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【特集】児童虐待を防げ!SOSを見逃さない...大阪府警「人身安全対策室」の捜査員に密着

2019年11月07日(木)放送

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全国の児童相談所が2018年の1年間に対応した虐待件数は約16万件と、この10年で3.7倍に急増している。取り返しがつかない事態になる前にどうやって子どもの命を守るのか、大阪府警の最新の取り組みに迫った。

対象事案は1日約100件

2019年4月に発足した大阪府警の「人身安全対策室」。捜査員は総勢70人で、虐待やDV、ストーカーなど被害者の安全確保が必要な事案が発生すれば、府内全域どこにでも駆けつける。なかでも特に力を入れているのが児童虐待だ。

【事案を共有する様子 2019年10月中旬】
(捜査員)「14歳女子中学生に対する児童虐待、ネグレクト(育児放棄)事案です。45歳の母親がコンビニ内で泥酔保護され、児童の安否確認のために自宅に赴くと室内はいわゆる“ごみ屋敷”の状態でした。ネグレクトということで(児童相談所へ)身柄付き通告しています。」
(捜査員)「過去の取り扱い歴はあるの?」
(捜査員)「ありません。」

対象となる事案は1日に約100件。当事者の間に迅速かつ積極的に介入し、一歩踏み込んだ対策を取るのが警察の狙いだ。

「虐待の通報じゃなくても、背景に虐待が隠れていないかしっかり見極めていく必要がある。」(大阪府警生活安全部 小林俊夫人身安全対策官)

24時間体制で通報の内容をチェック

捜査員たちは24時間体制で110番通報の内容をチェックし、緊急性や重大性の判断を行う。夜間は特に取り扱う事案が増える。通報が寄せられる度にアラームが鳴り響く。

(アラーム音)「ピーピー」
(捜査員)「(内容は)自殺企図です。」※自殺のほのめかし
(アラーム音)「ピーピー」
(捜査員)「(内容は)柄求む、83歳。」※83歳が行方不明

通常の通報はオレンジ色のランプ、緊急性の高い通報は赤いランプが点灯する。

(捜査員)「激しい泣き声通報、搬送されているみたいで、署の刑事課、生安課が病院に向かっています。」

過去に警察が取り扱った履歴があるかないかを調べ、必要があれば現場へと向かう。

Q先ほどの赤いランプの通報内容は?
「泣き声通報で入っているんですが、通報者が生後6か月の子どもと入浴しているときに子どもの顔色が悪くなったので119番しようと思って間違って110番してしまった事案です。何事もなかったです。」(捜査員)

「泣き声と怒鳴り声が…」捜査員が現場に急行

別の日の夜、「女の子の泣き声と母親の怒鳴り声が聞こえる」という通報が入り、捜査員が現場に急行した。向かったのは府内の集合住宅で、40代の母親と小学6年生の娘が2人で暮らす部屋だ。

(母親)「あまりにも時間が遅いのでね、帰ってくる時間が午後9時。女の子なので心配で言い聞かせているんですが、わかってくれない。」

母親は「娘の帰りが遅かったため、大声を上げてしまった」と捜査員に説明した。一方、娘からも女性の捜査員が丁寧に話を聞く。

(捜査員)「お母さんに怒られたのかな?どうしてやろ?…怒られる頻度は?」
(娘)「週2回くらい。」
(捜査員)「口で怒られる?」
(娘)「うん。」
(捜査員)「パチンとか叩かれたりは?ない?」

念のため、娘の体にあざなどがないかも調べる。

(捜査員)「お母さんから叩かれたりとかないってことなんやけど、身体を私に確認させてもらっていい?けがないっていうことだけな。」
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結局、虐待の疑いは認められなかったため児童相談所への通告は見送られたが、現場の捜査員は取り返しのつかない事態になる前にどれだけ早く動けるかが重要だと話す。

「大きいマンションでも泣き声通報は入るので、どれだけ早く場所を特定して児童や保護者から話を聞いて、必要があれば児童の隔離措置をとる。初動で児童の安全を確保する、それが一番ですね。」(捜査員)

警察と児相が全ての“虐待情報”共有の動き…慎重意見も

幼い子どもが亡くなる虐待事件を根絶するため、警察と児童相談所の連携強化を求める動きもある。2019年9月、元警察官僚の後藤啓二弁護士は大阪市に対して「全件共有」と呼ばれる新しい制度の導入を求める要望書を提出した。

「大阪市長様に児童相談所と市町村、警察の情報共有と連携しての活動を求める要望書を提出いたします。」(元警察官僚 後藤啓二弁護士 2019年9月)

児童相談所は市民からの通告だけでなく、子育てがうまくいかない保護者などからの相談も受けている。しかし、警察と共有される情報は骨折や生命に関わる外傷など重篤な事案に限られているため、児童相談所に持ち込まれた全ての虐待に関する情報を共有することで見逃しを防ごうというのだ。

「警察はどこに虐待されている子どもがいるか(児童相談所から)知らされていない。警察は110番通報やDV対応で家庭に対応することが多いが、児童相談所から知らせがないままでは虐待を見逃してしまう、最悪子どもを救えない、その直後に殺されてしまう事件も起きています。」(後藤啓二弁護士)

全件共有はすでに全国20以上の自治体で導入されている。大阪府警も2018年に大阪市と堺市を除いた府の児童相談所との全件共有を開始していて、月に500件ほどの情報が専用パソコンに送られてくるという。

「児童相談所も一定のリスクアセスメント(評価)をしていますが、万が一危険な情報があった場合に警察という違った目線で見ることで見逃しを防止するメリットはあると思います。」(大阪府警児童虐待対策室 荒木拓哉課長補佐)

一方、全件共有の導入は保護者と児童相談所の信頼関係を壊しかねないという声もある。

「『実は私は子どもの対応がうまくできません、時には叩いてしまいます』という相談がきたときに、それは“虐待の相談”になるんですが、『あなたの任意の相談は全部警察に情報が行きます』と言ったら誰も任意の相談をしないですよね。」(元児童相談所所長 津崎哲郎さん)

では、幼い子どもを持つ母親たちはどう思っているのか聞いてみた。

「救えるものなら情報は全部提供してもいいんじゃないかなと思います。それで1つの命が救えるなら。」(母親)
「取りこぼしがあること自体、機関として機能していないと思う。少しでも情報が回る方が今の時代は合っていると思います。」(母親)

虐待の小さな兆候を見逃さないという難しい課題に取り組む警察と行政。最悪の事態を避けるための試行錯誤が続いている。

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