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【特集】「来ようと」→「来る」に 外国人には"簡単な言葉で" 『やさしい日本語』需要高まる

2019年11月12日(火)放送

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日本に住み、学び、そして働く外国の方が増えるとどのようにして意思疎通を図るのかが課題となります。「日本語」は敬語があったり、文法が独特だったりと外国の方にとっては難しい言語です。それを理解しやすいように言い換える『やさしい日本語』が大阪のある地域でじわじわと浸透しているようです。

「こんにゃくは太らない」の意味は?

突然ですが、「こんにゃくは太らない」。この文章の意味、わかりますか?大阪市内で聞きました。

(女性)「え、『こんにゃくは食べても太らない』?」
(男性)「『こんにゃくを食べても太らない』…これでよかったですか?」

もちろん正解です。しかし、日本に住み始めて間もない外国人の解釈は違いました。
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「こんにゃくは食べものでしょ。太らないは…なんか痩せる(という意味)。『(こんにゃくは)多くない』…?」(日本語教室に通う韓国人)

このように、単語はわかっていても意味のわからない文章になってしまいます。日本語は私たちが思う以上に外国人にとって非常に複雑な言語なのです。

そんな人たちのために生まれたのが、「やさしい日本語」。日本語があまり得意ではない人のために、わかりやすい言葉や表現に言い換えた日本語です。例えば「公共交通機関でご来校ください」という文章。「やさしい日本語」だと『電車やバスで学校に来てください』となります。

他にも…

・「トラブル」⇒『困っていること』
・「保管」⇒『大切にしまっておく』
・「実施を見合わせます」⇒『しません』

普段何気なく使っている、もしくは決まり文句のように使っている言葉もこのように言い換えます。

「やさしい日本語」会話を聞いてみると…

2019年10月20日、大阪・生野区で開かれた地域のお祭り「多文化カフェ」。生野区役所企画総務課・担当係長の上林政俊さんは2018年から「やさしい日本語」の普及活動をしています。実際に来日1週間という、香港から来た人との会話を見せてもらいました。

   (上林さん)「日本の食べ物は好きですか?」
(香港から来た人)「好きです。」
   (上林さん)「何が好きですか?」
(香港から来た人)「たまごやき。」
   (上林さん)「たまごやき!よく、家族で、家で食べます。日本の何が好きですか?」
(香港から来た人)「景色。」
   (上林さん)「函館に行かれたんですか?」
(香港から来た人)「読み方は忘れた。」
   (上林さん)「夜の、景色が、好きですか?」
(香港から来た人)「好きです。」

会話が弾んでいます。上林さん、どこに注意しているのかというと「よく、家族で、家で食べます」という部分。ここは「家庭料理」を『家族で、家で、食べる』と言い換えています。また「夜の、景色が、好きですか」というところでは「夜景」を『夜の、景色』とやさしい日本語に言い換えていたのです。

そこで記者も、「やさしい日本語」に挑戦してみましたが…

     (記者)「なぜ日本に、来ようと、思ったんですか?」
(香港から来た人)「こようと…“こようと”の意味は?」
   (上林さん)「日本に来る、来た、のは、どうしてですか?日本が、好き、だったからですか?」
(香港から来た人)「それも1つの理由。」

記者が「来ようと」と話しても伝わりませんでしたが、上林さんが『来る』『来た』と短く区切って言い換えるとやはり伝わりました。

「やさしい日本語」の“6つのポイント”

このようにやさしい日本語では…

・簡単な言葉に
・短く区切って話す
・具体的に伝える
・ゆっくり話す
・カタカナ・外来語はできるだけ避ける
・方言はできるだけ避ける

これら6つのポイントに気を付けることで、外国の人にも伝わりやすくなると上林さんは言います。そもそも「やさしい日本語」は阪神・淡路大震災の後に考案されました。日本に住む外国の方に災害時、より多くの情報を伝えるためです。今では学校の配布物の文章を「やさしい日本語」にしたり、生野区では病院や消防署に導入されたりしています。

