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"モニター画面"を見つめてお酒を飲む店って?『アバター店員』だからこそ「話せる」魅力と可能性とは

2020年02月13日(木)放送

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東京のJR中央線・中野駅界わい。その一角に木・金・土の週3日だけ営業する立ち飲みバー「AVASTAND(アバスタンド)」がある。ここは客が『アバター店員』と酒などを飲みながら話すことができる。アバターは“人の分身となるキャラクター”を指す意味で使われるが、いったいどのようなところなのか、現地を取材した。

アバター店員と楽しくお酒が飲める「AVASTAND(アバスタンド)」

JR中野駅近くにアバター店員と話せる立ち飲み屋があると聞いてやって来たMBS取材班。この日は2月6日午後6時で気温は3℃。この寒さでも人が集まっているところがある。

そこは吹きさらしのカウンター。客は縦長モニターに映し出された“人型のキャラクター”向かって話しかけていた。このモニターに映るキャラクターが『アバター店員』だ。『アバター店員』と話しながらお酒を飲めるのが、この「AVASTAND(アバスタンド)」なのだが、『アバター店員』を操る実際の『店員』は遠く離れた場所にいて、客は遠隔で店員と会話。『店員』の身振り手振りや表情は『アバター店員』に反映されて表示されるというのだ。

お客さんとのやり取りの様子を見てみることに。
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(アバター店員)「何か頼みますか?」
     (客)「お願いします。」

会話を聞いてみると、画面に映っているのは『アバター店員』のキャラクターだけなのだが、声は遠く離れた所にいる『店員』のものだ。注文をしたいと伝えると、モニターに飲み物のメニューが表示された。メニューにはビールや酎ハイ、焼酎にワイン、それにコーヒーなどがある。ミックスナッツなどの食べ物もあるようだ。価格は全て税込み500円で支払いは現金かPayPayだ。
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 (客)「焼酎の芋の温かいヤツで、寒いから。」

タッチパネルを押すでもなく、『会話』で注文して、しばらくすると…

(店員)「お待たせしました。」

モニターの横にある青い小さなドアが開き、別の人間の店員が、注文されたお酒を持ってきた。ここはアナログだ。
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お店の作りはどうなっているのか。アバスタンドを運営する高崎裕喜社長(48)が小さなドアを開け、店の中を案内してくれた。店の作りは至ってシンプル。1坪(約3.3平方メートル)の空間に調理器具を敷き詰め、店員1人だけが常駐する。あとは、求人広告で集まった全国の『アバター店員』が1200円以上の時給で働く。アバスタンドは木・金・土の週3日、午後6時~午後11時まで空いている。

「自宅で働けてこの場所で接客できる。『究極の働き方改革』みたいな、そういう場所を提供しているような感じです。」(アバスタンド運営 高崎裕喜社長)

アバター店員はどんな「人」?

取材班も、モニター画面のボタンを押し、アバターにアクセスしてみた。誰が出てくるかは、わからない。

(アバター店員)「こんばんは。博多マルコです。」
   (取材班)「ということは博多の方ですか?」
(アバター店員)「そうです。福岡からです。」
   (取材班)「失礼ですが、お年は?」
(アバター店員)「ご想像にお任せ致しまーす。」
   (取材班)「お仕事は何を?」
(アバター店員)「年金と…」
   (取材班)「年金?」
(アバター店員)「そうです年金受給者でーす。」

博多マルコさんは「若い人と話すことで人生が楽しくなった」という。
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隣のモニターに映る『強面アバター』にも聞こう。

(アバター店員)「どうもジョージでーす。私オネエのジョージっていうことで、オネエなんです。よろしく。」
   (取材班)「で、このキャラで?」
(アバター店員)「そうなのよ。」
   (取材班)「オネエのジョージさんはお年はいくつですか?」
(アバター店員)「あら、オネエに年齢聞いちゃダメよ。秘密っていうことでよろしく。」
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『アバター(avatar』は本来、インド神話などに登場する神の化身のことだが、ここでは全国にいる店員が、素顔を明かさずに接客をする分身となっている。独特の世界観に、客の反応は…

「思ってた以上に楽しいですね。」(東京・中野区在住の24歳の客)

「アバトーク」を開発した社長の思い

2019年4月にオープンしたこの店。実は、とあるスマホアプリの実証実験店舗だ。それが無料アプリの「AvaTalk(アバトーク)」。分身同士が会話する仮想空間を作り出す、というサービスで2019年12月から配信されている。目や服装など550通りの組み合わせで自分のアバターを作り出せる。目や口の動きは、センサーが働くことで、自分の顔と連動してアバターが動く。

