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日本人がカンボジアに作った"理想の大学" 山奥にエリートが集まる理由とは

2019年11月21日(木)放送

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東南アジアの中で、急成長を遂げる国「カンボジア」に日本人が大学を作りました。山奥の広大な敷地にありますが今、未来を担うエリートたちがこの大学に集まっているといいます。どうして日本人がわざわざこの場所に大学を作ったのか、そしてどうして優秀な人材が集まるのか、現地を取材しました。

急激な経済発展を遂げている「カンボジア」

東南アジアにある「カンボジア王国」。人口は1630万人、面積は18.1万平方キロメートルで日本の2分の1弱ほどの大きさです。ミャンマーやラオスとともに「アジアのラストフロンティア」とも呼ばれ、今急激な経済発展を遂げています。首都プノンペンの中心部には、それを象徴するように高層ビルが何本も立ち並んでいます。

カンボジアは長年、「教育のレベルが低い」と言われてきました。その理由は1975年~1979年にかけて続いたポル・ポト政権による“知識層の大量虐殺”です。究極の共産主義を目指したポル・ポト政権はこの時、大学先生や研究者、教員、医者などの知識人を殺害し、当時の人口の3分の1にあたる200万が亡くなったとも言われています。その後、内政は安定していきますが、教育をできる人がおらず、「教育のレベルが低い」と言われる要因になっています。
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そんなカンボジアにやってきたMBSの辻憲太郎解説委員。日本人が創設した大学に向かいます。その大学は首都プノンペンから西に100km、車で約3時間のところにある「キリロム」という場所にあります。
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【車の中の辻解説委員】
「大学へ向かう街の道路です…まだまだ整備中という感じがしますが、大きなクレーンもあります。新しいものと古いものが入り交ざっている感じですね。」

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しばらく走ると、山道に入りました。

【車の中の辻解説委員】
「山の中へ入っていきます。登っていますね、山を。すごい所にありそうですね、大学。」
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デコボコした山道を抜けると…

「大学が見えてきました、『キリロム工科大学』。リゾート地の中に寮やキャンパスが点在しているような…」(辻解説委員)

「カンボジアの軽井沢」とも称され避暑地として知られている『キリロム国立公園』。約9000ha、甲子園球場2300個分にあたる壮大な敷地の中に『キリロム工科大学』は5年前に造られました。

『IT技術を英語で、全寮制で学べる大学』をカンボジアで作った日本人

キリロム工科大学の猪塚武理事長を取材しました。

「我々がアメリカ企業に勝てないのは教育問題が大きな要素だと思っています。大学のあるべきイメージがあるのですが、それは日本では実現できない。僕がイメージしていた、日本に作るべき大学を(カンボジアなら)作れると思ったんです。」(キリロム工科大学 猪塚武理事長)

猪塚理事長が思い描いた“理想の大学像”。それは『IT技術を英語で、しかも全寮制で学べる』というもの。カンボジアの中でも瞬く間に人気大学となり現在、約300人の学生が学んでいます。

プログラム言語の授業はすべて英語 IT講師は全員インド人

取材日は、ちょうど入学式で、エリート約100人が8期生として入学します。学生に将来について聞きました。

Q将来は何になりたいですか?
「私はソフトウェア開発者です。テクノロジーの力で我々の国の課題を解決したいと思います。」
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カンボジアのエリートたちは、なぜこの大学に引き付けられるのか?そのわけの1つが授業にありました。

「プログラム言語の授業です。IT講師は全員インド人で授業は全て英語です。」(辻解説委員)

IT先進国のインドより招いた専門家から学べるソフトウェア・エンジニアリングの知識を得ようと学生たちは英語で進められる授業に必死に食らいついていました。

「(Q学生のみなさんの英語力はどうですか?)十分です。十分すぎるほどです。」(インド人講師)

一方学生は?

