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【特集】「写真洗浄」で"こころの復興"へ 被災地から広まるボランティア活動 

2019年07月23日(火)放送

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被災地で、泥水などで汚れた写真を洗って持ち主に返す活動が続けられています。東日本大震災で培われたノウハウが、去年、西日本豪雨の被害を受けた岡山県倉敷市の真備町にも受け継がれていました。「写真洗浄」による“こころの復興”を取材しました。

がれきの中から見つけ洗って返却

去年7月の西日本豪雨で大きな被害を受けた岡山県倉敷市の真備町。約1年がたったいまも大規模な復旧工事が続いています。至る所で建物の解体や建て替え作業が行われていますが、営業を再開する店舗も出てきました。1年前、真備町は全体の3割が水に浸かり、50人以上が亡くなりました。

神戸市で雑誌などの編集をしている藤本智士さん(45)が、工事が進む真備町を訪れました。

「ちょうどいま解体の時期なんですね。こういう新しい家もあるし、逆に出て行っちゃう人も多いんでしょう。」(藤本智士さん)

藤本さんは東日本大震災でのある活動を1冊の本にまとめました。『アルバムのチカラ』では、がれきの中から見つかった写真やアルバムが持ち主や関係者の元へと返される様子を描いています。写真はボランティアが1枚1枚きれいに洗っていました。本を書くきっかけとなったのは、懸命な救助活動のなか自衛隊員がとった行動でした。

「切羽詰まった状況のなかで、パソコンあろうがSDカードあろうがCD‐ROMあろうがそんなものは踏んで人命救助するのがやっぱり基本だけど、アルバムとか写真が落ちていたら、やっぱりさすがに端に寄せたんですよね。その姿にも感動したし、これやっぱり伝えなきゃいけないなって。」(藤本智士さん)

SNSで発信され全国からボランティア

西本豪雨で大きな被害を受けたここ真備町でも同じような活動が行われているということで訪れました。ここでは週に4日、ボランティアの人たちが集まって「写真洗浄」をしています。持ち込まれるのは自宅の解体現場から見つかったものが大半です。被災した人が写真のことを考えられるようになるまでには長い時間がかかるのだといいます。

写真の表面は有機物であるゼラチンでできているため、泥などに含まれるバクテリアに食べられ端から溶けていきます。写真洗浄はまず、アルバムから取り出した写真を水に浸しながら汚れをこすり取ることから始め、その後、1枚ずつ干して乾燥させます。仕上げにエタノールで拭きアルバムに収めて完成です。この活動の様子はSNSで発信されていて、全国からボランティアが訪れています。

「別に大変じゃないです。私けっこう1回やり始めたら止まらないタイプなので。きれいにして、渡して喜んでもらいたい。」(島根県から来た大学生)
「年配の方の生きる糧になると思うので、そっちを残していく作業もしてみたいなと参加しました。」(大阪からの参加者)
「いま作業しているこの(写真の)家族は、だんだん小学生に…また赤ちゃん(の写真)に戻ったけど、小学生になっている写真があって、すごく成長を見て楽しいです。人の子ですけど。」(地元のボランティア)

傷ついた持ち主の“心も洗う”

この活動の発起人は、東日本大震災で写真洗浄のボランティアを経験した福井圭一さん(48)で、その時のノウハウを伝えています。

(福井さん)「(真備町は)持ち主がいて、自分の写真を持ってくるので、(東日本大震災とは)ちょっと違う。持ち主不明の写真をやっている時と。」
(藤本さん)「『顔が見えるからあの人たちにちゃんと返さないと』という責任感はより強まる?」
(福井さん)「それはあるかもしれない。」

持ち込まれる大切な思い出。福井さんは、写真だけでなく傷ついた持ち主の心も洗っているのだといいます。

そしてこの日、預けていた写真を受け取りに夫婦がやってきました。

(妻)「もう取っておいてもいけないかなと思って(写真を)捨ててしまった。もったいないことをした、こんな(写真洗浄が)あったら。」
(夫)「孫の写真も全部じゃから。」
(妻)「七五三の写真から入学式の写真からみんなもらっていたんです。それを知らんから捨ててしまった。」
(夫)「わしらの写真いうたら何もない。」

戻ってきたのは、娘の卒業アルバムでした。

(夫)「これこれ、これが娘。残ってる。」
(妻)「喜ぶわ。」
(夫)「ここひっついてなかったんじゃな。こりゃ良いように写っている。」
(妻)「ありがとうございます。もうダメかもと。」

夫婦の自宅は取り壊され、いまは倉敷市内の仮設住宅で暮らしていますが、ゆくゆくは住み慣れた真備町に帰ってくることが目標です。

「何よりもちろん人命とか建物の崩壊とかが最優先になるのは当然だけど、本当にその次の瞬間、一番大事なのは思い出。写真たった1枚残っているだけで、堂々と自分の過去の話ができるという。自分自身のアイデンティティーみたいなところに写真はあるので。」(藤本智士さん)

作業が追い付かず、これまで依頼された約330件のうち、返却できたのは3分の1。来年7月までに、いま預かっている写真は全て返却したいとしています。

「写真を残せる方法を広めていきたい」

真備町の活動は関西にも広がっています。

「真備町から送られてきた写真が2200枚ちょっとあります。束になって送られてきます。」(篠原佳代子さん)

大阪市内にあるカフェでは6月末から、真備町から郵送された写真を洗浄して送り返す取り組みが始まっています。真備町で写真洗浄を体験した篠原佳代子さん(53)が呼びかけ人です。

「もし今後、大阪や大阪以外でも被災して写真がこういうふうになってしまった場合でも、残せるんだという方法をより多くの人に広めていきたいと思ったので。」(篠原佳代子さん)

「(写真洗浄の)ノウハウをオープンソース(一般公開)にしてシェアしたい。これから日本中いろんなところで災害が起きる、それはもう間違いなく起きるだろうから、その時にまず写真を救出することの大切さというのを、こういう活動の中で伝えられたらというのは全員が言っていること。」(藤本智士さん)

被災地から全国へと広がる写真洗浄。生活の再建とともに“こころの復興”が進んでいます。

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