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【特集】"夢が消え借金が残る"ブータン人留学生の現実 暗躍する留学ブローカー

2019年07月04日(木)放送

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“幸せの国”とも呼ばれるブータンから700人以上の留学生が来日している。しかし、留学生の多くは母国の斡旋業者と虚偽の契約書を結んでいたことが発覚し、だまされたと訴えている。日本での就職を夢見て多額の借金をしてまで留学したブータン人の実態と暗躍する留学ブローカーに迫る。

日本語学校卒業…残った多額の借金

今年3月、福岡市内の入国管理局を訪れたブータン人留学生たち。2年間通った日本語学校を卒業し、この日、在留期限があと1週間に迫っていた。

「親たちはブータンに帰ってと言うけど、借金があるので残っています。」(サンゲ・チョキさん 28歳)
「できれば日本で就職して働いて借金を払って帰りたいです。」(ソナム・ぺルドンさん 28歳)

こう話す彼女たちの在留資格は「留学」で、就職して働くことはできない。しかし、多額の借金を抱えていて母国には帰れないというのだ。ブータンは日本から離れること4000キロ以上、人口は大阪府堺市ほどの小国だ。近年、若者の失業率の高さが社会問題となっていて、2年前から就職を前提とした日本への留学が国の主導で始まった。

日本人ブローカーを通じて来日

ブータンの労働人材省は地元の留学斡旋会社「BEO」と提携し、留学生を募った。BEOは日本人ブローカーのE氏と契約を結んでいて、東京・大阪・兵庫・福岡など全国の日本語学校へ4回に分けて計700人以上の留学生を送り込んだという。大卒の給与が3万円ほどのブータンで、彼女らは1年分の学費やBEOへの斡旋料など約120万円を銀行から借り入れて留学していた。

「日本に来る前にBEOの人たちは私たちに、日本に行って日本語学校を卒業したら『就職できます』と言った。でも日本に来て就職の話は全然ないです。」(ソナム・ぺルドンさん)

サインした“2枚目”の契約書

留学生たちがBEOと交わした契約書には「2年間の日本語学校を卒業すると、年間230万円から460万円ほど稼げる仕事を斡旋する」と書かれている。留学の半年ほど前に契約書にサインしたというが、多くの留学生は出発間際になって2枚目の契約書にもサインしていた。そこには「N2」という日本語の資格を得なければ就職先を斡旋できないと追加されていたが、学生たちはほとんど内容を確認していなかったという。こうした契約は詐欺と言えるのか、今回の問題を調査している弁護士は…

「最初の契約書では就職ができると保証しているような形だった。やっぱりだまして留学させたと言われてもしょうがないと思います。送り出しのブローカー、日本側のブローカーになることで、留学生を食いものにして儲けることができる一種の貧困ビジネスだと思います。」(ブータン人留学生問題を調査 指宿昭一弁護士)

来日しているブータン人留学生のうち、約500人が今年10月までに在留期限を迎えるとみられている。期限のギリギリまで支援者と共に就職先を探し、就労ビザを申請して結果を待つしかない。

「ダメもとで最後にアタックする感じです。非常に難関だと思っています。日本語能力があんまり伸びていないし、その中で就労ビザを得るのは難しい。」(ブータン人留学生を支援 菅由美子さん)

こうして支援を受けている学生はごくわずかで、ほとんどが卒業と共に帰国を余儀なくされているという。

「東大の受験英語より難しい」=N2のハードル

大阪市中央区にあるファースト・スタディ日本語学校。卒業を来年に控えたブータン人留学生らが日本語レベル「N2」に合格するため、アルバイトを管理されるなどあえて厳しい環境に身を置いている。この学校も当初は日本人ブローカーのE氏からブータン人留学生の紹介を受けていたが、問題を把握して以降は関係を絶っているという。

「N2ってひと言で言いますけど、TOEICで言えば800点台です。ということは東京大学の受験英語より難しい。なのにもかかわらず、N2を取れたら就職できますよというのは、裏を返せば『どうせみんなアルバイトばっかりしてN2取れないでしょ、だから私たちは就職の斡旋をできませんでした』という大義名分が成り立つ。ここまで計算され尽くしていることなんじゃないかなと僕は思って、後々中身を聞いたときに非常に不快に感じましたね。」(ファースト・スタディ日本語学校 松岡将裕校長)

日本人ブローカーを記者が直撃

では、ブローカーのE氏とはどんな人物なのか。E氏が福島県に住んでいるという情報を入手し、E氏に会うことができた。

(記者)「毎日放送です。多くのブータン人がE氏に嘘をつかれた、だまされたと訴えているが?」
(E氏)「それは嘘です。就職っていうのは、N2になった人が就職できるとブータン側で言った。N3とかN4とかでは就職はできない。それは言ってあります。」
(記者)「ブータン人はそれで納得して来ている?」
(E氏)「それをみんなメモらないで、言ったにもかかわらず日本に来て文句を言い始めた。」
(記者)「N2を取ったブータン人は何人ぐらいいる?」
(E氏)「N2は10人いない。」
(記者)「N2をほとんど取れていないし、制度として破綻しているのでは?」

E氏は、あくまでこの問題は留学生側に責任があるという主張を繰り返した。

“明暗”分かれる留学生たち

今年6月、支援を受けていた一部のブータン人留学生に就労ビザが下りたという連絡が入った。取材班は愛媛県宇和島市へと向かった。その留学生たちは野菜や花を栽培する会社に就職が決まった。会社側は野菜の栽培技術などを教え、今後、アジア進出の担い手として期待しているという。

「英語もしゃべれる、ゾンカ語(ブータンの公用語)もしゃべれる、ヒンディー語もいける。その語学力を生かせればブータンだけでなくてインドの市場を本当に狙えると判断した。」(宇和島食菌 酒井正則部長)

彼女たちもゆくゆくはブータンで会社をつくるという夢ができたという。ここで借金を返しながら新たな生活が始まった。

「こっちに来て本当に幸せになりました。会社もいい会社です。」(ソナム・ぺルドンさん)

「(景色が)ブータンと似ているから、気持ちも良くなっています。」(サンゲ・チョキさん)

しかし、その一方で、多額の借金を抱えたまま帰国せざるをえないブータン人留学生たちもいる。

「帰りたくはないです。ブータンでは仕事が少ないから。借金もそのまま。国に帰っても借金を返すことができるかどうかわからない…できないと思います。」(ゲレイ・ナムゲルさん)

ブローカービジネスに翻弄される小国・ブータンの若者たち。現在、日本でブローカーを規制する法律などはない。本当にこのままでよいのだろうか。

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