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「ただ単に知ってほしい。ひと事じゃない」"孤独死の現場"をミニチュアで再現する遺品整理人

2019年11月28日(木)放送

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孤独死の現場をミニチュアで再現する女性がいる。女性の本職は「遺品整理人」。なぜ、ミニチュア作品を作り続けるのか、伝えたい思いなどを取材した。

遺品整理人が作る“現場のミニチュア”

ごみで埋め尽くされた部屋、40代の女性がひっそりと亡くなっていた現場から発想を得た。人が生きていた証しがそのまま残されている。
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きちんと整えられた部屋。机に置かれているのは「遺書」。部屋の壁には、テープで書かれた「ゴメン」という文字。奥行32cmの箱の中に作られたミニチュアの部屋。さまざまな事情で家族と連絡を取っていない人や、自ら命を絶った人など、たった一人で旅立った人たちが残したものを再現している。
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ミニチュアの制作者は小島美羽さん(27)。小島さんの本職は『遺品整理人』。遺族などに代わって、亡くなった人の部屋を片付ける仕事だ。

「実際の現場の特徴をいくつかピックアップして、遺品整理だったら遺品整理の方のよくあるものとかを一つにしたものがこのミニチュアたちになっています。」(遺品整理クリーンサービス 小島美羽さん)

現場で思うこと「故人にも遺族の方にも安心して、これから進んでほしい」

取材の日、小島さんが向かったのは、東京都内にある高齢男性が暮らしていた部屋。先日、高齢男性は病院で亡くなった。かつては家族と暮らし、亡くなったときは一人暮らしだったという。たくさんの布団、五月人形。子どもが巣立っても昔のものを大事に取ってある人が多い。

「部屋を片付けていると、その人の大切だったものとか、使っていたものとか、どういう生活をしていたとか、色々見えてくるんですけど。そういうのを感じながら、どういう人だったのか想像しながらやったりとかはする。“弔う”じゃないですけど、最後にその人に関わっているのが私たちなので、その人の“生き様”を思いながら、感じながら作業はしていますね。」(小島美羽さん)

次に向かったのは孤独死の現場。住人の男性は人知れず亡くなり、しばらく誰にも気づかれなかった。こうした現場では、はじめに部屋を消毒する。

「作業するのに消毒しておかないと、感染症とか。まだ死因が分かっていないんですよ。どういう理由で亡くなったか、病気の場合は、ちょっと怖いところはありますよね。」(小島美羽さん)

手袋に長靴、防毒マスク。過酷な現場だが、小島さんは、淡々と作業する。

「早くなんとかしてあげたい、故人様にも遺族の方にも安心して、これから進んでほしい、天国にいってほしい、という気持ちで。」(小島美羽さん)

遺品整理人になったきっかけは「父親の死」

22歳で遺品整理人になった小島さん。きっかけは父親の死だった。家族と離れ一人で暮らしていた父親が脳卒中で倒れていたのを偶然、小島さんの母親が見つけ、最後は病院で亡くなった。父と娘の最後の思い出は「けんか」だった。

「逃げないで接してあげていればよかったなとか、色んな後悔というものがあって。肉親を亡くしている人だからこそ、辛さや後悔することもありますし、(遺族は)前に進めなかったりする人も多い。そういう人の助けになればいいなと(遺品整理人を)はじめたいと思った。」(小島美羽さん)

お弁当箱も靴も雑誌もごみ袋の中身まで…徹底的な「再現」

後悔が原動力になっているという小島さん。そんな彼女が、自分が見たものをミニチュアで再現しようと思い立ったのは3年前のことだった。ミニチュアの部屋に置かれているものはほとんどが手作り。小さな箱もピンセットを使って組み立てた。
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爪ほどの大きさの靴は、粘土を切り出して靴底から作った。溝まで再現するほどの徹底ぶりだ。
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荒れた部屋に残されたペットたち。
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高級マンションの一室で起きた孤独死。
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これまでに9部屋、制作している。1つの作品ができあがるまで3か月以上、材料費に10万円以上かけたこともある。

「お弁当箱はプラスチックでちゃんと作っているんですけど、パテで形をつくって、上に温めたプラ板を押し当てるんですけれど、それがなかなかうまくいかなくて、何回も何回も失敗して。」(小島美羽さん)

雑誌や菓子袋は、縮小コピー。部屋に無造作に置かれたごみ袋の中身も細かく再現している。

「ただ単純に知ってほしい。孤独死とかごみ屋敷とか自殺とか起こっていることを」

中でも思い入れがあるのが、この作品。

「50、60代の男性の孤独死。私自身の父の生き様と重なるところがあって。お酒ですね、すごく朝昼晩、全部飲んでいて、記憶に残っているというか、印象深いというか。そういう自分の思い出も入れつつ作っているので。」(小島美羽さん)

小島さんが再現するのは確かに“孤独死”の現場だが、それは“身寄りのない人の死”という意味だけではない。家族が近くにいても、たった一人でその時を迎える人はいるのだ。
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「ただ単純に知ってほしい。孤独死とかごみ屋敷とか自殺とか起こっていることを。みんなに知ってもらって『これはひと事じゃない』と思ってもらえるか、と考えていたときに出合ったのがミニチュア。」(小島美羽さん)

仕事の合間に作った作品を2017年に、葬儀業界のイベント「エンディング産業展」で展示したところ、SNSで話題となり、2019年8月には『時が止まった部屋(原書房刊)』という本にもなった。

東京・台東区にある「Readin’ Writin’ BOOK STORE」で開かれたイベント。展示されたミニチュア作品を見た人たちは、その精巧な作りに驚き、自然と自分の暮らしを重ねる。

「自分の部屋をもっと整理しておこうと思いました、片付けてくれる人が大変だなと。生きているうちは必要でも、亡くなると必要ないものがほとんどなので。」(ミニチュアを見た人)
「普通だと怖がりで血だとかそういうものは見られないけど、素直に細かいところまで必死で見てしまうというか。ここに人がいて、本を読んで住んでいた、すごく素直に心の中に入った。」(ミニチュアを見た人)
「(自分の部屋との)共通点に気付くだけに、『どうしてここまでになったのかな』とも思います。(作品は)“自分ごと”にできるいい教科書、教材みたいな。」(ミニチュアを見た人)

小島さんは今「二世帯住宅」で起きた孤独死の現場を制作している。すぐ隣にいる家族の死に一週間気づかなかったという。

「近すぎるから大切なものなのにないがしろにするので、そういうものを改めて『大切にしなきゃな』と思ってもらえるようにできたらいいな。」(小島美羽さん)

(11月28日放送 MBSテレビ「ミント!」内『辻憲のBuzzリポ』より)

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