MBS 毎日放送

ミント! ミント!

毎週月~金曜日 ごご3:49~放送関西のニュースは毎週月~金曜日 ごご4:30~放送

特集記事

【特集】「アフターピル」を市販薬に...声をあげる女性たち

2019年06月21日(金)放送

SHARE
Twitter
Facebook
はてなブログ
LINE

「アフターピル」という薬をご存じでしょうか。避妊が失敗したあとに飲む緊急の避妊薬です。性交後にできる避妊として、望まない妊娠を防ぐ「最後の砦」とも言われています。今は医者の処方が必要なアフターピルを薬局でも手に入るようにしようと活動を続ける女性を取材しました。

多様な避妊方法を広める活動をする女性、きっかけは…

『バイト先の店で店長に無理やりセックスをされました』
『初めてセックスをしたとき、彼が避妊をしてくれませんでした』

これらのメッセージはあるサイトに寄せられたものです。そのサイトは様々な避妊の情報が書かれているものでした。

「だいたい今、1日460人が日本では中絶をしています。妊娠した女性のうち6人に1人が日本では中絶している」(福田和子さん)

サイトを作ったのは福田和子さん(24)。今年3月に大学を卒業し、多様な避妊方法を広める活動をしています。この日は国際基督教大学の学生らに海外での避妊のケースなどを紹介しました。

「コンドームって、女性がつかう女性用のコンドームもあるの知ってました?避妊注射は1回打つと3か月間、避妊ができるというものです」(福田和子さん)

福田さんは大学で性に関する日本の産業の歴史などを学びました。いまの活動を始めるきっかけになったのは、留学先のスウェーデンでの経験です。日本と比べて性の支援が充実していることに衝撃を受けたと言います。

「避妊の選択肢があったり、アクセスが良かったり、若者でも気軽に安心して相談できる場所がある現状を目の当たりにして、あまりにも(日本と)違うなって。スウェーデンが特殊というより日本がその部分欠けてるなって感じたので、なんとかなってほしいというのがすごくあって、始めました」(福田和子さん)

福田さんが特に驚いたのがある薬でした。それが「アフターピル」です。アフターピルは避妊を失敗した、あるいは避妊をしなかった性行為の後に飲む緊急避妊薬です。性交後72時間以内の服用で81%の避妊効果があります。WHOはアフターピルを副作用の少ない安全な薬と認定していて、多くの国では薬局で数百円から数千円程度で販売しています。

2017年度の日本での人工妊娠中絶は16万4621件。避妊の失敗などによる予期しない妊娠は、女性の心と体に大きな負担を強います。さらに、厚生労働省によりますと、子どもの虐待死の49%が想定外の妊娠であることがわかりました。望まない妊娠は生まれてくる子どもの命にも影響を及ぼしているのです。こうした不幸を減らすために避妊のコントロールが必要ですが、日本では男性主導の避妊が一般化していることが問題だと福田さんは考えています。

「ちゃんと避妊をしようとして失敗した方もすごく多くて、コンドームだけ一辺倒になってしまうと、男性が本当にその気なくなったら、もうおしまい、みたいな。その脆弱性が圧倒的に女性にある状況になる」(福田和子さん)

アフターピル入手のハードル “高額な値段”と“気軽に相談できない”

望まない妊娠を防ぐため、性交後にできる避妊として〈最後の砦〉とも言われる「アフターピル」。しかし、日本で手にするには大きなハードルがあります。

医療用医薬品のため産婦人科など病院での受診が必要で、値段も約1万5000円(ジェネリック医薬品で約7000円)と高額です。福田さんのもとにも妊娠への不安を気軽に相談できないという悩みが寄せられています。

「産婦人科に行った先で、『なんでこんなことしちゃったの』とか、『なんでそうなったの、もうしないようにね』とか、そういう言葉を受けることがある。みんながみんなそういう先生じゃないけど、そういう声を聞くとハードルをすごく感じます」(福田和子さん)

「日本の性教育の在り方と性知識の乏しさを見直す必要」訴える女性

もう一人、福田さんと同じようにアフターピルの必要性を訴える女性がいます。「NPO法人ピルコン」の代表・染矢明日香さんです。染矢さんは中絶した経験から性教育の必要性を感じ、全国の中学・高校などを訪れ講演をしています。

「当時付き合っていたパートナーと思いがけない妊娠をして、自分がまさか当事者になるとは思っていなくて、いざ自分が妊娠して、全然情報がなくて困ったりとか、実は自分が正しいって思っていたことってあやふやな情報だったんだということをそのとき初めて実感した」(染矢明日香さん)

染矢さんが独自に行った高校生へのアンケートでは、正しい性の知識を持っているのは3割だけという結果でした。実際、高校の保健体育の教科書には避妊について載っているものの、学習指導要領では「各学校で必要に応じて指導する」となっています。染矢さんは、日本の性教育の在り方と性知識の乏しさを見直す必要があると考えます。

「アフターピルの知名度としては、私たちが高校生にとったアンケートだと21%。わたしの活動を通して初めて知ったという声も多く聞きます。自分の身体を守る手段を知っているか知っていないかで、人生が大きく左右されるというのは大切なことだと思う」(染矢明日香さん)

日本にある主な避妊法は男性のコンドームと、女性が毎日飲むことで高い避妊効果が得られる低用量ピルです。この2つを併用することが「適切な避妊法」とされていますが、日本では8割以上がコンドームのみの避妊です。低用量ピルは日本での浸透率がとても低く、日本家族計画協会の調べによりますと、わずか4%程度しか使われていません。

慎重論も「適切で確実な避妊法を浸透させるべき」

「アフターピルを市販薬に」と望む声がある一方、慎重論もあります。産婦人科医の田村秀子医師は「まずは適切で確実な避妊法を浸透させるべき」だと話します。

「緊急避妊薬は対症療法にしかならない。ベースにちゃんとした避妊をしていてこその緊急避妊です。簡単に手に入ると、失敗した時にあれ飲めばいいじゃんとなる」(産婦人科 田村秀子医師)

「自分事として主体的に考えてみてほしい」

避妊の失敗や妊娠の不安に悩む女性たちの声を聞いてきた福田さん。5月、厚労省や文科省の担当者らなどに対しその切実な思いを涙ながらに代弁しました。

「コメント書くのって面倒くさいじゃないですか、でもすごく書いてくれて。『車がなくて行けなかった』とか、『親の同意書がないからって帰された』とか、『レイプみたいなことされたのに、医者には“何しちゃったの”って言われた』とか、そんな状態に私たちはいるわけじゃないですか」(福田和子さん)

そして6月10日、厚労省はネットでの診療のみで処方ができるオンライン診療にアフターピルを限定的に解禁することを認める方針を決定しました。アフターピルをめぐる動きはまだ進み始めたばかりです。

「特別な人の問題じゃないって思ってほしい。コンドームが破れるって誰にでも起こり得るし、性被害に遭うことも誰にでも起こり得るし、アフターピルが必要になるって本当に誰にでも起こり得る。男性もパートナーが必要になるって本当に起こり得ること。自分事として、本当に自分が必要になったときに、どういうアクセスであってほしいかを主体的に考えてみてほしい」(福田和子さん)

(「Newsミント!」内『特集』より)

最近の記事

バックナンバー