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超!地域限定電子通貨『さるぼぼコイン』 キャッシュレス決済に躊躇する高齢者が「これなら使う」わけ

2019年10月22日(火)放送

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2019年10月に消費増税とともに始まったキャッシュレス決済の還元制度。“脱現金”を掲げる政府と現金主義の消費者に温度差もある中、岐阜県の3つの自治体では地域限定のキャッシュレス決済が浸透しています。高齢者もスマホで楽々と使いこなしているという、その名も「電子地域通貨・さるぼぼコイン」。いったいどのようなものなのか取材しました。

街のあちらこちらで「さるぼぼコイン」

MBSの辻憲太郎解説委員がやってきたのは岐阜県高山市。「さるぼぼ」は地元の言葉で「サルの赤ちゃん」という意味で、人形はお守りとして愛され、お土産でも定番なのですが、ここで地域電子通貨「さるぼぼコイン」というキャッシュレス決済も広く浸透しているといいます。

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2017年12月から運用を開始した「さるぼぼコイン」、使い方は簡単で店にあるQRコードにスマホをかざし、支払いたい金額を打ち込みます。最後にアプリ上でボタンをスライドすると…

『あんと!(ありがとう)』

決済が完了すると「あんと!」という音が響きます。

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使い方はほかのスマホ決済と大きな違いはありませんが、ただひとつ違うのは「さるぼぼコイン」が使えるのが、岐阜県北部の高山市・飛騨市・白川村だけということです。なぜ狭いエリアだけで使われる決済が浸透しているのか。辻解説委員が街を取材しました。

初めに見つけた和菓子屋さんでは…

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(辻解説委員)「あ、さるぼぼコイン加盟店!」

楽器店でも…

(辻解説委員)「あ、さるぼぼコイン!」

ラーメン店でも…

(辻解説委員)「あ!これですね!さるぼぼコイン!」

次々に加盟店を発見。ラーメン店の店員によりますと、実際使用する人も多く、自身も使ったことがあると話しました。

道路に止まっていたタクシーでも…

(辻解説委員)「さるぼぼコイン使えます?」
  (運転手)「使える。お客さんが自分でスマホで撮って“チャリーン”でもってやって。」
(辻解説委員)「利用者はどれぐらい?」
  (運転手)「月に1回か2回。便利は便利やと思ったけど。時代の流れやな。」

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他にも土産物店や衣料品店、飛騨牛を扱う精肉店など、さるぼぼコインが使えるお店は街のいたるところにありました。創業115年と地元に愛される和菓子店・稲豊園では、さるぼぼコイン導入をきっかけにこんなことが…

「さるぼぼコインって、結構高齢者に近い方が『ちょっと使い方を教えてくれ』というような感じで使う方が多いんです。『こんなふうですよ』と言いながらコミュニケーションをとっていると、話の中で『これも買っていくわ』という追加が増えたりして。それがほかの電子マネーと違うところかなと思います。」(店員)

2019年9月現在、さるぼぼコインは岐阜県の高山市・飛騨市・白川村の3つの自治体で約9200人が使っていて、また加盟店は約1100に上っています。

システムを作ったのは「飛騨信用組合」 狙いは「お金の地産地消」

システムを作ったのは高山市に本店を持つ「飛騨信用組合」です。なぜ、さるぼぼコインを作ったのでしょうか。

「外からのお金を地域の中で循環させたいという思いがまずありました。今回のさるぼぼコインもどうせ(地域で)いろんな消費をするなら、この中できちんと消費をして、さらにその結果『お金の地産地消』というのがコンセプトです。そのひとつの武器としてツールとして、さるぼぼコインという地域通貨を作ろうというのが理由のひとつです。」(飛騨信用組合 山腰和重専務理事)

「お金の地産地消」それがさるぼぼコインが生まれたきっかけでした。祇園祭とならび日本三大美祭の1つとされる「高山祭」や世界遺産「白川郷」のある岐阜県飛騨地方。最近では映画「君の名は」で舞台といわれる場所をめぐる“聖地巡礼”なども影響し、年間450万人が訪れる観光地です。観光客が飛騨で使い、お店が得たお金はさらに飛騨で使ってもらおうと考えたそうですが…

「当初から(観光客は)ターゲットだったんですけど、まずは地元の人が圧倒的に使わなきゃ、外の人が使おうと思わないじゃないですか。まずは地元に周知することにこだわったんです。」(山腰和重専務理事)

丁寧な説明を繰り返し利用者増やす

辻解説委員が続いてやってきたのは、さるぼぼコインが使える飛騨市内の喫茶店。ここで行われていたのは「初めてのさるぼぼコイン教室」です。この日は飛騨信用組合経営企画部の田中直樹課長が教えていました。

