尼崎市。JR塚口駅近くのJR福知山線と阪急神戸線に挟まれた場所に「シンコー油脂」という一軒の町工場があります。シンコー油脂は50年以上、この場所で「繊維用ワックス」の製造を行っています。かつては10人前後の従業員がいましたが、今は社長の大谷雅史さん(61)が一人で細々と工場を続けています。
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「(ワックスの周りに)糸を走らせて、糸が走ったらこれ(ワックス)が回るじゃない。それでワックスを付けていくのがリングワックス。」(シンコー油脂・社長 大谷雅史さん)
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おととし5月、市から届いた固定資産税の支払いを求める文書を見て腰を抜かしました。

「固定資産税の納付書が届くと思うんですけど、その納付書を見た時に、上がっていたのでびっくりしました。多少上がるかなとは思っていましたけど、まさか“3倍”とは思いませんでした。」(大谷さん)

大谷さんの元に届いた固定資産税の納税通知書を確認すると、工場の土地216平方メートルにかかる固定資産税の評価額が、前年の1256万円から3553万円へと3倍に膨れ上がり、固定資産税も約17万円から約20万円に増えていたのです。更に去年は約23万円にまでアップし、3年前から6万円も増えました。

【大谷さんの固定資産税の推移】
2017年度=評価額:1256万円、固定資産税:約17万円
2018年度=評価額:3553万円、固定資産税:約20万円
2019年度=評価額:3553万円、固定資産税:約23万円

「ずっと変わらず固定資産税は大体同じ額を払ってきました。何かの間違いかと思いますよね。たとえ行政だったとしても、いきなり何の連絡も無しに(評価額を)上げることがあっていいのかなとは思いますね。」(大谷さん)

「何かの間違いではないか」大谷さんはすぐに市役所に連絡しました。すると役所からはこのように言われたといいます。

「工業用地から住宅用地に変わったと。仕方ないですねという説明でした。」(大谷さん)
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最近になって、工場の付近一帯の土地区分が『工場地区』から『住宅地区』に変わったというのです。

土地が『大工場地区』→『普通住宅地区』へ変更

工場がある場所のすぐ近くには、かつて大手菓子メーカー「森永製菓」の塚口工場など、いくつもの工場がひしめきあい、作業着姿の労働者で賑わっていました。当時を知る近所の人も…

「旭硝子の工場とか、いわゆる工場地帯やね。」(近くの住民・74歳)
「鉄道の線路を作る日東産業や、その隣が日本パイプ。近くの小学校の校歌は『♪工場の町のー』という歌。」(近くの住民・87歳)

しかし、バブル崩壊後は工場の廃業や移転が相次ぎ、跡地に総戸数・約1200戸の巨大マンションや商業施設が建設された結果、労働者の町はファミリー層に人気の住宅エリアへと様変わりしたのです。

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固定資産税は、路線価を基に算出された評価額に応じて、課税額が決まります。路線価は3年に一度見直されますが、尼崎市はおととし、最近の状況を踏まえた結果、マンション群を含む工場の付近一帯を税額の低い『大工場地区』から、『普通住宅地区』へと変更したのです。

大谷さんの土地は、この区分変更に加えて、工場の前の市道が幅4.5mから12mへと拡張されたこともあって、路線価が上昇して固定資産税の支払額が増えてしまったのです。税額は調整措置により段階的に増えていきますが、数年後には今の23万円から50万円以上になる見通しだといいます。

大谷さんは現在、評価額の見直しを求めて市に不服申し立てを行っています。

「僕としてはやれることは全部やったんです。異議申し立てもしたし、税理士や弁護士にも相談したし。全ての人が『やっぱりおかしいやろ』と。尼崎市の資産税課だけが『住宅地として課税するのは正しい』と。審査委員会の人の意見が、どういう結果になるのか楽しみにしています。」(大谷さん)

尼崎市「区分変更は適正」 専門家「特例扱いにするのが難しい」

では、土地区分の変更を行った尼崎市はどう考えているのでしょうか。

「当該地域は以前、大規模な工場が存在していたため『大工場地区』として評価していました。その後、跡地が宅地開発されたことで宅地が連続する地区へと変化しました。このことから区分変更をしたことは適正と考えています。」(尼崎市 資産税課)

固定資産税に詳しい専門家も、住宅地区内に1軒だけ工場がある状態なので、特例扱いにすることは難しいと話します。

「大工場の中に1軒だけ中小工場が入っていたとか、普通住宅の中に1軒だけ中小工場が入っているというケースなので、レアケースであると思います。1軒だけで用途区分は判断していないんですよ。周辺の利用状況を全部見て、状況類似地域を切っているので、その状況類似地域の中で標準的な仕様は何なのか、と考えていきます。」(不動産鑑定士 小杉正樹さん)
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マンション開発で再び賑わいを取り戻した町。その陰で、戦後の経済発展を支えてきた町工場が窮地に立たされています。

(2月24日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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