アプリを開発したのはアバスタンドを運営する「HEROES」の高崎裕喜社長。なぜアバターを開発したのだろうか。

「今、コミュニケーションが苦手な人達というのが、社会に多いんですね。一人暮らしの方、ご高齢の方、引きこもりがちの方とか、そういう方々に自分の気持ちを何か話せる環境がここで作れるんじゃないかという思いがあります。」(「HEROES」 高崎裕喜社長)

関西弁で人気者「テンマちゃん」

実際、実験店舗の「アバスタンド」でアバター店員をしている人たちは、面と向かっての会話や交渉が苦手な人もいるという。

     (客)「ヤッホー」
(アバター店員)「ヤッホー!はじめましての人や!」
     (客)「はじめまして。」
(アバター店員)「若い兄ちゃんや!」

午後6時の開店から軽妙な関西弁で接客し続ける「テンマちゃん」はこの店の人気者だ。初めて来店したというお客さんに感想を聞いてみた。

(25歳の客)「楽しいですね。逆に気兼ねなく喋れて、距離があるからこそ、親密に喋れるみたいな所もあって。」
  (取材班)「関西弁で喋りますけど?」
(25歳の客)「キュンときますね、声もかわいらしい方なので、多分、中の方もいい方なんだろうなって感じがしますね。」

「テンマちゃん」の仕事部屋は?

「テンマちゃん」は一体どのような人物なのか…テンマちゃんが自宅で取材に応じてくれた。東京都内に住む22歳のテンマちゃんは2019年4月に上京。自宅で、すっぴんでもできるこのバイトに惹かれ、アバターの求人広告に応募した。関西弁のテンマちゃんの出身地は?

「出身は大阪の八尾市です。帰省した時とかは大阪にこのパソコンなどを持って行って、実家から“出勤”しています。普段は芝居の稽古をしていまして、今は役者を志しているんですけれども、普段喋ることのない人と喋れるし。人って対話していると、いろんな相手の外見に気をとられるので、余分な情報が無い分、すんなり話に入り込めるんじゃないかなって思います。」(アバター店員 テンマちゃん)

待機時間に洗い物や洗濯をしながら次のアクセスを待つ。と、そこへコール(電話)がかかってきた。電話を取るボタンを押して、ここから時給計算が再開する。
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この日は常連客の28歳“コウちゃん”がアバスタンドにやってきた。

(テンマちゃん)「ヤホー、コウちゃんじゃん。」
 (コウちゃん)「どうもどうも。久しぶり。」
(テンマちゃん)「寒い?」
 (コウちゃん)「寒いよ、外だぞ、こっち。」
(テンマちゃん)「私はねえ、家の中…。」
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アバターのテンマちゃん側からは、客は見える。客から見えるテンマちゃんは、アバターのテンマちゃんだけだ。都内の自宅にいる姿はモニターからは見えない。

   (取材班)「テンマちゃんがお気に入り?」
 (コウちゃん)「まあまあ、一番よく喋ってますね。」
(テンマちゃん)「お気に入りって言いなさいよ。」
 (コウちゃん)「いやいや、選べないもん、こっちから。」

午後9時半。冷え込みが増す中、アバターを求めて客は来ていた。

高知県から産地直送の魚を売る「アバター市場」も開催

月に1回程度開かれる「アバター市場」というものもある。高知県須崎市とHEROESの高崎社長が実験的に開催しているイベントで、アバター店員の高知県須崎市在住の漁師のジョーさん(28)が産地直送の魚をアバスタンドで販売している。

「この間まではカツオ系の魚があって、それが凄く美味しくて。ちょっとびっくりしたんですけどめちゃくちゃ売れるんですよ。」(漁師のジョーさん)

このアバター市場の成功を受け、埼玉県の筑波大学附属坂戸高校の農業科では、自分達で作ったジャムなどの遠隔販売に挑戦中だ。

「みんなが落ち着ける場をネット上に作りたい」

      (客)「お姉さんは普段何を?」
(博多マルコさん)「年金もらってるから…。」
      (客)「あははは。」

年金の話が「テッパンネタ」となった博多マルコさんのトークも、アバターの新しい可能性を引き出した。現在、高齢者施設の入居者と若い人をアバターで結ぶ計画が進行している。アプリを開発した高崎社長は、皆が落ち着ける場をネット上に作りたいと夢を語る。

「例えば『今日、一緒に晩ご飯を話しながら一緒に食べませんか?』みたいな。そういう風な形でちょっとゲーム感覚のコミュニケーションを。でも、心がほっとするような、そういう使い方がこれから広がっていけばいいかなと。」(HEROES 高崎裕喜社長)

(2月13日放送 MBSテレビ「ミント!」内『辻憲のBuzzリポ』より)

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