(田中さん)「お支払いの仕方ですが、すぐカメラが立ち上がります。」
  (女性)「(口座が)なくてもアプリのダウンロードだけでもいい?」
(田中さん)「ダウンロードだけで使えます。例えばスーパーに行ったときに後ろに大勢お客さんが並んでいるときに、さるぼぼコインのアプリを立ち上げると最初まごまごすることがあるので、金額を入れる欄、この画面の状態でレジで待っていただくのが一番早いです。」
(別の女性)「チャージ機ってどこに、どんなところにありますか?」
(田中さん)「この『お店を探す』というところに出てきます。」

教室ではアプリをスマホに入れるところから使い方まで丁寧に説明します。「詳しくはホームページをご覧ください」なんてことはありません。

「20代から60代ぐらいのスマートフォンを使われるだろう人口の約10%を超えたぐらい。10人に1人ぐらいが(さるぼぼコイン)アプリを入れているかなというところです。僕らが街角に出たときにどこでも『あんと!』という音が響く、その世界ができることをまず目指しています。」(飛騨信用組合経営企画部 田中直樹課長)

初めてのさるぼぼコイン教室、実際に支払って終了です。感想を伺いました。

「思ったより簡単でした。(参加して)良かったと思います。使い方、最初だとわからないので説明してくれたほうがいい。」(参加した女性)

こうした丁寧な使い方の説明を個別で繰り返したことで、キャッシュレス決済に躊躇していた高齢者の利用も増えていったといいます。

スーパーのレジでも「さるぼぼコイン」“飛騨信”への信用

続いては地元のスーパーを訪ねました。レジの様子をしばらく見ることにした辻解説委員。スマホ決済をしていた方にお話を聞きました。

(辻解説委員)「さるぼぼコイン?もう終わりました!?」
   (女性)「はい。終わった。」
(辻解説委員)「最初に使われたのはいつ?」
   (女性)「おととしの冬からですね。」
(辻解説委員)「使い始めるまでというのは大丈夫でした?」
   (女性)「初めての時は教えてもらいながら使って。」
(辻解説委員)「誰に?」
   (女性)「飛騨信用組合の人に。」

別の女性も…

(辻解説委員)「一番最初に使ったのはいつですか?」
   (女性)「(ポイント)還元が始まってから。」
(辻解説委員)「さるぼぼコイン以外のスマホ決済は?」
   (女性)「全然使っていない。さるぼぼコインだけ。なんかあんまり信用性が。」
(辻解説委員)「飛騨信がやっているさるぼぼだから?」
   (女性)「はい。」

超地域限定「さるぼぼコイン」 今後の展望は?

地域の金融機関が作った電子通貨だからこそ受け入れられたともいえる「さるぼぼコイン」。しかし、「お金の地産地消」を進めるため使える地域をしぼり、加盟できる店やサービスも地元に拠点を持つ店だけにこだわることに問題はないのでしょうか。

「地方都市で、例えば東京に本社がある大きな資本があるチェーン店が入ると、その会社が地域の落としたお金を全部持って行って、結局地元に残らないと言われている。利便性だけを追求するならば、利用者からすると『さるぼぼコイン』が(チェーン店に)導入されていた方が利便性は上がると思うんですけど。そこは地元の事業者にとってはライバルになりますよね?そこのバランスや兼ね合いは?」(辻解説委員)
「地元の事業者からすると『地域を大切にしましょうよ』というメッセージがひとつあるんですね。ユーザーからするとどこでも使えたほうがいいに決まっていると。ここは本当に個別にバランスを取りながら、今チャレンジしているところですね。」(飛騨信用組合 山腰和重専務理事)

実際にこの地域以外にも展開しているスーパーからさるぼぼコイン導入を求められたものの地元業者を守るために断念したこともあるそうです。

「数年後の飛騨・高山地方とさるぼぼコイン、イメージされている姿というのは?」(辻解説委員)
「生活のほとんどの場面でさるぼぼコインが登場してくると。それは決済かもしれないし情報かもしれないし、お互いのコミュニケーションかもしれないと思っている。それをさるぼぼコインを通じてこの地域の豊かさのひとつの糧になればいいなと思っています。」(山腰和重専務理事)

行政も提携していて納税もできるのですが、さるぼぼコインのアプリはキャッシュレス決済だけではありません。クマ出没情報や火事などの災害情報をユーザーにピンポイントで配信しています。さらに今後は弔辞情報も配信する方針だそうです。背景に地方新聞の発行部数の低迷で必要な情報が届きにくくなっていることがあげられます。単なるキャッシュレス決裁だけではなく、さるぼぼコインが街の姿を変えようとしています。

(「ミント!」内『辻憲のちょいサキ!』より)

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