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海底火山「鬼界カルデラ」噴火とともに何が...過去には"大津波"を引き起こした可能性!?

2019年11月21日(木)放送

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MBSは神戸大学の調査に同行して鹿児島県の薩摩半島沖にある海底火山「鬼界(きかい)カルデラ」の取材を3年にわたって進めてきた。これまでの調査研究で、想像を超える現象が噴火と共に起こっていたことが少しずつ分かってきた。いったい噴火でどのようなことが起こったのか、その実態に迫る。

約7300年前に起きたとされる超巨大噴火

今年10月14日、神戸大学の海洋調査船「深江丸」が7回目となる航海に出た。目的地は鹿児島県の薩摩半島沖約50kmの海底に眠る「鬼界カルデラ」だ。
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海底に直径約20kmにも及ぶ火口を持つこの巨大なカルデラは、周辺に竹島と現在も活発に噴火を続ける活火山の硫黄島の2つの島に囲まれている。約7300年前に起きた超巨大噴火では火砕流が海上に流れ出し、薩摩半島にまで到達。当時、南九州一帯に住んでいた縄文人を文化もろともに壊滅させたといわれている。

(Q今、噴火した場合は?)
「最悪の事態としては、1億人が命を落とすということが考えられる。」(神戸大学海洋底探査センター・巽好幸教授 2016年12月取材)
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神戸大学では、まだあまりわかっていないカルデラ噴火の実態を解明するため、3年前の秋に調査を開始した。調査では「ROV」と呼ばれる水中ロボットで水深200mまでの海底を撮影したほか、音波で海底の地形を調べる最新の機器が投入された。
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その結果、海底から熱水が噴出している様子を撮影することなどに成功。また、海底のカルデラ内に桜島2個分以上の大きさにもなる巨大溶岩ドームを発見した。

「(溶岩ドームは)7300年前以降にできたことは地形からみてほぼ明らか。それなりに活動的であり、非常に大きな火山である。」(神戸大学海洋底探査センター・巽好幸教授 2017年4月取材)

火砕流が流れたのは“海面”か“海中”か…

最新の調査では、さらに驚くべき事実が明らかになってきた。

「どうも今回、(火砕流が)海底にたまっていたと。(火砕流が)海底を流れたんじゃないかと思わざるをえない結果が出た。」(神戸大学海洋底探査センター 島伸和教授)
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火山の噴火で発生する火砕流は、噴出した高温の火山灰や岩石、ガスなどが一つになって速い速度で流れ出る現象だ。1991年の雲仙普賢岳の噴火では、火砕流で44人が犠牲となった。これまで火砕流は海に流れ出た場合、海中に入ることはなく海面に沿って移動するものと考えられてきた。ところが、神戸大学の調査で、海中を流れた可能性が出てきたのだ。
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そして神戸大学の研究グループは火砕流が海の中を流れたとみられる証拠をつかんだ。

「水の中でたまっている火砕流と思える層の総量が膨大で、その分布そのものを見ると海底地形と相関する部分が見られたので、(火砕流が)下を流れた方が合理的だと考えた方がいい。(Q明らかにフォールアウト(降下物)とは違う?)フォールアウトではなく(海底を)流れたんじゃないかと推定。」(神戸大学海洋底探査センター 島伸和教授)

火山灰の下に“津波の痕”…約1000km離れた地点でも発見

さらに、鬼界カルデラの噴火の研究が進む中で、7000年以上前の噴火が引き起こした“ある被害”が今注目を集めている。
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「この地層の写真を見てください。礫(れき)が入っている、木の破片が入っている、大木が入っている…もうこれは津波を考えるしかない。」(高知大学 岡村眞名誉教授)
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高知大学で地震地質学が専門の岡村眞名誉教授は、日本各地の海岸近くにある池の底から数千年前の地層を抜き取り津波の調査を行ってきた。この調査の中で、ある不思議な事実に気付いたという。
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「(地層に)白っぽいところがあるのですが、これが鬼界カルデラから飛んできた火山灰で、『アカホヤ』と呼ばれる。その下にどの津波の痕跡よりも荒くて厚いものがある。」(高知大学 岡村眞名誉教授)
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岡村名誉教授は、調査した西日本の池の多くで鬼界カルデラから出た火山灰を確認したが、なぜかその層のすぐ下にいつも巨大な津波の跡があるのを見つけたのだ。鬼界カルデラから出た火山灰は『アカホヤ』と呼ばれていて、九州から東北地方まで広く分布する。岡村名誉教授は鬼界カルデラの噴火後、アカホヤが降り積もる前に、噴火によって引き起こされた巨大な津波が各地を襲った可能性があるとみている。

「大事なことは、上空からそういうものが降ってくる、それだけが火山のイメージだった。実は、火山灰はある、けれどもその前に巨大津波の乱雑な堆積物をもっている。」(高知大学 岡村眞名誉教授)
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そして驚くべきことに、その津波の痕跡は鬼界カルデラから約1000kmも離れた三重県の南伊勢町周辺でも見つかったのだ。伊勢志摩のリアス式海岸に点在する池の一つである「座佐池」、ここでもアカホヤのすぐ下から巨大津波の痕跡が出てきた。

「10mのパイプで取れる限界くらいのところなんですけど、まさに南九州から飛んできた火山灰。真っ白い火山灰の下に巨大な津波のものと思われるものが見つかった。まさかこんなものが目の前に現れるとは想像つきませんでした。」(高知大学 岡村眞名誉教授)

噴火で関西や徳島にも津波か

こうしたアカホヤと巨大津波の痕跡が一緒に見つかった例は三重県だけではない。信州大学で堆積学が専門の山田昌樹助教らの研究グループも西日本の各地から同様の痕跡を見つけている。

「別府湾の海底活断層の津波の堆積物の研究をしている時に、深度6mくらいのところにアカホヤの火山灰の厚いのが出てきて、その直下に粗粒なイベント層、明らかに普通にたまったものではないイベントの砂層が5cmくらい見つかった。共同研究だが、和歌山県とか徳島県でも同様に鬼界アカホヤの火山灰があって、その直下に砂層が見つかった。」(信州大学 山田昌樹助教)

山田助教らの研究グループは調査で得られたデータを基にシミュレーションを行い、津波が及んだ範囲を割り出した。

「岡村さんの三重県も含め、西日本の広い範囲で、もちろん日本海側は別だが、太平洋側の広い範囲に津波はいっているだろうと。」(信州大学 山田昌樹助教)
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そのシミュレーションの結果、まず鬼界カルデラに近い薩摩半島沿岸には30m級の巨大津波が襲い、続いて九州東岸部の大分県には4.3mの津波が襲来。近畿周辺には徳島県に7.3m、和歌山県にも4mの津波が到達していた可能性があることが分かったという。

「鬼界カルデラから津波が伝搬して、2時間半くらいで徳島県や和歌山県、そして別府湾に。さらに1mにも満たないような津波が淡路島の脇から大阪湾とか瀬戸内海の方にも少し入っている。」(信州大学 山田昌樹助教)
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神戸大学海洋底探査センターの巽好幸教授は、巨大カルデラ噴火について、今後100年間の発生確率は1%とし、最悪の場合は約1億人の犠牲者が出ると説明している。火山噴火は遠い場所での出来事かもしれない。しかし、巨大な噴火が引き起こす“津波の可能性”について、私たちは意識を改める必要がありそうだ。

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