「相手に何かを伝えるときに『伝わってるかな、どうかな』というのを感じながら会話、コミュニケーションをとってみるいくところが、一番のスタート。」(生野区役所・企画総務課 上林政俊さん)

生野区では5人に1人が外国人 区民からも相談多く

生野区では過去5年連続で日本人の人口が減少していますが、外国籍の人の数は3年前から増えています。今や生野区民は5人に1人が外国人で、その国籍は60か国と多岐にわたります。外国人住民比率が都市部では日本一の生野区。国籍も文化もバラバラな外国人との付き合い方について区役所には住民から相談が寄せられていました。

「自転車の止め方とか、そういった日常生活の中で『ちょっと伝えたいんやけど、どう言っていいかわからへん』『いったい何語が通じるのかもわからへんねん』という地域の方の声があって。みんなが『やさしい日本語』を使いながら、時には機械翻訳も使いながら、そして相手の言葉もちょっと教えてもらったりしながら、“住みながら世界につながる街”になったら魅力的だなと思っています。」(生野区 山口照美区長)
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区役所の職員は「やさしい日本語」を区民にも広めるため、生野区内の事業者を一軒一軒周って意図を説明し、「協力店」を85店舗まで増やしてきました。

「海外の方がそのシールを見て、『ゆっくりと喋ってもらえるだろう』と思って来てくれているな、というのは、言葉は通じなくても気持ちでわかる部分が確かにあります。」(協力店の店主)

「やさしい日本語」の講義を受ける高校生 「人を思う気持ちがあってこそ」

そしてこんな取り組みも。区内の高校生たちに「地域共生授業」の一環でやさしい日本語の講義を行い、練習問題に挑戦してもらいます。生野区役所で行われた講義の様子を見せていただきました。講師は上林政俊さんです。

(上林さん)「“立ち入り禁止”って、どうしたら伝わると思います?“立ち入り禁止”を言い換えると?」
 (高校生)「入ってはいけないところ。」
(上林さん)「そうですよね。」

生徒からはこんな質問が。

 (高校生)「どうして、外来語は海外から来た言葉なのに使っちゃだめなんですか?」
(上林さん)「いい質問ですよね!海外から来た人って、外来語だから…と思いますよね。常識として『みんな外国人は英語はしゃべれる』と思っているところがあったんですね、僕は。でも、喋れない人もいっぱいいます。」
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講義の最後は生野区の広報誌をやさしい日本語に翻訳します。

【話し合う高校生】
(高校生)「“大会議室”ってわかる?」
(高校生)「大きい会議室?」
(高校生)「会議室がわからん。」
(高校生)「話し合う大きな部屋!」
(高校生)「でもこれさあ、変えたらさ、看板とかわからんくない?」

「やさしい日本語」に触れ、高校生の意識も少し変わったようです。

(高校生)「外国人の方の気持ちになると日本語ってやっぱり難しいなと思う。“人を思う気持ち”があってこそできることだなと思いました。」

災害時「やさしい日本語」でSNSの閲覧件数が約14倍

「やさしい日本語」が必要な場面は、生活情報だけではありません。2018年6月の大阪北部地震の時に生野区が「やさしい日本語」でSNSなどで災害情報を発信した時、通常の日本語では閲覧件数が「4520件」だったのに対し、「やさしい日本語」では「66008件」と閲覧件数が約14倍となりました。外国人が増えている今、災害が起きた時に理解できるように、行政が伝える手段を持つことが重要だと専門家は指摘します。

「例えば『地震に見舞われた』とか、そういう決まり文句がある。だけどそういうのは実際は、ほとんど実質的な意味はない。本当に必要な情報だけを書いてそれで通る形にしていく方が、日本語の表現ということからしても大事。」(一橋大学・国際教育交流センター 庵功雄教授)

多文化共生に災害対策。「やさしい日本語」は、外国人が増えるこれからの日本の必需品になるかもしれません。

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