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【特集】乳がん患者にも"おしゃれ"な下着を...自身の経験をもとに起業し開発 笑顔に向けて挑戦する女性社長

2019年11月29日(金)放送

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京都のある会社が、“がん患者のための下着”を販売しています。それは、乳がんによって乳房を摘出した女性たちが「今までと変わらず、おしゃれな下着をつけたい」という願いを叶えたものでした。多くの乳がん患者を笑顔にする下着企画会社の女性社長を取材しました。

レースや花柄 普通の下着のように見えるが…

レースや花柄、きれいな下着を見つめる中村真由美さん(58)、京都市の下着企画販売会社「アボワールインターナショナル」の社長です。中村さんの会社の商品は一見、普通の下着のように見えるのですが…

「乳がんの人たちって術後に手があがらない人たちが多くて、前から開けたり閉めたりする方が通院するのも生活するのも便利だということで、前開きのブラジャーなんです。ベージュとか茶色とかしかなかったので、そこに一石を投じる形で作った。」(アボワールインターナショナル 中村真由美さん)

商品は全て、乳がん患者向けに作られたものです。

両胸に乳がん…術後に下着を買いに行って愕然

8年前、中村さんは金融関係の会社員として働き、2人の娘を育てていました。下の子がまだ高校生だったとき、両胸に乳がんが見つかったと言います。

「すっごくショックでした。がんにまさか自分がなるはずがないと誰もが思っているし、私は仕事をしながら2人の子どもを育てていたので、私がいなくなったらどうなるんだろうとか…」(アボワールインターナショナル 中村真由美さん)
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両方の乳房の摘出手術は成功。しかし、術後は皮膚が弱くなって内出血が起きるおそれなどがあり、通常の下着をつけられない人が多く、中村さんもその1人でした。そのとき、乳がん患者用の下着を買いに行って愕然としたといいます。

「両胸がぺこんとへこんでいるのを隠すように面積の広いブラジャーだったんです。並んでいるものがほとんどベージュで、この下着で頑張ろうという気持ちにならないなと思って。じゃあ自分でできるんじゃないのと思ったのが(起業の)きっかけです。」(アボワールインターナショナル 中村真由美さん)
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「おしゃれを諦めない」その想いで当時勤めていた会社を辞めて立ち上げたのが「アボワール」でした。機能だけじゃなくデザインにもこだわった「乳がんブラ」は、患者や医師、看護師らの間で評判が広まり、今では京大病院など全国5つの病院でも販売され、年間約8000着が売られています。

「世界がぱーっと広がった感じ」

ある日、中村さんは杏林大学医学部付属病院(東京・三鷹市)を訪れました。この病院では、2年ほど前から院内の売店でアボワールの商品を取り扱っていて、中村さんは月に一度の試着相談会に出席。試着会が始まってすぐ、乳がんの患者らがやってきました。

【試着会で対応する中村さん】
「これつけてもらっていいですか?ひもが食い込みもしないし落ちても来ないので、これ全然Tシャツのままで乳がんってわからないよ。」
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乳房を摘出した人の多くは左右の大きさに差ができてしまいます。摘出した胸側の肌と下着の間にハンカチなどを入れて調整する人もいますが、アボワールの商品では調整用のパッドが入れられる大きなポケットがついています。おしゃれさと機能面を兼ね備えた下着、評判も上々です。

「カップがあたると痛いのでタオルを入れていたんですが、タオルが動くだけで移動しちゃって。(アボワールは)レースとかいっぱいあったので、見てていいなと思いました。」(利用者)
「世界がぱーっと広がった感じですよね。(これまで)ベージュのブラしかなかったのが、お花柄があったりと。『私たち普通に生活していいんだ!』みたいな。すごく嬉しかったです。」(利用者)

国内の乳がん患者は約9万人で、女性で最も多いがんです。辛い闘病生活の中、おしゃれな下着が患者に与える影響は大きいと医師は言います。

「今は20代、30代、特に30代の人(の乳がん)が結構増えていて、そういった若い方々の下着ということで、すごくためになるというか、社会貢献できていると思う。」(水田乳腺クリニック 水田成彦院長)

“悲願のブラジャー”発売へ

5年前、中村さんが下着を作りたいと思って駆け込んだのは、地元・京都の下着メーカー「エレーヌ」です。

「『おしゃれな乳がんブラがないんです』と。『絶対におしゃれなブラジャーがあったらみんな喜ぶ』と言われたので、それやったらどうなるかわからないけど一回やってみましょうということで。」(エレーヌ 藤井幹也専務)

そして、中村さんが今、特に力を入れていることが新商品の開発です。それは、乳房をシリコンなどで再建した人専用のブラジャーで、医療関係者や乳がん患者らの声を聞きながら何度も試作品を作り、ようやく最終段階に入りました。協力するエレーヌの藤井さんも苦労を語ります。

「(ここまで)めっちゃ長かったですね。」(エレーヌ 藤井幹也専務)
「すごく長かったです。再建のブラジャーは本当に何十作作ったかわかりませんよね。」(アボワールインターナショナル 中村真由美さん)
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創業当初から構想を練っていたという悲願のブラジャー。デザインや肌触りなど細部にこだわり、生まれた新商品が「エメリタ」(2020年1月に発売予定)です。乳房を再建した人は左右の大きさに差があったり高さを揃えたりすることが難しい場合があります。この商品の特徴は通常の下着ではできないワイヤーの出し入れができ、伸縮性の高い生地を採用して自分の胸に合うようにカスタマイズができるのです。さらに…

「脇の部分に当たると痛いので、普通のワイヤーの5分の4の長さなんです。」(アボワールインターナショナル 中村真由美さん)

「誰も変えてくれなかった」ことに挑戦

11月下旬、試着のために3人の女性がアボワールを訪れました。このうちの1人の女性は乳がんで右胸を全摘出しましたが、去年、シリコンを入れて再建しました。新商品「エメリタ」の着け心地を試してもらうと…

「早くほしーい!!。もちろんこっち(再建側)もすごく気になるけど、作ってない元々のほうがノンワイヤーだとたれるんじゃないかと不安があって。これだとホールドしてくれるし、両方楽なので、すごく助かります。」(試着した女性)

「今までは女性の意見が反映されていなかった。柄でさえ、なぜ誰も変えてくれなかったんだろうと思ったので。」(アボワールインターナショナル 中村真由美さん)

おしゃれな下着は多くの患者を笑顔にする。誰も変えてくれなかったことに、中村さんはこれからも挑戦し続けます。

「(乳がんに)なってしまったことは決して嬉しいことでもなんでもないですけど、乳がんになったことでいろんな人達と巡り会えて喜んでいただける仕事に就けて、今は天職だと思っています。なんならこの仕事に就くために、もしかしたら乳がんになったんじゃないかなと思っています。」(アボワールインターナショナル 中村真由美さん)

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