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「なぜ避難所で人が死ぬんだ」災害時に技術で力になりたい 『段ボールベッド』を考案した社長の思い

2020年01月08日(水)放送

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阪神・淡路大震災の発生からまもなく25年。自分たちの技術を活かして災害に立ち向かおうと立ち上がった企業の取り組みです。

阪神・淡路大震災で初めて語られた「災害関連死」

体育館の床で、着の身着のままで身を寄せ合う人々。1995年1月に起きた阪神・淡路大震災の時の避難所では、体調を崩し命を落とす人も出ました。この時に初めて「災害関連死」と呼ばれるようになりました。

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体育館などが避難所となる光景はその後の災害でも変わりません。しかし、被災した人々のプライバシーやストレスを軽減するための工夫は進められています。2011年3月に起きた東日本大震災の避難所では、“段ボール”などが間仕切りとして使われ始めました。
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そして2019年10月に到来した台風19号。長野県のいくつかの避難所でみられたのが『段ボールのベッド』です。国土の狭い日本で、災害時の避難所の環境はそう大きくは変わりませんでした。しかし、それでも人々の知恵と工夫は、少しずつ「進化」してきたのです。

簡単・大量に作れる段ボールに着目

この『段ボールのベッド』を考案したのは、大阪府八尾市で三代続く段ボールメーカー「Jパックス」の水谷嘉浩社長(49)です。段ボール箱を組み合わせ、マットと間仕切りも段ボールでできていて、約5分で完成です。

大人が寝ても、強度は全く問題ありません。水谷社長自身、普通のベットとして毎日自宅で使っています。特徴はその暖かさで、緊急時にも、非常に短い時間で大量に作れるというのが段ボールベッドの利点だと、水谷社長は言います。

「なぜ避難所で人が死ぬんだ」

開発のきっかけは、東日本大震災直後のニュースでした。

「避難所で低体温症で凍死されていたのを報道で知った。避難所は安全な場所じゃないのかと。なんで人が死ぬんだと疑問に思ったんです。」(水谷社長)

自分達にできることはないか。水谷社長はすぐに設計図を描き、試作品を作り、ツイッターで発信。
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トラックに積んで避難所を回り無償で配りました。ところが、受け入れ自治体の多くで「前例がない」と断られたといいます。そこで水谷社長は設計図を業界団体に公開し、段ボール業界全体に協力を呼びかけます。さらに、各地のダンボールメーカーが災害時にベッドを提供できるよう、約350の自治体と協定も結びました。
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水谷社長は現在、医師らと連携して『避難所・避難生活学会』を立ち上げ、ベッド・トイレ・食事など、避難所全体の環境改善に取り組んでいます。自分達で調査を行い、段ボールベッドと床の温度差は最大9℃、ほこりや振動も少なく、エコノミークラス症候群も防ぐ効果があるという結果が出たと言います。
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「そもそもは物を安全に運ぶために包むっていうのが段ボールの機能ですが、それを上手く利用することで、被災された方の健康被害を予防できることが今回分かったわけですよね。とにかく雑魚寝を無くして、少しでも力になれたらいいなという風に思っています。」(水谷社長)

使命感で撮りためた被害写真

続いて紹介するのは兵庫県明石市のゴムメーカー「シバタ工業」。この会社では一冊の写真集が受け継がれています。
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収められているのは阪神・淡路大震災直後の神戸の街の様子です。撮影したのは当時の若手社員達でした。
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技術部の浮島徹さん(48)もその一人です。浮島さんは、破壊された街で呆然としながらも、地元企業としての使命感があったといいます。

「なんでこんなことが起きたんだろうとかですね。凄いことになっているなというのは実感した記憶があります。この地震でどう壊れたんだろうというのが写真に収められれば、それを全国の専門家の皆さんにお渡しして、役に立ててもらおうと。」(浮島さん)

壊れない“生命線”への開発

中でも多いのが“橋の写真”です。救急車両や復興関係の車が通る生命線。その損壊を防ぐためにゴムメーカーに出来ることはないか。写真が新たな装置の開発へと繋がりました。それが橋の落下を防ぐ『落橋防止装置』です。
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『落橋防止装置』はチェーンとゴムでできています。
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ゴムの中には“たるませたチェーン”が埋め込まれていて、引っ張られてもチェーンの間のゴムが衝撃を吸収。チェーンだけの場合より、衝撃の力を4割程度に抑えられます。
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この緩衝チェーンで橋桁と橋脚を繋ぐことで、阪神淡路大震災クラスの大きな力がかかった場合でも、緩衝チェーンが橋桁を引っ張り、落下を防ぐことができるという仕組みです。
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今では全国約1万の橋に設置されています。また、この緩衝チェーンをフェンスのように使うことで、水害時に流木などを堰き止める防災装置としても応用。地震以外の災害にも備えるなど、命を守る開発を進めています。
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「皆さんに被害が及ばないようにできるような商品が何かゴム製品でできないかなと毎日考えていますし、それに向けた開発ができればいいと思っています。」(浮島さん)

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