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"絵の力"を信じて...子ども達に寄り添う女流画家 被災地で咲かせる『命の一本桜』

2020年01月15日(水)放送

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阪神・淡路大震災から25年。災害の被災者を支援する形はいろいろありますが、絵の力を信じて、子どもからお年寄りまで、寄り添い続ける神戸の女性が主人公です。阪神・淡路から東北、そして未来の人材育成へ。描かれた真価の軌跡からは、何が見えるのでしょうか。

私が出来ることは“絵で寄り添う”

神戸市東灘区の「アトリエ太陽の子」。300人の子ども達が日替わりで通う絵画教室です。

代表である画家・中嶋洋子さん(67)がこの教室を開いたのは37年前。その後、教室は6か所に広がりました。当時は子ども達への指導と自分の制作活動とで充実する日々を送っていました。
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「私は凄く自信満々に生きていたんですよ。世の中は芸術で何とかなる、変えられるみたいな、凄くおこがましいことを考えていたんですよね。それがあの『阪神・淡路大震災』を経験したことによって、愛しい教え子が亡くなった瞬間ですよね。なんて無力なんだろうと。」(アトリエ太陽の子 中嶋洋子さん)

阪神・淡路大震災で、御影教室の教え子だった小学1年生と幼稚園児の姉妹が亡くなりました。アトリエは6か所とも半壊し、全て避難所となりました。
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「芸術をしている私たち画家は、こういう時になんていうかな、本当に情けなかったですよね。何も出来ない。」(アトリエ太陽の子 中嶋洋子さん)

無力感に苛まれていたある日、内閣府の防災ポスターコンクールの作品募集が目に留まります。
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「表紙が『あ、じしん』といって小学1年生が描いた防災頭巾を被っているだけの絵なんですけど。ほんの短い言葉でしょ。でもね、インパクトが凄かったんですよ。これを見た途端に私はね、“あっ私に出来ることがある”と思ったんですよ。私が出来ることがある。」(アトリエ太陽の子 中嶋洋子さん)

子ども達の想像力が命を救う

今、中嶋さんは毎年必ず、1月17日に向けて、子ども達にあの震災のことを伝えます。

(中嶋さん)「今日は『震災・命の授業』をしたいと思います。1月17日午前5時46分、尊い命が、6434名の方が、亡くなりました。生きたかったと思う?死にたかったと思う?」
(子どもたち)「生きたかった。」
(子どもたち)「死にたくない。」
(中嶋さん)「(死にたいとは)思わないよね。生きたかったのよ。地震でね、無理やり無理やり亡くなりました。もしも、あの日あの時あの場所に、僕が私がいたならばと。想像力です。これで何人もの命が皆さんの絵で助かるかもしれない。先生は信じています。」

中嶋さんの『命の授業』。全身全霊で命の大切さを教え、その後、子ども達に防災ポスターを描かせるのです。
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想像力を働かせて人々に訴える防災ポスターを描くことで、災害の怖さや命の大切さを思う気持ちが芽生えると、中嶋さんは言います。
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「想像だけで凄く泣きそうになった。色んな人が死んで、かわいそうだなって思った気持ちが心の奥に奥に入った。」(アトリエに通う児童)
「この絵を使って、命の大切さとかをどんどん知ってもらいたいなと思った。」(アトリエに通う児童)

東北の被災地にも届ける『絵の力』

宮城県気仙沼市。東日本大震災の被災地にも中嶋さんは毎年通っています。回った避難所や学校は8年間で64か所に上ります。

去年11月に訪れたのは気仙沼市の面瀬公民館。この地区への訪問は8度目で、この日を楽しみにしていた地元の人ら約80人が集まりました。
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「福よ来い来いという、これが今回の目的ですので、皆様。“私はやるぞ!神様を掴むぞ!引き込むぞ!”と楽しい気持ちで。」(アトリエ太陽の子 中嶋洋子さん)

新年を前に、干支の子の色紙絵を皆で描いていきます。
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普段は絵を描く機会の無い人がほとんどですが、中嶋さんの個性的で優しい指導によって、作品が仕上がっていきます。“和気あいあいと楽しみながら絵を完成させる達成感が人々を元気にする”。これこそが中嶋さんが信じる『絵の力』です。

「変わりましたよ随分、皆さん。先生が来ると先生の元気を貰って。絵を描いてる間は色んなことを忘れられると思うので、無心にこの絵と向き合うということは、素晴らしいことだと思います。」(地元の民生委員)
「私、あの震災で車ごと流されて。その時にケガしていて、右手が使えなくなったの。骨がバラバラになっちゃって。手を使う為にこれを始めた。そしたら楽しくて、毎年楽しみにしてやってんの。」(被災した女性)

『命の一本桜プロジェクト』

東北での中嶋さんの活動の中心は『命の一本桜プロジェクト』。縦3.2m・横8mの巨大な模造紙に、参加者した子ども達が全員で一本の桜の木を描く取り組みです。
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最初はとてもそんなことはできないと思っていた子ども達が、仲間と共に描き、完成した時の達成感。まさに『絵の力』です。

中嶋さんの活動に共感し支援してきた気仙沼市に住む看護師の林明さん(58)は、当初は絵を描こうという取り組みに戸惑ったといいます。

「この人達は、芸術を被災地に持って来て、何をしたいんだろうという疑問はありました。でも一度、同行させて頂いて、その学校に入ってやっている活動を見たら、子ども達がやる前とやった後では全然表情が違うんですよ。顔には笑顔が出てきて、びっくりしました。芸術の力って大きいんだなって。」(看護師 林明さん)

『絵の力』を次世代に伝える

夜、神戸市東灘区のアトリエで絵を描く中嶋さん。また1月17日が近づいてきました。
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中嶋さんは25年が経っても不意に悲しい気持ちがこみ上げるといいます。アトリエで独り、夜を明かすこともあります。静寂の中、ただ絵を描き続けます。
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「夜に自分がちょっと悩んだ時とか、しんどい時ほど作品を描いていますね。歳をとってきましたでしょう。焦っているんですよ。私はもう今、時間が惜しいんですよね、寝るのが。」(アトリエ太陽の子 中嶋洋子さん)

そして、中嶋さんは一人で立ち上げた『命の一本桜プロジェクト』の後継者を育てようとしています。その一環で神戸学院大学を訪れました。
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「今日は絵の力で、絵の力で、被災地の子どもを、色んな子どもを、救うぞ!励ますぞ!いきますよー、エイエイオー!」(アトリエ太陽の子 中嶋洋子さん)

大学で、防災や減災を学ぶ学生達に、実際に『命の一本桜』の制作を体験してもらいます。災害の被災地に想いを馳せること。『絵の力』を生み出す意味を学生達に伝えます。
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「今、生きてるって当たり前と思ってるでしょ。大きな間違いよ皆。あの時、急に来たのよ、阪神・淡路大震災の時。」(アトリエ太陽の子 中嶋洋子さん)

最後は、手のひら一杯に付けたピンクの絵の具で花を咲かせ、心を込めた一本桜の完成です。
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「子ども達の心を癒す、これが私達の使命だと思っています。ずっとあの子達を見守り続けたい。寄り添いたい。寄り添い続けたい。絵を通じて、私は、私の出来ることは、それだと思うんです。」(アトリエ太陽の子 中嶋洋子さん)

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