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【特集】海を汚染する『マイクロプラスチック』 ストローやポリ袋だけじゃない "人工芝"や"肥料"も発生源に

2019年12月05日(木)放送

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「世界の海を汚染している」と問題になっている小さな小さなゴミ『マイクロプラスチック』。これまではポリ袋やストロー、ペットボトルのポイ捨てなどが主な原因とみられてきたが、ある調査に密着すると、これだけではないことが見えてきた。

琵琶湖を漂う「マイクロプラスチック」

調査は2019年10月、滋賀県大津市の琵琶湖で始まった。

「ぱっと見はとてもきれいに見えるんですけど、意外と浮いていたりするのがプラスチックなので。」(環境ベンチャー「ピリカ」 小嶌不二夫さん)

調査を行うのは環境問題に取り組むベンチャー会社「ピリカ」。「アルバトロス6号」と名付けられた手作りの装置が琵琶湖の中へと沈む。

モーターが大量の水を勢いよく吸い込み、装置内のネットに水中の浮遊物が取り込まれていく。

(小嶌さん)「引き上げてください。」
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ネットから見つかったのは…

「いっぱい水草が付いてますね。でもありますね。水色のやつ。小さいかもしれませんが、明らかに“人工的な色”というか、自然界にこういう水色のものは存在しないので、これはマイクロプラスチックの1つだと思います。」(小嶌不二夫さん)

琵琶湖を漂っていた直径5mm以下の微細なゴミ「マイクロプラスチック」だ。

国際的にも警鐘 人体への影響はまだ不明

マイクロプラスチックの海への流入は近年、国際的にも警鐘が鳴らされている。

「G20が結束して新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す。」(安倍晋三首相 2019年6月)

海洋ゴミの問題は2019年6月のG20大阪サミットでも主要テーマの1つになった。今や地球温暖化と並んで、地球規模で対策が検討されている。ペットボトルやレジ袋などのプラスチックゴミがひとたび海や川へ流出すると、紫外線や水の流れによって粉々になる。これに有害な化学物質が付着するため、餌と間違えて食べた魚や鳥などへの悪影響が懸念されている。またマイクロプラスチックは人体に取り込まれても排出されるが、化学物質の影響については分かっていない。

“人工芝の破片”発生した瞬間からマイクロプラスチックに

マイクロプラスチック発生の原因となるプラスチックゴミは、そもそもどこから出てきているのか。小嶌さんらは、琵琶湖の最南端・淀川などにもつながる場所で大量の“緑色の物体”を見つけた。
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「これたぶん“人工芝の破片”だと思うんですよね。ここすごくありますね。サッカーとかフットサルの人工芝だとダッシュしたりブレーキしたりすると、どんどん割れたりはげたりすると思う。発生した瞬間からマイクロプラスチックになっている。流れ出る前に止めてしまわないと解決できない問題だと思っています。」(小嶌不二夫さん)
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人工芝の破片は兵庫県内の川でも大量に見つかっている。調査チームが川のそばにあるグラウンド横の側溝の中を覗いてみると…雨で流されたのだろうか、人工芝がびっしりと溝に張り付いている。大阪の神崎川や大川などで2018年に行われた調査では、採取されたマイクロプラスチックのうち約4分の1が“人工芝の破片”の可能性が高いという結果も出ている。

琵琶湖の周辺を車で走ってみると、確かに人工芝が使われている施設が多い。川に隣接しているグラウンドへ行ってみると…

「水路っぽいものがある。基本はあそこに流れるのか。」(小嶌不二夫さん)

側溝のふたの上に人工芝の塊があった。
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「ここ(水路のふたの間)にも(人工芝が)いっぱい流れた跡がありますね。大雨が降るたびにここ(水路)を通じて流れ込むので、水路の脇とかにへばりついている。」(小嶌不二夫さん)

グラウンドから延びている水路をたどって行くと、ある川に突き当たった。ここから琵琶湖に流れ込んでいるのだろうか?再び、「アルバトロス6号」を川へ沈めた。果たして結果は…
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「『さっきのグラウンドから出てきました』という人工芝はないですね。別の水路に流れこんでいるのかな。これも“芝っぽい何か”ですけど、さっきのグラウンドのものとは違うと思う。」(小嶌不二夫さん)

“田んぼに撒かれる肥料”も…発生源に

琵琶湖の調査でわかったマイクロプラスチックの発生源は人工芝だけではない。琵琶湖のほとりで小嶌さんが小さな粒を取材班に見せた。
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「これわかります?石みたいに見えるんですけど、つぶすと割れたり、つぶれたりする。」(小嶌不二夫さん)

砂浜から次々と出てくる微細な卵のような殻。これは一体何なのだろうか?

この殻の正体は、米を作る時などに田んぼに撒かれる肥料。通称「一発型肥料」と呼ばれているものだ。肥料をプラスチックの膜で覆うことにより、中の成分が少しずつ田んぼに溶け出すため農家が重宝しているという。

しかし、肥料が溶け出た後はプラスチックの殻だけが自然分解されずに残ってしまうため、マイクロプラスチックの発生源となっているという。

「今は農家の方とか肥料を作るメーカーにとってはあまり気にしなくていい問題というか、誰も知らない問題だから、お米を買う時に皆さんが気にしない限りは、そのまま肥料を使い続けると思うんですよ。そこも変わっていけばいいなと思っている。」(小嶌不二夫さん)

自治体も対応策の検討進める

滋賀県はこれまで、「農家の省力化」などを理由にこの肥料を推進して補助金を出すなどしてきた。しかし、農林水産省も2019年6月、この肥料の殻の流出防止策を打ち出し、農家に指導するよう各都道府県に通知しているため、滋賀県は現在、新たな対応策の検討を進めている。

「予想以上に県内の各地で被覆殻(プラスチック殻)が見られるなと。いずれは分解するものだと理解していたし、今、農家が営農を続けていくには欠くべからざるものになっています。これを使いながら環境に流れていかないような取り組みができないか検討しています。」(滋賀県・農業経営課 小久保信義課長補佐)

マイクロプラスチックの対策は…

琵琶湖で採取された“破片”は、肥料の殻や人工芝とみられるものなど107個にのぼった。これらは東京工業大学に運ばれた後、特殊な装置による成分分析にかけられた。
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その結果、今回琵琶湖で見つかったマイクロプラスチックのうち約1割が、やはり「人工芝」の可能性が高いことが分かった。

「人工芝の場合はフィルターを水路に付けるとか、人工芝のグラウンドの横に漏れないようにちょっとした壁を作るとか、具体的な解決策ができると思う。でもその具体的な解決策ができるのは、“人工芝という問題を絞り込めた”から。難しくてまだ見えていない問題がたくさんあるので、ぜひ解き明かしていきたいなと思います。」(小嶌不二夫さん)

マイクロプラスティックの発生源は徐々に解き明かされているが、人工芝に対しては実行されている解決策はまだない。小嶌さんは「自治体に事実を伝えても動こうとせず、調査に協力しない」「農業事業者やメーカーに訴えても動かない」と話し、汚れ続ける海や川に対策が進まないわけとしてあげた。小嶌さんは今後、地方議員などに問題を訴えて、動き出すきっかけを作りたいと話したが、一人一人が問題意識を持つことも求められる。

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