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【特集】金魚だけじゃない!"靴の町"が再起をかけてライバル同士一致団結...新ブランドに挑戦

2019年12月18日(水)放送

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奈良県大和郡山市は、実は紳士靴、いわゆるビジネスシューズの日本有数の生産地です。ところが、安い海外製品に押されている上、オフィスのカジュアル化が進んだこともあって、生産量は年々減少しています。衰退の危機を感じたある靴工場が新たな挑戦を始めました。

奈良の靴業界に危機を感じて新ブランド立ち上げ

奈良県橿原市にある県指定史跡「益田岩船」で、秋冬のファッションに身を包んだ男性が、ちょっとはにかみながら撮影に臨んでいます。何の撮影かというと、主役は『靴』。モデルの男性は靴を手掛けた若手靴職人です。

「モデルになった気分ですね。」(靴職人)
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これは、奈良の靴製造会社7社が生き残りをかけて取り組んでいる新ブランドのプロジェクトです。ブランド名は、古都(コト)、奈良の靴(カ)、をもじって「KOTOKA(コトカ)」。
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若手職人をモデルにしたのも作り手の顔を見せるため。販売ルートもインターネットがメインで、SNSに職人のメッセージを載せるなどして消費者との距離を縮める戦略です。
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発起人の松本英智さん(33)は、幼い頃から見てきた奈良の靴業界に危機を感じ、このプロジェクトを立ち上げました。

「60~70年間、日の目を見なかった奈良の靴産業に日を当てようということやから。」(オリエンタルシューズ 松本英智さん)

最盛期には60以上の業者…日本初の“靴工場団地”も

奈良県大和郡山市は全国有数の金魚の生産地として知られていますが、もう1つ全国有数の生産を誇るのが「紳士靴」、いわゆるビジネスシューズです。元々革産業が盛んだったのですが、靴の需要と共に靴産業へ移行していき、最盛期には60以上もの業者がありました。1984年には日本初の『靴の工場団地』が作られ、大阪府警の制靴などを手掛けた実績があります。
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創業72年の靴製造会社「オリエンタルシューズ」。その創業者の孫が松本英智さんです。

「創業者がこの靴工場を造った理由っていうのが、ビルマの戦争に行った時に、靴が無いことによって戦友を亡くしてしまったと。靴を普及して、人々の足を守る靴で社会に貢献しよう、という志から始まった。」(オリエンタルシューズ 松本英智さん)
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「足をしっかり守る靴」を作る。そのために1つ1つ熟練の職人が手作りし、クオリティーの高さを売りにしています。最盛期には国産紳士靴を1日に2000足余り作っていたそうですが、20年ほど前から安い海外の靴に押されて、今では約20分の1に減少。大和郡山市内でも多くの靴工場が廃業に追い込まれました。
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最盛期に撮影された『奈良県靴工場団地』の写真には、靴工場が立ち並んでいますが、今はその多くが姿を消したそうです。

「会社の数は半分くらいになっています。結構寂しいですね。」(オリエンタルシューズ 松本英智さん)

『奈良で作る靴』シンプルで素朴なカジュアル靴 3種の革がルール

そこで、2019年4月、危機感を持った7つの工場が立ち上がりました。ライバル同士が手を組み、共通のブランドを作ることになったのです。まず話し合ったのは「奈良で作る靴」のコンセプトです。
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「奈良ってどういう土地なの?とか、県民性なの?とか、そういうことを考えていきました。素朴とか、あまり主張しないとか、落ち着いているとか、様々な意見を出した。そうした時に、ビジネスではなくて、シンプルなデザインの比較的素朴でカジュアルな靴がいいんじゃないかと。」(オリエンタルシューズ 松本英智さん)

各社、創業時から主にビジネスシューズを作ってきたため、カジュアル路線は初めての試みです。

「全然今までやったことのない部類の靴なので、どういう反応が来るのかっていうのはちょっとね…ちょっと心配な面もあるし。やっていないことやから希望もあるしね。」(靴製造会社「セランド」社長)
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各社それぞれがデザインをしますが、統一感を出すため、いくつかルールを設けました。一番重要なのが、コードバン(姫路の馬革)、栃木レザー(オイル加工)、ヴィンテージ(兵庫・たつの産)の3種類の革を使うことです。全国から柔らかく丈夫なものを選りすぐりました。ビジネスシューズにはあまり使われないこれらの革は、使い込むと味わいが出るのが特徴ですが、扱いづらい点もあります。

「しわのムラが多いですし、シミとか、傷とかも。」(オリエンタルシューズ 松本英智さん)

個性的な革だけに、しわやシミなどがどうしても目立ってしまいます。

「まず、ぱっと広げた段階で、『靴でこれを使うの?』っていうイメージがありましたよね。ビジネスシューズとかを我々はずっと50年以上作り続けてきているので、そこから離れて全く表情の違うものを使っていくというところに対しては、ちょっと衝撃でしたね。」(靴製造会社「北嶋製靴工業所」社長)
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これまで作ってきたビジネスシューズでは、しわやシミなどが一切無いことが良いとされています。しかし、新たなブランドでは、1足1足の個性を売りにするため、しわなどをどう生かすのか見極めなければなりません。効率的に革を切り取らないと売り上げにも響きます。

(トローベルシューズ社員)「どこまで許容するかとか、各社で感覚で決めていく感じ?」
(オリエンタルシューズ 松本さん)「そうですね、たぶん最初は結構…」
(トローベルシューズ社員)「エイヤーでやってみて?」
(オリエンタルシューズ 松本さん)「そうそうそう。ある程度量を生産する時になったらやっと感覚がついてくるかも分からないですけどね。」

多くのハードルを抱えながら試行錯誤し、オンリーワンの靴を目指します。

「MADE IN NARA」25種類の靴が誕生

そして12月、各社の靴が出そろいました。

【社員らが試着する様子】
「かっこええなー。」
「軽いですね、めっちゃ。」
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表情豊かな牛の革からは、しわを全面に生かして、柔らかい風合いの靴が生まれました。
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グラデーションが美しい馬の革からは、左右で色を合わせ、スタイリッシュな靴が生まれました。
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一足一足、個性があり、履けば履くほど味の出る靴に仕上がりました。
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そして全ての靴には、新ブランド名「KOTOKA」の下に「MADE IN NARA」の文字を刻みました。

「これどうやって料理したらいいのかなという感じが非常に強かったんですけど、靴にしてみて凄くいい感じに上がっていますし、やれば出来るじゃんっていう感じ。」(トローベルシューズ社長)

ライバル同士が手を結び、奈良ブランドの復興を目指します。
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そして12月16日には「KOTOKA」のネット販売サイトがオープンしました。発売は2020年の予定ですが、色違いを含めると全部で25種類。2万円前後~7万円と強気の価格設定です。知られざる奈良の靴技術を全国に知ってもらいたい…。プロジェクトリーダーの松本さんは、いい靴が出そろったと胸を張ります。
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「いけるんじゃないかなっていう手ごたえはありますね。面白い靴が出来ている感触があります。遠い先の話になるかもしれないですけど、観光バスがついでに寄るような、そんな観光にも結びついたらいいなと思います。」(オリエンタルシューズ 松本英智さん)

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