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【特集】選管職員が起こした死傷交通事故...背景に月約230時間もの時間外労働

2019年08月22日(木)放送

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おととし、兵庫県川西市の選挙管理委員会の職員が居眠り運転で起こした交通事故で、1人が死亡、4人が重軽傷を負った。裁判の中で職員は、ひと月で約230時間もの残業を行うなど過労状態だったことが認定されたが、なぜ、このような異常な働き方をしていたのか。

遺族「フォーカスすべきは過重労働」

母親の墓石に手を合わせる40代の男性。この男性は2年前、66歳だった母・細川千賀子さんを交通事故で失った。

「あまりにも突然すぎて。僕自身ももっといろんなことをさせてあげたらよかったなぁと。本人ももっとしたかったやろうなぁ。」(細川千賀子さんの長男)

おととし10月、兵庫県川西市の県道で、選挙管理委員会事務局に勤務する50代の男性職員が運転していた軽乗用車が、突然、対向車線へとはみだし、細川千賀子さんが運転する車などに次々と衝突。細川さんが死亡し、4人が重軽傷を負った。

職員と同じ部署の同僚の勤務日報を見ると、おととし、2017年10月は毎日朝早くから夜遅くまで勤務していたことがわかる。土日も休みなしだった。神戸地裁はこの日報などから、事故を起こした職員のひと月の残業時間が229時間以上だったと認定した。そして裁判では、事故で死亡した細川さんの長男も証言台に立った。

「遺族として証人尋問に出て、刑事罰はいらん、必要ないと言った。それよりも選管のシステムを改善してほしい。フォーカスしないといけないのは過重労働。」(細川千賀子さんの長男)

長男は職員の無罪を求めたのだ。神戸地裁は今年7月、事故の原因は居眠り運転だったとして過失運転致死傷の罪に問われた職員に対し、禁錮2年執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。判決の中で裁判官は「事故の責任を個人にのみ帰することは酷というべきである」と述べた。

「裁判所の方は事件背景を酌んでくれている。非常に寛大な判断をいただいた。」(男性職員の弁護人 岩田和久弁護士)

区割り変更・台風接近…業務に忙殺された職員

一体なぜ、1人の職員に過酷な勤務を負わせていたのか。川西市のトップに聞いた。

「さまざまな選挙に関わる事務というのは通常2か月から3か月かけて行う。ただ、突然の解散ということで、これは日本全国そうかもしれませんが、それを1か月でやらなければならないという状況であった。」(川西市 越田謙治郎市長)

おととし9月、安倍首相は「消費税増税分の財源の使い道の変更について国民の信を問う」などとして、衆議院を解散した。選挙管理委員会の職員たちは突然の解散に十分な準備をすることができなかったという。さらに…

「兵庫の5区・6区という、選挙区が分かれる初めての選挙事務を行うという立場。また、寸前で大きな台風が近づいてきているというそういう状況があった。」(川西市 越田謙治郎市長)

川西市ではこの時、一票の格差を是正するために区割りが変更され、それまで1つだった選挙区が2つに分かれ、業務量が倍増したという。さらに、事故を起こした職員は期日前投票の担当をしていたが、投票日に台風(2017年台風21号)が接近していたことから期日前投票の数が大幅に増え、業務に忙殺されていたというのだ。そして市は、通常であれば有罪判決を受けた職員は懲戒免職とするところを、はるかに軽い停職6か月という処分に留めた。

「われわれとしていくら謝ったからといって取り返しのつかないことをした、この事実は変えることができない事実なので、しっかりとした再発防止に取り組んでいく。」(川西市 越田謙治郎市長)

応援入ったが時間外は240時間に上った明石市選管

過酷な勤務を強いられているのは川西市の選挙管理委員会だけではない。

「3月1日から31日まで次の統一選も含めて1か月間ずっと残業状態だったので、約240時間。かなり多かったと思います。」(明石市選挙管理委員会事務局 佐野彰彦事務局長)

今年1月、兵庫県明石市の泉房穂市長が職員に対して「(建物に)火をつけて捕まってこい」と暴言を吐いていた不祥事が発覚。3月には辞職に伴う市長選と統一地方選が並行して実施された。しかし、これらの選挙を取り仕切る明石市の選管職員はたったの6人。これまでに実施された選挙でも200時間程度の残業が発生していたため、3月の選挙では他の部署から6人の応援職員を得たにもかかわらず、選管職員の時間外労働は平均で240時間に上った。

「投票所を一か所予約するの忘れてましたということになったら大変なことになる。そこは選管の職員が責任をもってやらなければいけない部分。」(明石市選挙管理委員会事務局 佐野彰彦事務局長)
Q体力面、健康面は大丈夫だった?
「しんどいことはしんどかったですけどね。しんどかったのはしんどかったですけど、自己管理ですから。」

選管職員は専門的な知識や経験を必要とするため、応援が来ても任せられる仕事は自ずと限られてしまうのだ。

Qそもそも選管職員を増やすことはできない?
「そりゃ担当部署としては非常に助かりますけどね。助かりますけど、まず無理でしょうね。(選挙のない)普段も含めて常に増やしておくというのは。人材の使い方としては無駄になるんでしょうね。」(明石市選挙管理委員会事務局 佐野彰彦事務局長)

労基署の管轄外 「労働時間の管理が立ち遅れている」

労働問題の専門家は、背景には地方公務員特有の事情があると指摘する。

「これだけの長時間労働があった時に、民間労働者だったら労働基準監督署に申告していけば会社に対する勧告なり指導がされます。あるいはそれに従わなければ罰則があります。ただ、地方公務員の場合は、監督署に行ってもうちは管轄外と言われてしまう。」(松丸正弁護士)

つまり、民間企業に勤めている場合は労働基準監督署に申告することができるが、地方公務員は労基署の管轄ではないため、県の人事委員会や市の公平委員会が監督を行っている。しかし、労基署の様に強制的な権限がなく、せいぜい是正措置を要求することくらいしかできない。

「地方公務員の方が労働時間の管理という点では行政の側がまだ十分な認識がない。民間の方が働き方改革を通じて時間管理をしなくちゃいけないという意識がある。地方公共団体の方がまだ立ち遅れているなという感じがします。」(松丸正弁護士)

選挙のたびに長時間労働を強いられる選管職員。自治体は川西市で起きた事故を他山の石としなければならない。

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