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危険で不気味な「廃墟ホテル」が放置されたまま...自然が美しい「国立公園」なのに 全国的な問題に国が対策へ

2019年11月12日(火)放送

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日本の自然を残し、後世に伝えるための「国立公園」は全国に34か所あり、四季折々の美しい景色を楽しむことができます。しかし、保護すべき絶景に水を差してしまうある問題が…それが放置されたままの「廃墟」です。取材で訪れた「十和田八幡平国立公園」では景観を壊すだけでなく、いつ崩れてもおかしくないような危険な状態のものもありました。実はこの問題、全国の国立公園で起きているといいます。そこで、国が廃墟の撤去を含めた環境整備に乗り出しました。

美しい景観に水を差す「廃墟」

青森、岩手、秋田の東北3県にまたがる「十和田八幡平国立公園」を訪れたMBSの辻憲太郎解説委員。ここは日本屈指の景勝地「奥入瀬渓流」や、世界一広いといわれる「八幡平樹氷」など、絶景で人気の場所です。取材をした11月1日も紅葉の時期とあって国の内外から多くの観光客が訪れていました。

(台湾からの観光客)「きれいだった!(Q来るのは初めてですか?)そうです。台湾にこんな紅葉はないわね。」
(ルクセンブルクからの観光客)「景色が美しい。奥入瀬にも行ったけど、とてもきれいだった。」

国が管理している美しい景観。しかし十和田湖のほとりにある休屋(やすみや)地区を取材してみると“異様なもの”が目に飛び込んできました。それは「廃墟」です。案内していただいた環境省・十和田八幡平国立公園管理事務所の森川久所長に聞くと、昔、旅館だった建物がそのまま放置されているとのことです。
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「これは古いですよ。2階の窓を見るとマットレスがそのまま積んでありますから、中の状態はそのままと…」(辻解説委員)
「これは平成20年くらいに(廃業した)。個人の方が持っていらっしゃって、『撤去するにはお金がないので』との話を伺っている。」(環境省・十和田八幡平国立公園管理事務所 森川久所長)
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外壁は剥がれ落ち、窓ガラスが割れたままになっています。廃墟はまだまだあります。

(辻解説委員)「屋根があれだけ落ちてしまうと、景観を損ねているだけではなくて危険ですね。倒産はしていないということなんですか?」
(森川久所長)「倒産はしていないですね。『何か対策をしないといけない』という話は所有者からされているが、『お金のめどがつかないので』という話にとどまっている状態。」
(辻解説委員)「危険性、責任について所有者は理解されている?」
(森川久所長)「していますね。」

環境省に取材すると、十和田湖のほとりにある休屋(やすみや)地区だけでも、12もの廃墟が把握されていることがわかりました。美しい景色を楽しみにきた観光客らは動揺しているようです。

(埼玉からの観光客)「興ざめというか、寂しいですよね。前はありましたよね、ホテルがいっぱい。閉まっただけじゃなくて、閉まって壊れているからね。」

(地元の土産物店の店主)「お客様から『ちょっと暗いね』とか、『ちょっと景観よくないよね』とか『寂しいね』とか。そういう感じの印象だと言われますね。」

私有財産で撤去難しい…国が環境整備に乗り出す

十和田湖だけではありません。実は全国の国立公園で同じような現象が起きていると、環境省の自然環境局国立公園課の三宅悠介課長補佐は話します。

「バブル崩壊以降、旅行形態が団体旅行から個人旅行にシフトしていく中で、対応しきれない施設が徐々に経営が苦しくなっている状況にあるのかなと。(Qなかなか無くならない、廃墟の撤去が難しい理由は?)(建物は)民間の方の私有財産なので、それを撤去してしまうことの権利的な問題もありますし、夜逃げをされて連絡が取れなくて、どこに行ったのかわからない、建物だけ残っているというケースもある。」(環境省・自然環境局国立公園課 三宅悠介課長補佐)
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観光立国を打ち出し、外国人観光客が増加を続ける日本。SNSが人を呼ぶ今、せっかくの国立公園がこれでは口コミも広がりません。そこで国は、廃墟の撤去を含めた環境整備に乗り出しました。その名も「国立公園満喫プロジェクト」です。これは環境省が力を入れているもので、国立公園の訪日外国人利用者数は2018年は694万人で、2020年には1000万人に伸ばそうと目標を掲げています。グランピングなど体験型コンテンツの充実させていくことや2019年9月には「分譲型ホテル」を解禁するなど規制緩和も行われました。

国の予算で「廃墟を撤去」へ

辻解説委員が続いてやってきたのは、6年前に倒産し、土地の使用料が長い間未納だったホテルです。中を覗いてみると…

「ビールジョッキにお茶碗とか木の蓋なんかが置いてますけど、ここで宴会をしていたんでしょうね。」(辻解説委員)

このホテル、国が放置していたわけではありません。撤去できない理由がありました。
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「不法に土地を占拠しているので、建物を撤去して土地をあけ渡しなさいという裁判をした。2019年の4月に国が勝訴して。『土地を明け渡しなさい』と。(Q今後の流れとしては?)国の予算を使って撤去して、その撤去費用は相手方の方に請求しますと。ただ相手も倒産しているということで、相手方はいないですけど、国の方でお金を負担するみたいな形で現実的にはなる。」(環境省・十和田八幡平国立公園管理事務所 森川久所長)

廃墟をリノベーションし景観改善へ

そんな中、裁判の手間が省ける動きが出てきています。使われなくなった施設を民間がリノベーションしていたのです。外観はまだ古い雰囲気は残っていますが、1階はおしゃれな内装になっていました。

「(以前は)1階はギフトショップ、2階はレストランとして営業されていて、2013年に閉店された。(Qそこからは使われていなかったんですか?)私たちが2018年6月くらいにお借りしたので、それまでは使われていなかったです。」(風景屋ELTAS 小林徹平さん)
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小林さんは妻の恵里さんとともに約1500万円かけ、宮城県仙台市にある自宅以外の拠点として改装し「yamaju」をオープン。1階は貸しオフィスやカフェ、2階はゲストハウスとして生まれ変わりました。
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2階の部屋に案内していただくと…窓からは美しい紅葉が広がっています。

 (辻解説委員)「紅葉を独り占めしているという。この部屋が6年間使われていなかったということですもんね。」
(小林恵里さん)「新緑の時もここが緑で、すごくきれいなんですけど、紅葉も素晴らしくい。」

『ここって地域全体が気持ちいいよね』ってなれば

ここをオープンしたきっかけを聞きました。

(小林徹平さん)「もともとは青森県から『ここの集落の町並み・景観をどうやって整えたらいいか』という相談を受けたのがきっかけで。」
(小林恵里さん)「私はもともと湖畔にいつか住みたいという、漠然とした将来の夢みたいなのがあったんですよ。ここは良いわって。」

国立公園の中で素晴らしい環境を手に入れた2人。彼ら以外にもグランピングなどで活用する事業者も出てきているといいます。

 (辻解説委員)「若いお二人が自分たちの手の届く範囲で、持続可能な形で何かを生み出そうとされているのはすごく新鮮なんですけど…」
(小林徹平さん)「僕らみたく小さくて手の届く範囲でできることと、大きな資本があるからこそできることの両方あった方が集落として健全だと思うんですよ。『ここって地域全体が気持ちいいよね』ってなれば、正解だと思います。」

(11月12日放送 MBSテレビ「ミント!」内『辻憲のちょいサキ!』より)

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