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【特集】ひきこもる中高年と親の苦悩 容易ではない「8050問題」

2019年07月05日(金)放送

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今年5月、神奈川県川崎市で児童ら20人が殺傷される事件がありました。そして6月には東京・練馬区で父親が44歳の息子を刺殺する事件もありました。いずれも「8050問題」が深く関わっています。80代の親と50代の引きこもる子どもが社会から孤立する「8050問題」。事件から約1か月。当事者や家族が抱える苦悩を取材しました。

「ひきこもりから脱するのは容易ではない」

「どうしても人も怖いし出られないし、というのがあったので。怖いです、人が怖いです。」(島田誠さん・去年3月)

去年3月に取材した兵庫県内に暮らす島田誠さん(当時44)は、小学生のときのいじめをきっかけに周囲とうまく付き合えなくなりました。27歳の時に職場を退職して以降、13年近く自宅に引きこもりました。しかし、老いていく親をみて、焦りを感じ始めました。

「親がだんだん『しんどいしんどい』というのが聞こえてくる。それが恐怖となっていって。」(島田誠さん・去年3月)

背中をおされるように家を出て、ひとり暮らしを始めた島田さん。去年1月には8050問題の当事者の会を発足。人前で体験談を話せるようになるなど、外の世界へと踏み出し始めていました。

ところが先月、記者が家を訪ねると…日中もカーテンを締め切った部屋の中で過ごす島田さん(45)の姿がありました。

「あの人にも嫌われている、この人にも嫌われているというのがあって。だんだん自分もそれから遠のいていく。そういう生活になってしまって、いま完全に孤立化してしまっている状態です。」(島田誠さん)

今年に入ってから、もう半年くらい家に引きこもる生活が続いていました。就労支援施設に通っていましたが、なじめず行けなくなりました。一度外へ向き始めた心がまた内向きに…島田さんは”ひきこもりから脱するのは容易ではない”と話します。

「引きこもりが長くなるとまず”人間関係に慣れる・社会に慣れる”なんです。いきなり就職はちょっと難しい。やっぱりメインが『人間関係』、『社会』がメインでないと難しいのではないか。」(島田誠さん)

川崎市で児童ら20人が殺傷された事件や東京都練馬区で父親が息子を刺殺した事件。引きこもる中高年と高齢化する親の「8050問題」がクローズアップされるようになりました。内閣府の調査では、40歳から64歳のひきこもり当事者は約61万人にのぼることがわかりました。

当事者親子の胸の内

8050問題の当事者たちは今どんな思いで過ごしているのか。兵庫県のある親子が取材に応じてくれました。77歳の母親と49歳の息子Aさんの2人暮らし。父親は他界しました。息子のAさんは小学生の時に受けたいじめがきっかけで周りとコミュニケーションをとるのが苦手になったといいます。高校を中退して職を転々としながら、仕事をやめる度に家に数年単位で引きこもる生活でした。

「なんか自信をなくしたんですね。やっぱり履歴書を書いたら、転々としているでしょう。現実逃避ですよね。ぼーっとテレビを見たり。」(Aさん)

母親は息子のことを相談することもなかなかできず、途方にくれる日々だったといいます。

「私の育て方が悪かったのかなとか、いろんな反省をしたり。毎日をどうして生きていこうかなと…主人はなくなっているし。」(母親)
「そりゃ働きに行きたいけど、よう行けへんし、自分のイライラをお母ちゃんのせいにした。言った後、かわいそうやと思いながらも、偉そうに言ったな。『向こう行け』とか。」(Aさん)

今回は4年半のひきこもり期間を経て、Aさんは少しずつ社会と接点を持とうとしています。派遣会社に登録してイベント会場の設営などの仕事をしながら、介護現場での就職を目指す日々です。

「ちょっとずつやけど、人としゃべるようになった。エレベーターに乗るのも怖かったけど1回乗ろうかと思って乗れて…『また会おうね』と言ってくれる人もいるなと思って。」(Aさん)

事件だけでなく“8050問題”に目を向けて

25年以上、京都を中心にひきこもりの当事者と家族を支援してきた山田孝明さん。事件以降、頻繁に当事者からの相談がくるようになりました。

「突然訪ねて来たり。実はきのうの夜も、深夜3時に。」(市民の会エスポワール京都・主宰 山田孝明さん)

山田さんは京都の町家を借りて、当事者が集える「居場所」を作っています。8050問題の解決に大切なのは、家から出ても安心して過ごせることや、話ができる場所があることだと考えているからです。

「めったに言わないけど、みんな死にたいと思っている時期がいっぱいある。(ひきこもっている)何年かに。だからやっぱり”生きててよかったね”と。そういうメッセージが出せる場所。受け取れる場所。」(山田孝明さん)

この日来ていた44歳の男性は20年近く実家で引きこもってきましたが、事件をきっかけに、はじめて外にSOSを発信しようと思い山田さんに連絡を入れました。

「僕自身ああいう事件を起こそうと全く思わないが、8050問題を意識して。僕自身、父が78歳で母が75歳なんですけども。親がこのまま先に亡くなったら僕自身経済的に立ち行かないし、さすがにこのままではまずいなと実感した。」(44歳男性)

山田さんは、事件だけでなく「8050」問題にもっと目を向けてほしいといいます。

「こういうきっかけでないと、社会の中で8050問題が社会化しないと思います。どこかでいろんな人が追い詰められて、ひっそりと生きているということをね。やっぱり知らないとね。」

孤立してきた「8050」の当事者たち。息の長い寄り添いが大切です。

(「Newsミント!」内『特集』より)

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