「完璧に理解するのは不可能ですが、だいたいはわかります。全ては無理ですが。」(学生)

…謙虚な答えが返ってきました。

カンボジア人の学生なら「学費も食費も電子機器もすべて“全額免除”」

さらに学食を訪ねてみると、この大学を選んだもう1つの理由がわかりました

「1日3食タダで食べることができます。」(学生)
「タダです。」(学生)
「全部タダです。」(学生)

「何も払う必要が無いんですね。学費も食費も電子機器もすべてタダなんですね。これが『フルスカラシップ』、全額免除ですね。すごいですね。」(辻解説委員)
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本来であれば4年間で、日本円にすると500万円以上の学費がカンボジア人の学生なら「全額免除」という『フルスカラシップ』。一体なぜ、こんな条件が可能なのでしょうか。

「世界中のどこの国でも働ける人材を作るのが目的なんです。日本は今、“人材難”で日本企業が奨学金を出してくれるので、日本に行く学生が多いという感じです。」(キリロム工科大学 猪塚武理事長)

IT人材不足に苦しむ日本企業。そこで、大学に奨学金として1人当たり2万ドル、日本円にして約220万円を支払えば、その見返りとして支払った人数分の卒業生に、就職してもらえるという仕組みなのです。

即戦力!日本で働くキリロム大の卒業生

すでに、キリロム工科大学の卒業生が東京都内の会社で働き始めていました。株式会社トレードワークスでは、オンライン株取引のシステム開発をしています。熱心にパソコンに向かう、ソクリムさんとワンチャイさんはキリロム工科大学の第一期生です。

  (辻解説委員)「カンボジアで学んできたことが役立ってますか?」
(ワンチャイさん)「はい、いろんな技術を学んできましたから、実践の場に入っても基礎がありますので。」
  (辻解説委員)「日本に来て一番驚いたことは?」
 (ソクリムさん)「地下鉄です。」
(ワンチャイさん)「今まで経験したことなかったので。」
 (ソクリムさん)「カンボジアには地下鉄がないですからね。日本に来て初めて乗りました。あんなに混むんですね。」

この会社では、彼らを含めて4人に就職してもらうため、合計8万ドルをキリロム工科大学に支払いました。

「採用1人広告をかけて1人、2人とれるかというと、なかなか採れないんですね。(Q従来の採用コストと比べると?)決して高いものではないと思います。」(「株式会社トレードワークス」管理本部長 安藤千年さん)

大阪からやってきた学生も

優秀な学生を日本に送り始めたキリロム工科大学。カンボジア人だけではなく、日本の若者たちもこの大学の門をたたき始めています。大阪から来た鎌松愛瑚(かままつ・えこ)さんもその1人です。

(辻解説委員)「出身は?」
 (鎌松さん)「大阪府立大手前高校。」
(辻解説委員)「名門じゃないですか。卒業して1年浪人された?」
 (鎌松さん)「はい。」
(辻解説委員)「どこを目指されていたのですか?」
 (鎌松さん)「京都大学か大阪大学です。」

しかし、努力の甲斐なく日本での受験に失敗。失意の中、海外留学に目を向けた彼女がたまたまインターネットで見つけたのがキリロム工科大学でした。

「日本の大学って授業よりアルバイトとかに専念して。この大学は授業が朝7時半~4時半まであって、全部授業を受けないといけないので、ずっと学校にいる。普通ではできない経験がたくさんできているので。」(鎌松愛瑚さん)
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実際、どんな学生生活を送っているのか。鎌松さんのお部屋に辻解説委員、お邪魔しました。

  (辻解説委員)「4人部屋なんですね。ベッドもあって机も4つある。周りは自然ですよね。勉強するしかないですよね。皆さんボーイフレンドはいますか?」
(鎌松さんの友達)「NO」
(鎌松さんの友達)「NO」
   (鎌松さん)「(静かに挙手)」
  (辻解説委員)「あれ?!あれ?!」

鎌松さん、カンボジアの地で勉強も恋も充実しているようです。

理事長「このモデルは世界中の人に適応できる」

最後に猪塚武理事長にお話を伺いました。

Qキリロム工科大学ができたことでどういうふうに変わっていく?
「もともと『カンボジアと日本人のために』と考えていたんですけど、そもそもこのモデルは世界中の人に適応できる。全寮制なので世界中から学生をここに呼ぶ。世界中から来て母国に戻るようになれば、相当大きなソーシャルインパクトがあるんじゃないかと思う。」(キリロム工科大学 猪塚武理事長)

(11月19日放送 MBSテレビ「ミント!」内『辻憲のちょいサキ!』より)

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