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【特集】競技を続けて仕事も..."デュアルキャリア"という働き方 人材不足に悩む企業がアスリートを積極採用

2019年10月02日(水)放送

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アスリートの「デュアルキャリア」という言葉を知っているでしょうか。競技を引退してから働く「セカンドキャリア」ではなく、競技も続けながらフルタイムで仕事もするという働き方のことです。アスリートの活躍の場が増えるだけでなく、人材不足に悩む企業が積極的にアスリートを採用するなど、デュアルキャリアの取り組みは広がりつつあるようです。

昼は重機を扱い夜はグラウンドへ

今年9月、神戸市西区にある建設会社「関西タクト」では、今年入ったばかりの新入社員が重機の操縦の研修を受けていました。

「最初は全然できなかったんですけど、現場でもダンプに積み込みとかさせてもらって、だいぶ慣れてきたなと思います。」(新入社員)

関東などから就職してきた4人の新入社員は、仕事終わりにみんな揃って社内で夕食をとります。その後…

「お疲れ様です、お先に失礼します。」(新入社員たち)

勤務時間は終わったはずが、車に荷物を積み込みどこかへ移動します。4人の新入社員が向かったのは…野球のグラウンドでした。
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彼らは関西タクト野球部です。今年創設されたばかりの実業団チームで、来年に予定されている試合に向け、毎日仕事が終わってから練習に取り組んでいます。わずか4人の実業団野球チームが創設された背景には、会社の人材不足が影響していました。

「まず第一に、企業として優秀な人材が欲しいというところがスタートです。人気のある業界でもありませんし、大手の建設業では集まっても中小で優秀な人材を採るというのは難しい。」(関西タクト 谷岡哲広社長)

競技環境求めるアスリート×人材求める企業

関西タクトは毎年、新卒の社員を募集してきましたが、創設からの7年間で1人も採用できていません。さらに今の社員の平均年齢は48歳。次世代を育てることに焦りを覚えた社長がひらめいたのは、地元の少年野球を指導している時でした。
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「私は中学生の野球のクラブチームに関係があるんですが、一生懸命頑張る子どもたちを見て、こういう子たちが会社に欲しいなと、こういう選手たちなら会社組織を作っていけるという思いから、野球チームを作ろうと思いました。」(関西タクト 谷岡哲広社長)

そこで、共通の知人を介して元プロ野球選手の斉藤秀光さんを監督に招聘。費用面などの懸念もあり、最初は社内からの反対もありましたが、仕事と野球を両立し一球一球に全力で汗を流す彼らの姿を見て徐々に受け入れられていきました。

「体はしんどいですけど、自分のやりたいことなので、そこは妥協したくないって感じですね。」(関西タクト野球部 佐藤雄大さん)

野球部の1人、佐藤雄大さん(23)は投手として大学まで野球を続けていました。卒業後は社会人野球界を考えましたが、実業団に採用されることはありませんでした。関西タクトの野球部員は、そんな野球への思いを断ち切れず入社した4人なのです。

「まだ上(社会人)で野球をやらせてもらえる環境があるということで、ところかまわずだったので、野球がやれればどこでもいいという感じだった。」(関西タクト野球部 佐藤雄大さん)
「後悔したくないという気持ちが強くて、(他は)どこからも声がかからなかったんですけど、こういう話を頂いて野球を続けようと思いました。」(関西タクト野球部 小橋優矢さん)

実は、野球の実業団チームは不況やプロスポーツの発展で減少していて、日本野球連盟に登録されている企業チームの数はピーク時(1963年:237チーム)の約3分の1となる85チームまで減少しています(※日本野球連盟HPより換算)。競技を続ける環境を求めるアスリートと、優秀な人材を求める企業とのそれぞれの思惑が一致したのが今回の野球部採用だったのです。

「野球が自分の中の支えになっているので、どんな仕事でも野球があるので今は頑張れますね。」(関西タクト野球部 小橋優矢さん)

関西タクトでは来年は22人の新卒者を野球部採用する予定で、監督の斉藤秀光さんは「チームの目標は日本選手権。野球を最後までやり切ってもらいたい」と話しています。

デュアルキャリアで「競技の期間が終わった後にスムーズに移行」

このようなアスリートを採用して人材を確保するという取り組みは、全国的にも広がりつつあります。

「これまでの実業団の選手は、午前中に少し仕事をしてその後に練習。あるいは、ほぼ会社には出ずに練習という形が多かった。選手として終わった後に本業で活躍できる育て方がされてこなかった。競技の期間が終わった後に本業にスムーズに移行できる、そういう雇用の仕方や働き方というのが企業の理解を得られてきている。」(マイナビ・アスリートキャリア事業室 木村雅人室長)

マイナビはこのような競技と仕事を両立させる働き方を「デュアルキャリア」として推奨していて、企業とアスリートを繋げるサービスを展開しています。

東京都新宿区でインターネットショップのマーケティングやサポートを行っているIT企業「ジーケーライン」でも優秀な人材の確保のため、今年からマイナビのサービスを利用してアスリートの採用を始めました。

「コミュニケーション能力がすごくあるとか、(アスリートは)結果を出すということではプロフェッショナルで、そういう人たちは非常に魅力的に感じました。」(ジーケーライン 松木利夫代表)

アスリートは営業職として8時間のフルタイム勤務を任されますが、会社から遠征費などのサポートを受けることができます。

「ユニフォームの支給や、遠征費を出すとか、スポーツに対して集中できる環境を作ってあげる。」(ジーケーライン 松木利夫代表)

競技を諦めきれないアスリートのチャンスに

ジーケーラインに内定しているアスリートが泉谷莉子さん(23)です。現在は兵庫県の武庫川女子大学の大学院に通いながら陸上の七種競技に打ち込んでいます。泉谷さんは日本グランプリ5位入賞や日本選手権にも出場するなど国内のトップレベルで活躍していますが、いわゆる実業団チームから声がかかることはありませんでした。

「普通に競技をせず就職するか、競技を続けながら仕事ができる場所を探すかすごく悩みました。」(武庫川女子大学大学院 泉谷莉子さん)

一度は競技を引退して就職する道も考えましたが、大学4年生の最後の全国大会で競技を諦めきれない出来事がありました。

「初めての全日本インカレに大学4年生の時に七種競技で出場できたが、その時の1種目目のハードルで失格になってしまった。その経験がすごく大きくて、このまま終われないなというか、あの悔しさがあったから続けようと。」(武庫川女子大学大学院 泉谷莉子さん)
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春からアスリートと社会人を両立させることになる泉谷さん。競技人生を全うするために掴み取ったチャンスを存分に生かしたいと意気込んでいます。

「競技をしたくても『できないだろうな』とか、『どうせやめないと』というのが日本ではそれが当たり前。それで就職活動をするのが当たり前だと思うんですけど、こういう道もあるんだよというのはもっと出していきたいし、もっともっと日本でそっちも当たり前というふうになってほしいなと思います。」

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