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【特集】子どもや若者が立ち寄る一風変わった高齢者施設 神戸・長田区「はっぴーの家」仕掛け人の想い

2019年09月18日(水)放送

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超高齢社会に突入し、介護施設が増えています。人手の確保や他の施設との差別化が難しいといわれるなか、神戸の下町、長田には一風変わった運営方法で注目を集める施設があります。

「暇やからきた」「なんていうか実家」と子どもや若者らが訪れる

陽気に太鼓をたたく人もいれば…ドレッドヘアの外国人とアフロヘアの日本人。さらには自宅さながらにくつろいでテレビゲームをしている子どもたちがいる施設、実は高齢者施設なんです。

神戸市長田区、六間道商店街のすぐそばにある「はっぴーの家 ろっけん」はサービス付き高齢者向け住宅で20人ほどが入居しています。通常こうした施設は食事の提供やリハビリなどのサービスを提供し、入居者が静かに暮らせる環境を整えるのが一般的ですが、はっぴーの家はちょっと変わっています。

なぜか施設でYouTubeを見る男の子たち。すると…

「これお願いしようかな。2人で手分けしてやって。めっちゃくつろいでるやん。悪いけどよろしく。少ないから手分けしてやって。」(スタッフ)

男の子たちは、ここを使って遊ぶ代わりに洗濯物をたたむなど、施設のお手伝いをしているのです。

Q今日はなぜ来た?
「遊びにきた、暇やから。」(男の子)

入居者たちも、他にはないにぎやかさに居心地の良さを感じているといいます。

「いいね。(子ども達は)あいさつもするしね、手伝いもしてくれる。見てると楽しくなるわ。」(入居者)
「ええ人ばっかりやで、ここの人。みんな遊びに来るもん。」(入居者)

はっぴーの家にはふらっと遊びにきた人たちが週に200人ほど訪れるといいます。集まるのは子どもだけではありません。ソファでごはんを食べてくつろぐ若い男性が…

Qここのスタッフの方?
「いやスタッフではないですね。なんていうか実家です。東京で働いているんですけど、神戸に帰る家がないんで、ここに勝手に帰ってきて、何でもやる分、住ませてもらっている。」(男性)

Qはっぴーの家ってどんなところですか?
「はっぴーの家?みんなの家ですね。いつも『アランようこそ』いつも誰もがようこそだから、みんなの家。」(トーゴ出身のアランさん)

“遠くの親戚より近くの他人”がコンセプト 阪神・淡路大震災がきっかけ

子どもから大人まで誰でも受け入れてくれるはっぴーの家。代表の首藤義敬さん(34)はある思いを込めて3年前、ここを作ったといいます。

「“遠くの親戚より近くの他人”っていうコンセプトがここにはあって、ここのことを知っている人とか、一回来てもらって良いなと思ってくれた人とかが地元問わず全国から集まるという形になってる。目的は多世代が集まるリビングがあって、そこにおじいちゃん、おばあちゃんが住めたらいいなっていうところから始まっています。」(「はっぴーの家 ろっけん」代表 首藤義敬さん)

神戸・長田区に生まれ育った首藤さん。地域の人が集まれる場所を地元に作りたいと考えたきっかけは幼少期に体験した、あの災害でした。1995年の阪神・淡路大震災は関西を中心に甚大な被害をもたらしました。ひときわはっぴーの家がある新長田駅周辺の被害は大きく、町は焼野原になりました。

その後、町はきれいになり、かつて長屋があった場所には新しいビルやマンションが立ち並びました。一見復興しているようですが、震災前から長田を見てきた首藤さんはこの町の姿に違和感を覚えたといいます。

「建物が建って町がきれいになりだしたころに『ちょっと待てよ、なんか違うぞ』っていうのを感じ出したんです。建物は建っているけど、“人のつながりがなくなっているな”っていう。復興していく中で違うなって。人のつながりとか長屋とかあった時代の方が逆によかったんじゃないかな、ということを気づきだして。そういうのを作りたいなあって。」(首藤義敬さん)

「今日は何が起きるんや」楽しそうな入居者たち

かつて長田にあった町の人同士が助け合う空気感を取り戻したいという思いで作ったという「はっぴーの家」。取材をした日もリビングには何やら大勢の大人が集まっていました。

円形の台の上で座って回る入居者のおばあちゃん。

「1周回るからこのまま座っといてくださいね。」(スタッフ)

やっているのはモデルです。地元で活動する現代アートの制作者たちが、作品の素材を集めるために入居者の3D画像を撮影しに来ていました。

「来るたびにいる人が違うじゃないですか。見てもらったらわかるけど、おじいちゃん、おばあちゃんは迷惑してないでしょう。楽しそうにしてるでしょう。『きょうは何が起きるんや』ぐらいの。」(首藤義敬さん)

「どうやって日々楽しく過ごしてもらうのか、関わり方を考える方が建設的」

はっぴーの家は福祉と地域の連携がうまくいっている珍しい例として様々な業界から注目を集めています。8月18日に開かれた講演で首藤さんは…

「僕らは介護をしているつもりは全くなくて、この町のいろんな暮らしを作っています。もし病気だったり認知症だったりしても、どうやって日々楽しく過ごしてもらうのか、関わり方を考える方が建設的だ。」(首藤義敬さん)

講演を聞いた人は…

「いままでやっていた地域づくりじゃなくて、本当に地域を作られているなという感じでした。コミュニティーを作っている。」(社会福祉士〔福岡〕)
「まずはやってみようという発想から始まっているので、仕組みをきれいに作ってから始めようという、行政ではできない取り組みでした。」(地方公務員〔滋賀・草津市〕)

今後の展開は?

9月14日に行われた月に一度の交流イベントでも、地域の人たちが集まって手作りで盛り上げていきます。ここが高齢者施設であることも忘れてしまうほどにぎやかです。

これからは高齢者にとらわれずいろんな人が生活できる場を作っていきたいと首藤さんは考えています。

「部屋とかも若い人も住めるようにして、シングルマザーの人とか障がいのある人とかも受け入れていこうということになっている。本当に住居としての制限を外していこうとしている。人が集まればやりたいことっていっぱい出てくるので、どれからやっていこうかなって感じで。」(首藤義敬さん)

長田の町に現れたちょっと変わった高齢者施設。いまだ復興途上にあるこの町で新たなまちづくりが始まっています。

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