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【特集】"おもてなし"でなく"おてつだい"...人口減少に悩む奈良・吉野町の打開策となるか!町を感じる"住民体験"

2019年08月30日(金)放送

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日本が抱えている深刻な問題が「人口減少」です。地方では過疎化が進み、近い将来に存続の危機を迎えるとされる市町村もあります。そんな中、人口を増やそうとするのではなく、町に貢献する人を増やす取り組みを始めた奈良県吉野町を取材しました。

町の存続が危うい事態に!?

奈良県吉野町。全国有数の桜の名所として春は大勢の人で賑わいます。年間100万人以上の観光客が訪れる吉野町ですが、実は今、切実な課題に直面しています。

「だいぶ(人口が)減ってきているし子どもが少ない。」(吉野町の住民)
「若い人がいません。」(吉野町の住民)

それが人口減少です。1990年に1万3000人を超えていた町の人口は今年7000人を下回り(6951人)、さらに約20年後の2040年には半分程度(3621人)に減ると予測されています。このままでは町の存続が危ういと危機感を募らせた吉野町は、移住者を増やすために助成金を出すなどあの手この手を講じてきましたが、人口減少に歯止めがかかりません。

「(町内に大学がなく)大学に行く時に必ず一度は出ていく。人口減少はどうしても止めることができない。」(吉野町総合政策課 八釣直己さん)

そこで、今年夏、新たな取り組みを始めました。

東京からやってきて“おもてなし”でなく“おてつだい”

8月19日、吉野町にやってきた1人の女性、酒匂南実さん(23)。酒匂さんは7月まで東京でアパレルの店員をしていました。

「山とか海とか好きで、人が少ない所に行きたくて、1人でのんびりしたい。」(酒匂南実さん)

東京生まれ東京育ちの酒匂さん。吉野町に来るのは初めてで、これから5日間滞在します。

出迎えた町の職員とともに酒匂さんが向かった場所は、空き店舗を利用した交流スペースです。ここでは月に1度、地元の女性たちがカフェを開いていて、キッチンでは慌ただしく準備に追われてました。

「来て来て。三角巾をお願いします。」(キッチンで働く女性)

酒匂さん、到着するやいなや手伝いに駆り出されました。

「大変ですね。」(酒匂南実さん)

約1時間みっちり配膳のお手伝い。さらに別の場所では、左官屋さんの指導の下、宿泊所の障子張りを手伝います。酒匂さんを待っていたのは「おもてなし」ではなく「おてつだい」。実はこれこそが過疎に悩む吉野町の新たな秘策なのです。

「地域に旅人に入っていただいて、今まで観光では体験できなかったことを地域の人と体験していただいて、人や地域を知って、移住までいかなくても第二のふるさとと思っていただく。」(吉野町総合政策課 八釣直己さん)

狙いは、観光では知ることのできない吉野町の魅力を住民目線で知ってもらい、ファンになってもらうことです。

仕組はこうです。吉野町は人手が必要な場所を探して来訪者にお手伝いを依頼します。来訪者は働く代わりに町が運営する宿泊所を無料で利用できます。こうした情報は人手不足に悩む過疎の町とお手伝いをする人をつなぐマッチングサイト「SAGOJO」に掲載されていて、酒匂さんはこのサイトを通じて応募しました。移住者を増やすのではなく町に貢献してくれる人を増やそうという取り組みについて、町の住民はどう思っているのでしょうか。

「吉野に憧れて、色んな期待を持って訪れてくれていると思う。それをしっかりあたたかく迎えてあげないと。大切にしてあげないと、その第一歩をね。」(福西和紙本舗 福西正行さん)

お手伝いを終えた酒匂さん、SNSに感想を載せました。

「楽しかったです。きょうは障子を張らせてもらったので、そこで使った和紙を作っているところを見学させてもらって体験させてもらったというのと、日本の伝統を守っていかないといけないなという感想を。」(酒匂南実さん)

吉野の魅力を生の声で発信してもらうことも町にとって大きなメリットです。

月の半分を吉野で過ごすファンも

酒匂さんより先に宿泊所に泊まっていた澤木久美子さん(59)。彼女は吉野町のファンになって、1か月前から自宅のある神戸と吉野を行き来するようになりました。豊かな自然と風情ある町並みに魅了されたと言います。

「建物とか町の空気感とかがいい感じだなと。吉野川の風景がいいなとちょっとずつ一人で来るようになって。」(澤木久美子さん)

澤木さんは神戸市内に建築事務所を構える一級建築士です。古い家のリノベーションを手掛けることも多く、地域と調和した家づくりが得意です。吉野町で問題になっているのがたくさんの空き家で、澤木さんはこれをシェアハウスとして活用できないか住民たちと一緒に考えています。

「吉野町に移住までいかないくらいの人、拠点を持ちたいとか移住できるかなと思っている人がお試し的に。そんな方法はないのかな。」(澤木久美子さん)

澤木さんは月の半分を吉野で過ごし、自らの技術を生かして町に貢献しています。

歓迎会、祭り…地元に溶け込んでいく

夜、初日のお手伝いを終えた酒匂さんのために住民らが歓迎会を開いてくれました。

(酒匂さん)「吉野の魅力、いいところは?」
(住民の男性)「宮滝遺跡とかあるけど、それは別にしてこの家庭的な感じ。」
(酒匂さん)「きょう緊張していたけど、みなさんの優しさに触れて心がとけました。」

滞在3日目、この日は年に一度の夏祭りです。ここで30年以上続く名物が『流しそうめん』。子どもたちに交じって酒匂さんも挑戦します。酒匂さん、顔なじみの人も増え、すっかり地元に溶け込んでいました。

(住民の女性)「1人で住んでいるから泊めてあげるのに。」
(酒匂さん)「泊めてください、また来るんで。」
(住民の女性)「こんな若い子と接するといいやん。私ら年配でね、年寄りの仲間やから。」

生まれて初めてやってきた吉野町。誰一人知り合いがいないこの町で雄大な自然に癒され温かい人情に触れるうち、酒匂さんはどんどん吉野の魅力に引き込まれていきました。

「観光で行くとここまで人と繋がれない。繋がりが深いこと、ご近所とか家族みたいな感じなのは東京ではないのかなと思います。」(酒匂南実さん)

「第二のふるさと」となるか…

最終日、5日間のお手伝いを終えてついに吉野とお別れです。

「観光と違うのがご飯会や交流会をしてもらったり優しくしてもらったり、恩返しをしたいという気持ちになりました。受け入れてくださっているので、第二のふるさとになったらいいなと、これからいっぱい足を運びたいです。」

宿泊所を出ると町の人が酒匂さんを見送りに来ていました。

「お疲れ様でした。また来て下さいね。気をつけて帰ってください。ありがとう。」(住民の女性)

今のところ、吉野町の人口減少への特効薬は見つかっていません。でも町は「第二のふるさと」と慕う人が増えれば、未来に変化があるかもしれないと期待しています。

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