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【特集】子どもが健康診断で『要受診』に...でも「半数近くが受診せず」ひとり親家庭の"経済面だけではない"難しい現状

2020年02月11日(火)放送

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子どもが学校で健康診断を受けた結果、「医療機関での受診が必要」という通知を受け取ることがあると思いますが、約半数の子どもが受診できていないことが分かりました。中でも、『ひとり親の家庭』が多いというのですが、病院に連れていけない事情がありました。

仕事に家事に育児…あわただしい日常

大阪府河内長野市に住むブラジル出身のアラルジ・バニアさん(49)。仕事を終えてから、あわただしい時間の始まりです。午後5時、仕事帰りに夕飯の買い物へ向かいます。

「きょうは寒いので、できるだけ安く、鍋を作りたいです。」(アラルジ・バニアさん)

ばたばたと買い物を終え、自宅近くのバス停で降りると、先に帰っていた2人の子どもがお出迎え。バニアさんは25年前に大阪に移住し、今は小学校や中学校で子ども達に英語やポルトガル語を教える仕事をしています。9年前に結婚しましたが、DVなどを理由に3年前に離婚。小学3年のリオくん(9)と小学1年のマヤちゃん(7)を一人で育てています。

「朝ごはんの食器も洗っていないし。これを洗ってから晩御飯を作りたいけど、子ども達はもうお腹ペコペコやし。」(バニアさん)
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午後6時過ぎ、夕飯の準備に取り掛かります。

(バニアさん)「えらい汚いね。」
(マヤちゃん)「きょうこけてん。」
(バニアさん)「またこけた?」
(マヤちゃん)「ケンカしてこけた。」

ご飯の準備をしながら子ども達の相手をして、この日、食卓を囲んだのは午後7時でした。

仕事に家事、そして育児。大変ながらも幸せな日々を送っているというバニアさんですが、気がかりなことがあるといいます。

「リオ君が学校でもらって、眼科に連れて行かなきゃならない。」(バニアさん)

去年10月にリオ君が学校から渡された視力検査の結果を見てみると、左目の視力が「C」でした。病院での受診を勧められていますが、連れていくことができていません。取材した日は2月初旬。すでに4か月が経過していました。

全国保険医団体の2019年調査によりますと、学校健診で医療機関での受診が必要と診断されたにもかかわらず、実は半数近くの児童・生徒が未受診のままだといいます。視力検査や歯科検診にいたっては60%近くが未受診で、要因の1つとして挙げられたのが、バニアさんのような『ひとり親家庭』でした。

経済的な問題ではない「未受診の理由」

自治体は子どもの医療費の助成を行い、ひとり親の家庭についてはさらに負担を軽減する制度を設けていますが、未受診の理由は経済的な問題ではないと言います。

(Q病院に連れて行くことの何が一番負担になっていますか?)
「時間。1日遠くまで行って、仕事をして、帰ってきて。家の晩御飯とかしなきゃいけないけれど、近場に歯医者もないし、眼科もないし。来週にしましょうとしてしまうところは正直あります。」(バニアさん)

高熱などの急病でない限り、仕事を休んで病院に連れて行くことは難しいと感じています。
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左目の視力が「C」だったリオ君は生活に支障はないのでしょうか。

(Q見えづらくないの?)
「別に見えづらくないよ。ちゃんと見えてるよ。(Q病院に行きたくない?)別に行かなくてもいいやん。だって全然見えづらくないし。(Q病院が嫌?)別に嫌じゃないけど、行くのが面倒くさい。遠いから、バスいちいち乗らなあかんし、お金もかかるし。」(リオ君)

リオ君は母親であるバニアさんに対しても「見えづらい」とは言わないそうです。

「全然言わない。言ったこともないし、聞いたこともない。お母さんにもっと負担かかるとか、もっと心配なことになると、特に兄ちゃん(リオ君)は長男だからそれもあると思う。」(バニアさん)

ひとり親の95%が「病院受診の確保が難しい」と回答

神戸市内で行われたひとり親の支援サークル「エスクル」の交流会。エスクルの調査でも、ひとり親の95%が『子どもの受診のための時間を確保するのが難しい』と回答しています。受診させたという人も、容易ではなかったようです。

「駅前の歯医者を予約しておいて、駅前までは子どもに一人で来てもらって、私は仕事終わりで駅に集合して、歯医者に行くという感じで。」(小2の子をもつ30歳のシングルマザー)
「(子どもが風邪を引いた時に)近くなので、タクシー呼んで連れて行くにしても拒否される。おんぶも出来ないし、大変やったかな。(Qどのように連れて行ったのですか?)自転車に乗せてなんとか…。」(中3と高3の子をもつ45歳のシングルマザー)

「ひとり親というのは家事・育児・仕事。普通だったら2人ですることを1人でしますので、負担は相当なものになる。かつ時間の捻出は、ふたり親家庭より難しくなります。」(ひとり親支援サークル「エスクル」発起人 今井智洋さん)

放っておくとより深刻な事態に…『口腔崩壊』

未受診のまま放っておくと深刻な事態を招くこともあります。その1つが『口腔崩壊』です。口腔崩壊とは虫歯が10本以上ある状態の事などをいいます。食習慣の改善や歯磨き粉の改良などにより、虫歯の子どもが大幅に減っているにもかかわらず、口腔崩壊の子どもは変わらず一定数いるといいます。受診せずに長い間放置されたことが原因とみられます。

「1クラスに1人か2人いてるかもわからないですね。本当に来て欲しい子がなかなか連れて来てもらえていない、というのが僕の実感です。ここまで来てもらわないと、十分な治療はできない。」(とみもと歯科医院 冨本昌之歯科医)

子どもを病院に連れていく時間を確保するには

2人の子どもをひとりで育てるバニアさん。夜9時、子ども達が寝たのを確認すると、朝に干した洗濯物をようやく片づけます。忙しい中でも、いつ、どうやって子どもを病院に連れて行くのか悩み続けています。

「(病院に)行かなきゃいけない、行かなきゃいけないとは思っています。例えば車で送迎してもらえるNPOの支援とか、24時間診てくれる病院とか、土曜日は1日オープンする病院があれば行きやすいと思う。」(バニアさん)

行政の支援としては、「家庭生活支援員」というものがあります。これはひとり親家庭を対象に、子どもの送迎や病院への付き添いなどを家庭生活支援員に頼むことができるというもの。自治体によって違いますが、支援員には保育士や看護師の資格などの条件があります。しかし、大阪府の場合は50人の支援員が登録しているにもかかわらず、利用したいという登録者数はたった17人となっています。

多忙なひとり親の家庭でどのように子どもを適切に受診させるにはどうすればよいか…家庭だけの問題にせず社会全体で考えていく必要がありそうです。

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