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【特集】引退した競走馬を支える夫婦「新たな活躍の場を」

2019年09月11日(水)放送

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華やかな競馬の世界を引退した競走馬に新たな活躍の場を与えようと奮闘する夫婦がいます。兵庫県の古い牧場で競走馬を引き取って乗馬ができる馬にするための調教を行っています。その取り組みを取材しました。

「乗馬として活躍する道を」牧場を営む夫婦

兵庫県多可町にあるカイマナファーム。厩舎にいる11頭の馬たちはほとんどが元競走馬です。牧場を営むのは大谷直生さんと香名美さんの夫婦です。ここで、引退した競走馬を乗馬ができる馬に調教しています。

大谷さん夫婦は調教師でありながら、馬術における障害飛越競技の現役のライダーです。共に国体では優勝を経験し、直生さんは馬術におけるアジア最高の舞台「1994年広島アジア大会・障害飛越団体」で金メダルを獲得するほどの実力の持ち主です。会社勤めだった大谷さんが一念発起して牧場を開いたのが今年4月、その理由は“一頭でも多くの競走馬を救いたい”という思いからでした。

「生きる道というか、次の人生があるので、乗馬として活躍する道をどこかで探してあげないといけないなと思って。」(カイマナファーム 大谷直生さん)

NPO法人サラブリトレーニングによりますと、毎年7000頭近く生まれるサラブレットですが、引退を告げられる馬たちは年間5000頭にも上り、その多くが殺処分されます。

“引退した競走馬が乗用馬として活躍できる場を作りたい”。それを障害飛越競技の調教を通して実現するため、大谷さん夫婦は古い牧場を借りて、一家で移住しました。

「おとといきた馬なんですけどね。(前脚)が腫れているじゃないですか。屈腱炎といって馬の腱の病気なんですけど。思い切り走ったら時速60kmくらいのスピードで、1本の足にかかるのが1トン以上っていいますからね。」(大谷直生さん)

たとえ病気が治ってももう競走馬としては活躍できない。そんな馬たちが大谷さん夫婦の元にやってきます。

障害飛越競技ができるように 調教の方法は?

気性の激しい競走馬を誰でも乗れる馬にするためどのような調教をするのでしょうか。

「チッチッチッチッ…ホゥーッ」(大谷直生さん)

大谷さん、調教中に何やら馬に合図を送っています。

「『ホウーッ』ていうのは『止まりなさい』という指示です。『チッチッチ』という舌鼓というのは前に進むのを促すための音です。」(大谷直生さん)

馬の性格にもよりますが、競走馬が人の言うことを聞くようになるまでに半年はかかると言います。

馬が従うようになったら、高さ15cmの木をまたぐ練習に移ります。障害飛越競技の調教はどんな状況でも安定して走る馬になるためのもの。乗用馬として生まれ変わるために欠かせない条件です。

「今は人を乗せずにまたぐだけですが、これに人間が乗っての負荷がかかりますから、人間の体重を支えつつ障害を越えないといけないのが負担になる。」(大谷直生さん)

障害競技の大会に初挑戦する元競走馬・タガノヴェルリー

この日、ある競技会に出るため最後の仕上げをしている馬がいました。牝馬のタガノヴェルリーです。競走馬としてレースで3勝を上げたものの、その後は活躍できず、2018年9月に引退を告げられました。

「クラスが上がってきていると、体格の大きい牡馬と走らざるをえない。そういうところにくると体格負けするなというのは感じていました。」(競走馬時代に調教した 今野貞一さん)

大谷さんのもとで乗用馬として新たな道を歩み始めたタガノヴェルリー。大谷さんの次男・文志君(10)とペアを組み、障害競技の大会に初挑戦します。7歳から乗馬を始めた文志君。大谷さん夫妻の指導のもと練習を重ねてきました。

「馬が飛び上ったら次どっち行くかちゃんと考えて。どっち?」(文志君を指導する母・香名美さん)

障害物も難なく飛べるようになり順調な仕上がりに見えますが、香名美さんは当日を迎えるまで不安が残ると話します。

「競技場の周りもそうですし、障害も初めて見るものばかりなので、全てにおいて馬もどうしていいかわからなくなる。でもその敏感さが、障害を落とさなかったりに繋がるので、それを良い方向に向けてあげる。」(大谷香名美さん)

いよいよ大会…初挑戦の結果は?

そして迎えた大会当日の9月6日、兵庫・三木市にある三木ホースランドパークには全国から178頭の馬が参加しました。その中でタガノヴェルリーが出場するのは最大80cmの高さの障害物12個を制限時間内に飛び越える競技です。出走前、落ち着いたように見えるタガノヴェルリーですが…。

「(タガノヴェルリー)緊張していると思います。愛撫とかして自信を持たせたいと思います。」(大谷さん夫婦の次男・文志君)

競技会では初めて見るコースに戸惑いを見せる馬もいる中、タガノヴェルリーがいよいよ出走。落ち着いた走りで障害物を1つ、また1つと乗り越えていきます。息の合った走りで練習の成果を見せた文志くんとタガノヴェルリー。見事ノーミスで競技を終えました。

ゴール地点では大谷さん夫婦が出迎え、タガノヴェルリーのデビューをねぎらいました。試合後。

「お利口でした。次の障害はどこっていう感じで、気持ちが障害に向いていた。子どもはつかまっているだけなんですけど、おんぶして帰って来てくれたので、すごくお姉さんに見えました。」(大谷香名美さん)

そして結果は…見事2位。タガノヴェルリー、新たな第一歩を踏み出しました。

「競馬の世界を引退してきて、その後の道をどう生きるか考えた時に、できたら私たちと人間と一緒に末永く乗馬の世界で活躍してもらいたい。」(大谷香名美さん)

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