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変わる「大学入試」に不安の声 「英語の民間試験」導入

2019年07月04日(木)放送

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今の高校2年生が口々に「不安だ」と頭を悩ませている問題…それは来年度から始まる30年ぶりの大学入試制度の“大改革”です。今年度まで「センター試験」と呼ばれていたものが来年度から「共通テスト」に名前が変わります。そして英語では初めて「民間試験」が導入されることになっていますが、専門家からは「測る能力の違いがあり、不公平なものに基づいて試験を行うことはできない」と反対する声があがっています。受験生たちを不安にさせる“大改革”、一体何が起きているのか取材しました。

変わる大学入試、英語は2つの試験が必要に

6月に大手予備校・河合塾が開いた説明会。会場に集まったのは高校2年生以下の生徒と保護者たちです。今の高校2年生から、「大学入試センター試験」ではなく「大学入学共通テスト」と名前が変わり、特に「英語」は志望校によっては、民間の検定試験もあわせて受ける必要があるため、説明には多くの時間があてられました。

「今まではセンター試験に願書を出しました、それでよかったんですけど、大学入試英語成績提供システムを使う必要があります。」(河合塾のスタッフ)

【中学3年生の男子生徒と父】
(父親)「大変革ということで準備がまず大事やなと思いました。」
(男子生徒)「これからのテストの課題とかを見つけることができてよかったです。」

【高校1年生の女子生徒と父】
(父親)「僕らがやっていた頃と全然違うので、そこはよく相談しながら。」
(女子生徒)「2つも受けないといけないのは大変だし、気が重いですね。」

新制度では基本的には、共通テストの英語だけでなく、”実用英語技能検定”いわゆる「英検」や、大手出版社ベネッセが中高生向けに開発した「GTEC」といった民間の検定試験も受けなければならなくなります。受験生は、自分がどの民間試験を受けるかを大学入試センターに報告したうえで、入試を受ける年度の4月から12月の間に、いずれかの試験を受験。試験の結果は、民間の試験団体から受験生と大学入試センターに報告され、志望する大学には大学入試センターから結果が伝えられるという仕組みです。

「話す」「書く」を強化

では、導入される民間試験とは、一体どんな特徴があるのでしょうか?「GTEC」の検定試験のサンプル問題をパソコン画面で見てみると、「読む」「聞く」「書く」といった問題に加えて、「話す」という問題がありました。この「話す」問題では、英語の質問に対してその場で英語で答えます。サンプル問題に挑戦したリポーターの市川いずみさんは。

「考える時間が意外と短いので、すぐに言葉を出す訓練をしていないと、このスピーキングのテストは難しいのかなと感じました。」(市川いずみリポート)

文部科学省によると、新制度導入の目的は、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4つの技能をバランスよく習得しているかを評価するため。今のセンター試験は「読む」「聞く」が中心となっているため、教育現場で「書く」「話す」が軽視されているという指摘があり、入試を変えることで高校の教育を変えようと考えたのです。

教育現場では前向きにとらえる声も

続いて市川いずみリポーターがやって来たのは大阪市にある大阪府立大手前高校です。

「こちらの教室で1年生の英語の授業が行われているということなんですが、廊下には英語しか聞こえてこないですね。」(市川いずみリポート)

教室に入ってみると…

「すごいです。生徒同士で英語でコミュニケーションとっていますね。先生からの指示もすべて英語で行われています。」(市川いずみリポート)

この高校は9年前に、大阪府から幅広い教養を身に付け社会をリードする人材を育成する「グローバル・リーダーズ・ハイスクール」に指定され、早くから「話す」「書く」も含めた英語教育に力を入れています。

「この授業は英語のリーディング授業だと聞いていたのですが、『聞く力』も必要ですし、もちろん『書く力』、『読む力』、そして生徒同士で話し合う時も英語で行われていますので『話す力』、4つすべての要素がこの授業に含まれています。」(市川いずみリポート)

指導する先生たちは、今回の民間試験導入を前向きに捉えています。

「新テストに変わったからといって慌てることはないかなと思っていますけど、これを機会にスピーキングやリスニングといった力も少しずつ、生徒の勉強のモチベーションになるのではないかなと思っています。」(大手前高校・進路指導主事 竹田賢司先生)

高校2年生の生徒たちは…

「TOEFL(留学希望者向けテスト)を受ける予定しています。試験もいろんな種類があって、どの試験を受けた方がいいのか、まだ迷っている感じはあるんですけど。」(女子生徒)

「特にスピーキングとかは自分が苦手な部分なので不安です。学校の授業を信頼しています。」(男子生徒)

ただ、前例がないだけに不安もあるそうで…

「個々の検定試験がまだまだ不確定というか、まだ決まっていない検定試験もあるので。実際に決まっていても、それが本当に運用できるのかという不安もあるんですよね。本当に(試験の)場所が確保できるのか。」(大手前高校進路指導主事 竹田賢司先生)

実際、7月2日には「TOEIC」を運営する国際ビジネスコミュニケーション協会が「運営形態が想定よりも複雑だった」との理由で、共通テストへの参加を取り下げると発表し、当初8種類だった民間試験は7種類になりました。実施まで1年を切ったこの時点で、実際にどの試験が”いつ””どのように”行われるのか具体的なことがわかっていないのが現状です。

一方で「測る能力の違い」民間試験利用中止求める声も

こうした状況に、大学関係者や有識者からは、民間試験導入に反対の声があがっています。京都工芸繊維大学で英語教育にたずさわる羽藤由美教授です。羽藤教授は、独自の「スピーキング」テストを開発して入試に活用するなど、「話す力」「書く力」を重要視すること自体は賛成だと言います。ただ例えば留学希望者向けや英語学習の到達度を測るためのものなど、それぞれ異なる目的で作られている民間試験の結果を一律に比較するのには反対だといいます。

「体力が握力で測られたり、50m走で測られたりするのと同じような、(民間試験には)『測る能力の違い』がある。こういう不公平なものに基づいて試験を行うことはできないと思います。」(京都工芸繊維大学 羽藤由美教授)

また、民間試験の受験料は、安いものでも6000円、中には2万円を超えるものもあり、羽藤教授のもとには、受験生から「これ以上、経済的負担を親にかけられない」といった切実な声が届いています。

「高校3年生の忙しい、精神的にも追い詰められる時期に、高いお金を払って、もしかしたら遠いところから(試験を)受けに行かなければならない。」(羽藤由美教授)

こうした声を受け、羽藤先生は今年6月、同じ思いの大学教授らとともに約8000人分の署名を集め、民間試験の利用を中止するよう国に求めました。

「受験生にとっては本当に人生をかけた大きなチャレンジですよね。いったん立ち止まるべきだと思います。」(羽藤由美教授)

一方、国は反対の声にどう考えているのでしょうか。文部科学省の大学入試室はMBSの取材に対し”目的の違う民間試験を一律に評価できない”という指摘については、「民間の結果をどう活用するかは各大学の判断です」と回答。”検定料の負担が大きい”ことについては「なるべく安くしてもらえるように民間の試験団体に依頼しています」答えました。
来年4月の制度開始まであと9か月。先の見えない不安を抱えながら、受験生たちはきょうも勉強に励みます。

「学校から英検は絶対受けるように言われていて。志望校と関係なく受けなさいと言われています。」(高校2年生男子生徒)

「ちょっと焦っています。けっこう焦っています、実際。」(高校2年生男子生徒)

(『特命取材班・チームF』より)
※このコーナーは女性スタッフが企画を出し合い、調査・取材をするコーナーです。

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