MBS 毎日放送

ミント! ミント!

毎週月~金曜日 ごご3:49~放送関西のニュースは毎週月~金曜日 ごご4:30~放送

ミント!

「"しっぽ"があってもいいんじゃないか」再生回数46万回 開発者に作ったわけを聞いてみた

2019年09月05日(木)放送

SHARE
Twitter
Facebook
はてなブログ
LINE

“しっぽのマシン”を作っている人がいる。その動画はYouTubeにアップされ、約46万回再生されている。世界各国からも反響が寄せられているが、そもそも“しっぽ”は何なのか、なぜ作ったのか…開発者を取材した。

機械仕掛けの“人間用しっぽ”を作ったわけ

YouTubeで約46万回再生されている動画。腰からぶら下がった“しっぽ”のような奇妙なマシンに世界各国から「COOL」「どこに行けば買えるんだ」「次のバットマンの衣装はこれを取り入れるべきだ」と反響が寄せられている。この謎のマシンは神奈川・横浜市の慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科にあるということで取材班が向かった。早速“しっぽ”を発見!

Qそちらにあるのが?  
「ウェアラブルのロボットテールデバイスです。簡単にいうと人間用のしっぽです。」(鍋島純一さん)
Qしっぽ?
「しっぽです。」(鍋島純一さん)

開発したのはこの研究科に所属する鍋島純一さん(24)。そもそも人間は進化の過程でしっぽを失ったと言われている。つまり、今の人間にしっぽは要らない…。なのになぜ作ったのだろうか。

「チーターとか人間の祖先にあたるサルだったりとかは、歩いている時にしっぽを振ることで重心を補助している。高い足場の不安定なところで作業する時やバランスを崩した時に、重心が真ん中に戻るのをサポートしてくれるよう、動物が持っている“しっぽ”があってもいいんじゃないかと。」(鍋島さん)

『Arque(アーク)』と名付けられた「しっぽ」。複数の関節を4本のチューブがつないでいる。このチューブが筋肉の役割を果たしていて、中に空気を送ることで上下左右8方向にくねくねと動く仕組みだ。

さらに装着時は、背中にあるセンサーが重心を推定。重心が傾いた方向と逆の方向に「しっぽ」が動くことでバランスを取ってくれるというのだ。つまり、人が前にかがむとしっぽは後ろへ上がり、体が左に傾いたらしっぽは右にくにゅっと曲がる。

着け心地は?取材スタッフが付けてみると…

果たして、その付け心地は?取材スタッフが装着してみた。

「(しっぽの先が)下についちゃって…」(取材スタッフ)

残念、スタッフの背が低すぎた。床についたら機能しない。身長に合わせて関節の個数を変えることで長さ調整はできるが、今回は時間短縮のため台に乗って調整。改めて装着した感想は?

「しっぽが動いてバランスをとってくれようとしている感じは伝わります。」(取材スタッフ)

しっぽ全体の重さは約3kg。今はまだ、これをつけていると転ばないというほどまでにはなっていないが、将来的にはもっと軽くして高齢者でも簡単に扱えるようにしたいと考えている。

「高齢者の方みたいに、バランス感覚にちょっと不安のある方など、そういう人のためのしっぽを作りたいなと思って。」(鍋島さん)

コンピュータ技術の国際会議で発表…“しっぽ”が大盛況

実は鍋島さん、大学時代は大阪大学経済学部という機械とは無縁の学部に在籍。しかし、もうすぐ卒業という時に「ものづくりがしたい」という思いが強くなり、慶應義塾大学の大学院を受験しメディアデザイン研究科に進学した。

Q(これまでに)ロボットを作ったことは?
「ないです。こういった分野の知識はゼロからですね。」(鍋島さん)

試行錯誤を繰り返して約1年かけて作り上げたしっぽは今年7月、アメリカ・ロサンゼルスで開催された世界最大級のコンピュータ技術の国際会議「SIGGRAPH 2019」で発表する機会を得た。すると、しっぽを試してみたいという人たちがひっきりなしにブースを訪れ大盛況だったという。

「見た目からして海外受けがすごくて、おもしろいという意見をいっぱいいただいた。」(鍋島さん)

「ピノキオの長い鼻」を人に

鍋島さんが所属する研究室では「機械やVRの技術を使って『人間の体に本来ないもの』を付け加ると、どのようなことができるのか?」という研究が行われている。例えば「PINOSE」というマシンは、ピノキオのように自分の鼻が伸びた感覚が体感できる。VRの映像上で、実際には無いはずの鼻をロウソクの火に近づけると、自分の鼻が熱く感じるという。そんな技術の開発が進んでいる。

遠隔操作で動く「二人羽織ロボット」

この研究室では他にも「Fusion(フュージョン)」というマシンがある。「Fusion」は2本のロボットアームと小型カメラが付いたマシンだが、装着した人がマシンを操作するのではなく、別の人が遠隔操作でロボットアームを動かすことができるのだ。

これを作ったのはシリア出身のムハマド・ヤメン・サライジ先生。シリアのダマスカス大学出身で、2012年に来日して去年から慶應義塾大学大学院の特任講師を務めている。実際に先生に「Fusion」をつけてもらったが、その姿はまるで“二人羽織”のようだ。先生も…

「(Fusionを)体験した後に『これは二人羽織ですよね』と言われて、二人羽織を調べたら…確かに二人羽織みたい。」(ムハマド・ヤメン・サライジ先生)

ただ違うのは…

「2つの目(小型カメラ)がありますので、近い遠いがわかる。」(ヤメン先生)

遠隔操作をする人が、装着した人と同じ目線で遠近感も把握できるように工夫されている。前が見えない本物の二人羽織とは違うのだ。

そのためこのマシンは装着した人がロボットアームと共同作業をすることができるだけでなく、ロボットアーム自体を人の腕に固定することで、その人の運動をサポートできる。例えば手の動きが不自由な人でも的確に腕を上げ下ろししたり、ものを移動させたりできるのだ。

「ロボットしっぽ」に「ピノキオ」、「二人羽織ロボット」。一見、奇抜に見えるロボットだが、研究者たちは大真面目に日本の未来を見据えている。

「リハビリテーションとか体が弱い人がロボットを使うことで体が強くなるとか。」(ヤメン先生)
「研究室全体のコンセプトとして、どう日常生活や実生活で使っていくかとなった時に、足場の不安定なところで作業をしている人や高齢者の方に、そういうところで使われるといいなと思いながら開発を進めています。」(鍋島さん)

最近の記事

バックナンバー