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学生の反骨精神が完成させた『全自動手書きレポートマシン』令和の時代に"手書き"はナンセンス!?

2019年10月31日(木)放送

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今年9月にツイッターに投稿された動画。数式や専門用語が書かれた1枚のレポート用紙が映っている。『手書き』したとみられるレポートだが、これが世間を驚かせた理由は、“機械”によって書かれたからだ。機械が書いたのに、字体はなぜか『手書き』っぽい。制作者を取材してみると、その背景には世間を揺るがせたある事件に翻弄された学生の苦悩があった。

「全自動手書きレポートマシン」早稲田大学2年生が夏休みに1か月かけて完成

取材に応じてくれた制作者は早稲田大学の情報理工学科に通う田村洸希さん(20)。マシンは田村さんの部屋にあるという。その名も「全自動手書きレポートマシン」…そのまんまなネーミングだ。無骨な板。丸見えの配線。全てが剥き出しで手作り感溢れるマシン。
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早速動かしてもらうと…一文字一文字、マシンが丁寧に文字を書いていく。その割に、ちょっと頼りない文字。それが絶妙な手書き感を醸し出している。今年、大学生の夏休みという“プライスレス”な時間を1か月間費やして作ったというこのマシン。それにしても、今の時代にわざわざレポートを手書きする必要があるのだろうか。そこには、世間を揺るがせたある事件が関わっていた。

STAP細胞問題を背景に“手書き”を求められる早大生たち

2014年に起きたSTAP細胞をめぐる疑惑。この時に問題となった研究者の過去の論文を精査した早稲田大学は、博士論文で剽窃、いわゆる「コピペ」があったことを認めた。こうしたことがきっかけとなり、早稲田大学では、一部の学科で実験レポートを手書きで提出するよう求めているのだ。

「令和の時代にもなって手書きで書かなければいけないのは、いかがなものなのかと疑問を抱きまして、だったら自分の持てる技術力を全て生かして、手書き指定のレポートに全力で抗ってやろうと。」(早稲田大学2年 田村洸希さん)

流石は早大生。大隈重信の「反骨精神」がこのマシンを生み出したというわけだ。

“手書き”の全自動化には…手書き以上の手間暇を費やした

田村さんはまず、製図などで使う「ペンプロッター」という機械をベースに、必要なパーツを、3Dプリンターなどを使って自分で作った。

「手書き感溢れる字を書かせるためには、かなり精度を高めに移動させないといけないんです。モーターの細かい移動が必要になるんですけれど、回路を一部ショートさせることによって、モーターの力は弱まるんですけれど、移動の細かさはより良くなる。」(早稲田大学2年 田村洸希さん)
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つまり、回路の一部をわざと使えなくすることで、逆にモーターが細かく動くようにした、というわけだ。

しかし、いざ文字を書かせようとすると、致命的な問題が発覚した。字がキレイ過ぎたのだ。

「無料で配布されているフォントってどれも全く手書き感無いんですよ。だったら自分で一からフォントを全部作っちゃおうって。明治大学が2014年に発表した『平均文字は美しい』という論文をインターネットで読んで、そこに書いてあった数学的手法などを論文から読み取って、それをプログラミングした。」(早稲田大学2年 田村洸希さん)
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同じ文字を3回書くことで、「その人が書き得る最も美しい文字」がそのままフォントになるソフトを開発。どんな文字をレポートで使用するか分からないため、ひらがなや常用漢字など2406文字を登録した。それを3回ずつ、つまり7218回文字書いたのだ。

(Q途中で、俺何やってるんだろう、と思ったことは?)
「何度も思いましたよ。レポート書かせる機械なので、ラーメンの『麺』とか本当に登録する必要あるのかと思いましたね。」(早稲田大学2年 田村洸希さん)

学生なら誰もが羨む手書きクオリティ

このマシン。田村さんと同じく手書きレポートを求められている大学の友達は、どんな感想を抱くのだろうか?教室に「全自動手書きレポートマシン」を持って現れた田村さん、友達らにマシンが動く様子をお披露目すると…。

(田村さん)「こんな感じのレポートができます。」
  (友達)「欲しい。欲しい。欲しい。」
  (友達)「バレない。これはバレない。」
  (友達)「ギリギリ分かんない。」
  (友達)「分数を2行にしたりとか そういうのはできる?」
(田村さん)「フォントでやろうとすると難しくて、頑張ればTeXに対応できるかなと。」
  (友達)「おー!!」
  (友達)「それ凄い。」
  (友達)「TeX対応はありがたいなー。」

※TeX=理系のレポートでは欠かせないソフトウェアのこと

喜んでいる彼らも、実はただ者ではない。田村さんが所属するサークル「MIS.W」(早稲田大学経営情報学会)には、プログラミングやデジタルイラストなどを手がける若者達が集まっている。

例えば2年生の学生の一人は、星座を繋いで道を作ってクリアしていくゲーム「Asteroad」をサークル員で作り、日本ゲーム大賞2019佳作(※アマチュア部門)に選ばれた。
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また別のチームは、絵・曲・ゲームシステムまでを自作した「RHYTH‐METRIA」というゲームを作成。まもなく開発が終わり、近く、公開予定というスマホゲームで、なかなかのクオリティだ。

全自動手書きの長所と短所

そんな仲間たちと刺激しあいながら作り上げた「全自動手書きレポートマシン」。試しに71文字の文章を書いて見せてもらうと…ちょっとした弱点が見えてしまった。それは所要時間だ。71文字の文章を「全自動手書きレポートマシン」に書かせると、かかった時間は7分52秒。一方、田村さん自身で手書きすると2分47秒だった。しかし…
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「やっぱり手で書いたほうが圧倒的に速いです。でも、漢字間違えちゃいました…ボールペンで手書きすると必ずミスが人間なんで発生する。機械だとミスが起こらない。」(早稲田大学2年 田村洸希さん)

制作費は7000円。何より20歳の大学生のひと夏の思い出が詰まったこのマシン、プライスレス。


(「ミント!」内『辻憲のBUZZリポ』より)

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