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【特集】大切な人を突然亡くし残された家族...喪失感と向き合う「グリーフケア」

2019年08月20日(火)放送

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いつかは誰もが経験する大切な人との死別。地域のつながりやお葬式が縮小している現代では亡くなった人について語る場が減り、悲しみとの向き合い方も変化してきています。大切な人を失い、残された家族がその喪失感と向き合うための活動「グリーフケア」の現場を取材しました。

最愛の妻が突然この世を去って…

関西在住の男の子のきりちゃん(仮名・3)とお父さんの山本つよしさん(仮名・39)。夏休みに入り、きりちゃんのお母さんが生まれ育った沖縄にやって来ました。

「おかえり~!」(祖母)

きりちゃんのおばあちゃんとひいおばあちゃんが、2人を温かく出迎えます。でも、きりちゃんのお母さんはもういません。

「この写真の場所は、この(沖縄の)家の縁側ですね。」(山本つよしさん)

妻のゆりこさんはきりちゃんを生んだ約20日後に突然、病気で息を引き取りました。山本さんにとって沖縄は、亡くなったゆりこさんとの思い出が詰まっている場所です。

「こっちに来たら、妻を感じられる場所なので。(妻と)一緒に来て見せたかったというのは一番あって。『うちの妻のがんばって産んだ子どもだよ』って報告しに来たかった。」(山本つよしさん)

最愛の妻が突然この世を去ってしまった悲しみは、山本さんの世界を180度変えてしまいました。

「お宮参りとかも遺影を持ってやらざるを得なかったんです。街を歩いていても、ずーっと、ずーっと感じますけどね。いたら、いたらって。息子のこと以外で今までどおりみたいに自分が笑う、笑えるっていうことは、まあないです。」(山本さん)

山本さんは妻との生活を手放すのがいやで、ゆりこさんの持ち物は今もそのままの状態で残しています。

一番辛いのは気持ちを周りの人に理解されないこと

ゆりこさんが亡くなった時、きりちゃんは生まれたばかり。3歳のきりちゃんにとって、お母さんは「写真の中の人」です。

「お母さんにあいさつしてきて。ちゃんとおててあわせて。」(山本さん)

山本さんは3年間、きりちゃんを育てることを生き甲斐にしてきました。離乳食の勉強から始まり、料理教室にも通って1歳の誕生日にはケーキを手作りしました。ゆりこさんが亡くなってからは毎日欠かさず写真を撮り、日記もつけています。

「子育てがあるから生活が成り立つみたいな感じでしたね。子育てが自分からなくなると、もう何もないというか、何をしていいかがわからない。息子の子育てをすることで、何かこう生きていたっていう感じやったんで。」(山本さん)

ゆりこさんが亡くなって3年が経った今でも、深い悲しみは消えません。一番辛いのは、この気持ちを周りの人に理解されないことです。

「こういうことを話す機会がないし、聞かれることもないので。どこまで人にこういうことを言えばいいのかが、ちょっとわからなくて。」(山本さん)

“グリーフ(喪失)”サポートする必要性

大切な人を亡くしたことで、気持ちが沈んでしまったり重い病を患ったりと様々な反応が起こることを「グリーフ(喪失)」といいます。専門家は、いま改めてグリーフに陥る人たちをサポートする必要があると訴えます。

「(昔は法事など)身近な人同士で体験を語り合ったり、故人の思い出を語り合ったりしていたと思うんですけど、最近葬儀とか宗教的な活動っていうのがどんどん形骸化している、縮小していっている中で、身近なところでの支えが弱くなっている。」(関西学院大学人間福祉学部 坂口幸弘教授)

特に、日本で50歳までに配偶者の死別を経験する人は全体の0.5%以下(男性0.1%、女性0.4%)。(国勢調査人口等基本集計・総務省統計局より)若い世代の人が同じ経験をした人と出会うのは非常に難しく、グリーフの状態についてなかなか周囲の理解を得にくいのが現状です。

夫との死別…突然変わってしまった日常

夫との死別によって、孤立感を深めている女性がいました。兵庫県尼崎市に住む、りなさん(25)。2歳のしゅりちゃんと1歳のときちゃんを1人で育てています。会社員だった27歳の夫は昨年末の夜遅くに忘年会から帰ってきて、翌朝、目を覚ますと息を引き取っていました。

「信じられなくて夢でも見てるんかなみたいな。(亡くなって)3か月目くらいは何していたか覚えてないです、今振り返っても。毎日何して過ごしたのかなとか。楽しいとかおいしいとかいう感情があんまりなかったです、抜け落ちてました。」(りなさん)

突然変わってしまった日常。専業主婦だったりなさんは、まだ幼い2人を育てるため8月から仕事を始めました。

普段は明るく振舞いますが、気持ちが滅入り自分を責めてしまう日も多いといいます。りなさんの周りにも同じ経験をした人はおらず、本音を言える人がいません。

「(友達は)何言っていいかわからないし向こうも困っちゃう、話が重たすぎて。だからあんまり言ってもあれやな、気を使わせるなと思って言えなかったり。パパ(夫)の親とかには、言うと心配されちゃうので。あんまり落ちたこと言うと、ほんまは弱音を吐きたい時もあるんですけど、あんまり心配かけたらあかんと思って言えない。」(りなさん)

伴侶を亡くしたひとり親同士が集まる会「エミナル」

こうした状況を受け8月、突然伴侶を亡くして孤立感を深めたひとり親同士が集まる会「エミナル」が立ち上がりました。この会は「グリーフケア」という活動の一つで、同じような経験をした人同士が経験を分かち合ったり情報交換をしたりして、生きていくための知識を得ることを目的としています。山本さんやりなさんも子どもたちと一緒に参加しました。

(山本さん)「(妻と死別したと)自分から言います?聞かれたら言うんですけど。」
(他のお父さん)「基本的には言わないです。」
(他のお父さん)「あえては言わないですね。」
(山本さん)「やっぱり言わない?言いづらいですよね、聞かれたら答えやすいんですけど。」
(他のお父さん)「言われても、向こうも困るじゃないですか。」
(山本さん)「シングルとは言えるんですけど。」
(他のお父さん)「たぶんシングルやと、みんな離別の方を思い浮かべますよね。」

あっという間に打ち解けていく参加者たち。

(山本さん)「一番いい時に亡くなったから…」
(りなさん)「子どもの成長を一緒に見る人がいなくなったという事実が一番つらい。」
(山本さん)「今で(亡くなって)3年になる。」
(りなさん)「3年くらい経ったら少しは泣く頻度が落ちるのかな?」
(山本さん)「泣く頻度は落ちるけど…というか、子どもいるから結構忙しいじゃないですか、バタバタバタバタ。」
(りなさん)「病んでる暇、日中ないですよね。」
(山本さん)「だから逆に助かった。」
(他のお父さん)「子どもいなかったら…」
(他のお父さん)「やっぱりみんなそう思うんですね。でも、それが普通じゃないのかというのもわからなくて…」

大切な人の死を悲しむ気持ちや子どもを大切に思う気持ちを共有し、参加者たちには少しずつ笑顔が見え始めました。

後日、山本さんに今の気持ちを聞いてみました。

「やっぱりずっと喪失感はあるし、それがなくなるものではないと自分では思っているので、もうそれと付き合うしかないというふうに思っているので。この中でどう生活するかっというふうに思ってるので。」(山本さん)

悲しみは、乗り越えるものではなく、共に生きていくもの。同じ境遇の人たちと時々に会って、支え合おう。少しずつ、そう思えてきました。

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