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【特集】"闇に消えた"仏像たち ブームの裏で「無住寺」が狙われる...対策は?

2019年07月18日(木)放送

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お寺に収められている仏像が、ある日、突然消える。関西2府4県でこの5年間あまりに少なくとも214点の仏像などの文化財が盗難の被害にあっていることが警察や自治体への取材でわかった。誰が何のために仏像を狙うのか、闇取引される実態を追った。

“帰るべき場所”が見つからない盗難品

和歌山県立博物館で開かれた仏像の展示会。1か月間の会期中の来場者数は約1万人で、通常の1.5倍と人気を集めた。今、仏像がブームになっているという。

「仏像女子とか仏像ガール、あるいは観音ガール、いろんな形で言葉が出ていますが、仏像に対して癒しを求める方が今増えているという印象を持っている。」(和歌山県立博物館 大河内智之主任学芸員)

しかしその影で、この博物館のバックヤードにはある課題が。2階に置かれていたのは、仏像など39点。中には腕が壊れた無残な姿の仏像も。これらの仏像はすべて約10年前に盗まれた盗難品だ。犯人が捕まり警察に発見されたものの、被害届が出ておらず、どこの寺のものなのか不明で、帰るべき場所がまだ見つかっていない。

「どこかのお寺、お堂、神社、小さなほこら、そういうところでまつられていて盗まれた。悲劇の仏像と言えるのではないか。」(大河内智之主任学芸員)

被害多発の和歌山で狙われたのは…

和歌山県では仏像を狙った窃盗が多発。この10年間、県内だけで262体もの仏像などが盗まれていたことが判明、各地の寺や神社で仏像や神像がこつ然と姿を消していた。なぜ盗まれるのか…取材班が訪れたのは、和歌山県白浜町の「梵音寺」。この寺では本尊の仏像を盗まれた。盗まれたのは、南北朝時代につくられた白浜町の指定文化財「釈迦如来坐像」。盗難に気づいたのは今年2月中旬の朝で、寺の勝手口の鍵が壊され、厨子の中を見ると、あるべきはずの仏像がなくなっていた。

「まじかよ、こんな田舎でもこんなことあるのかというのが最初の印象。信仰の対象というか、これ(釈迦如来坐像)が中心としてうちの梵音寺というのがあると思う。ないとなれば、何に手をあわせていいのかわからない。」(檀家総代長 小松原昭太さん)

この寺が狙われた理由については…

「やっぱり『無住寺』を狙うんだなと感じました。」(小松原昭太さん)

小松原さんの語る「無住寺」。実はこの「梵音寺」、住職が長年いない無人の寺となっていた。この10年間に盗まれた262体の仏像も、ほとんどが無人の寺から盗まれたという。背景にあるのは地方で急速に進んだ過疎化がある。檀家不足が進んで経営が立ち行かなくなり、常駐する住職が不在となる寺が増えているのだ。

梵音寺の仏像は盗難から1か月後、意外な場所で見つかった。そこは寺から50km以上離れた国道沿いの駐車場。なぜ放置したのか、犯人が捕まっておらず真相はまだわかっていない。今、仏像は住職が常駐している別の寺に預けられている。

「野ざらしというのはちょっとかわいそうだった。(盗まれた仏像は)ほとんどが出てこない。今回出てきたと。それが一番ありがたいというか助かったというか。」(宝勝寺 清水大門住職)

オークション→転売くり返され闇に

盗まれた仏像はどこへ行くのか。和歌山県立博物館の学芸員は去年6月、インターネットのオークションサイトで盗難にあった仏像を偶然見つけ、警察に通報した。出品されていたのは、和歌山県岩出市の寺で盗まれた「毘沙門天立像」。5日間で入札が殺到、数十万円まで値段が上がり、あと2日で落札されるところだった。仏像を美術品として購入するコレクターは数多く存在し、盗まれた仏像は古美術商などに売られて闇から闇に消えるケースがほとんどだという。関係者によると、和歌山県で盗まれた仏像は東京へ。そこでオークションにかけられた仏像を香川県の古美術商が購入、インターネットで販売していたという。盗難からわずか2か月の間で転売をくり返されていた。一方、盗難品と知らずに販売していたとしてどの業者も罪に問われなかったという。

「現状どれが盗品なのかということをきちんと間違いなく判断するのが難しい。たやすく換金ができて利益を得られるので、知らないふりをして売り抜けている現状もあると思わざるを得ない。」(和歌山県立博物館 大河内智之主任学芸員)

「守るため」3Dプリンターの技術で対策も

危機感を強めた寺や神社では対策が始まっている。和歌山県九度山町の槙尾山明神社は、数十年、無人の状態が続いている。

「箱に入れてあって、安置してあったんです。(Q箱に何が入っていた?)ご神体そのもの。」(槙尾山明神社・明神会 今川年弘さん)

この神社では、長年、箱の中で安置していた神像が平安時代のものだったことが去年、新たに判明。しかし、過去に木製の狛犬が2体盗まれたほか、さい銭泥棒も頻発。神像を守れるか不安だった。さらに、神像が安置されているお堂の鍵も…

「鍵なんて普通にスッと開けられる。たいそうな鍵やっているけども。」(今川年弘さん)

盗まれないために人を常駐させるなどの対策もできず、保存会では“ある決断”を下した。それは、3Dプリンターの技術を使った神像のレプリカの制作。今、最新の技術を使えば精巧なレプリカの制作が可能になる。例えば2つの仏像(※写真参照)、左側が3Dプリンターを使って制作したレプリカだが、大きさや形はもちろん、経年劣化による傷、そしてくすんだ色まで再現している。保存会では本物の神像は博物館に預け、レプリカをお堂に安置することにしている。「本物を安置したい」という声もあったが、話し合いの末、決断したという。

「(Q苦肉の策?)そうですね。盗難は起きたらどないにもならん。立派なものがあるとわかってきたら、そういうおそれがある。守るためにちゃんとしていくことが自分らに課せられた使命だと思う。」(今川年弘さん)

相次ぐ文化財の盗難。専門家は現状では盗難に歯止めがかからないと警告している。

「これから先は過疎化高齢化の中で、地域自体が文化財を守ることが難しい中で、これまで以上に行政あるいは警察も含めて行政のサポートですね、これまでとは違う形でみんなで守るという形をより推進していく対策が喫緊の課題になっている。」(和歌山県立博物館 大河内智之主任学芸員)

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