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指揮者・佐渡裕さんが語る「こころの復興」 被災地に届ける音楽の楽しさと喜び

2020年01月16日(木)放送

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つらい時、悲しい時、音楽が支える「こころの復興」について、世界で活躍する指揮者・佐渡裕さんに話を聞きました。

音楽で届ける“心のビタミン”

佐渡裕さんは震災発生時、演奏会で京都にいました。あの震災の日の記憶は今も鮮明です。

「京都のホテルの11階にいて、もちろんかなり揺れました。ニュースを見る度に犠牲者の数がどんどん増えていく。これはえらいことだと。」(指揮者 佐渡裕さん)

佐渡さんは京都出身。1989年にフランスの国際指揮者コンクールで優勝し、一躍、注目を集めました。その後、世界に名立たる数々のオーケストラを指揮し、現在は一年の半分は音楽の都・ウィーンを拠点に活躍しています。
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阪神・淡路大震災が起きたのは1995年1月17日。佐渡さんが世界を舞台に活動を始めていた頃でした。日本になかなか居られない歯痒さと、音楽家として無力感に苛まれたといいます。
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「音楽で何かができると思わなかったし、僕が出て行く場が無いような有るような。人として水を届けたり毛布を届けたりとか、そういうことがあったのにと思いながら。大好きな阪神間の街に何もできないという。ちょっと罪の意識みたいなものがそこで生まれるんですね。」(指揮者 佐渡裕さん)

『復興のシンボル』への葛藤

地震から5年後、そんな佐渡さんに、まだ計画段階だった県立劇場の“芸術監督になって欲しい”と声がかかります。その舞台は兵庫県西宮市の『兵庫県立芸術文化センター』。
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以前からあった建設計画が震災の発生でとん挫。その後“復興のシンボル”として再び計画が動き出したのでした。
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“芸術監督”には、定期演奏会の指揮や、専属のオーケストラへの指導、コンサートプログラムを決めるなどの役割があります。音楽の総責任者としての仕事。悩んだ末に佐渡さんは引き受けます。

しかし、地元はまだ衣食住も十分とは言えなかった時期。このタイミングでの芸術監督のオファーに多くの葛藤がありました。
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「この辺りも更地がいっぱいあったし、ブルーシートがまだかかっている所もいっぱいあった状態でした。もの凄く生々しい声が聞こえてくるわけですよ。『佐渡さん、お金かけて劇場造るのはいいけど、私は店のローンもあるし家のローンもあるし大変やねん』と。美しいフレーズを作るのが自分の仕事だと思っていたけれども、街を元気にするとはどういうことなんだろう、そういうことを考えることになっていくわけです。」(指揮者 佐渡裕さん)

“苦悩の先には歓喜がある”

“地域から愛される劇場にしたい”
佐渡さんはまずリコーダーを手に小学校を訪れ、音楽の楽しさを届けます。
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地元の商店街とも親交を深め、街と共に成長することを目指したのです。

2005年、芸術文化センターは完成しました。
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初日の公演で演奏されたのはベートーヴェンの『交響曲第9番』。“苦悩の先には歓喜がある”というメッセージが込められた曲です。復興のシンボルの誕生でした。
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2011年、東日本大震災が起きた時も、悩みに悩んだ末、音楽の力を信じることにしました。兵庫県立芸術文化センターの子ども達「スーパーキッズ・オーケストラ」と共に被災地に向かいました。
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無力に思えた音楽が、まるで奇跡が起きたかのように人々の心に沁みていくのを感じました。

支援を通じて学んだ音楽の原点

「音楽って結局、みんなが一緒に生きていることが喜びだと感じる、そのためにあるように思ってきたんですね。自分が復興の支援を手伝ったことで、音楽の原点みたいな、本当に根っこの根っこ、何のために音楽をするのかということを学んだ気がするんです。」(指揮者 佐渡裕さん)
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今年1月17日の定期演奏会に選んだのはフォーレの『レクイエム』。阪神・淡路大震災から25年。犠牲者を悼む鎮魂の調べです。

「本当に優しく、優しく、天国に繋がっていく音符が書かれている曲なんですね。だから、そうした優しさが届けられる音楽でありたいと思う。」(指揮者 佐渡裕さん)

累計入場者数が700万人を達成した兵庫県立芸術文化センター。佐渡さんはここで、これからも音楽の真価を伝えます。
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「オーケストラの音が凄く身近に、大きな感動が身近にあるような劇場であったらいいなと思っています。そうした感動は一生の宝物になるし、そういうことを一杯届けられる、『心のビタミン』を届けられる劇場でありたいと思っています。」(指揮者 佐渡裕さん)

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