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【特集】"死刑囚の息子"がつぶやく理由 和歌山カレー毒物混入事件から21年

2019年06月12日(水)放送

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21年前に起きた和歌山カレー毒物混入事件。10年前に死刑が確定した林眞須美死刑囚の長男が今、インターネットのツイッターを通じて情報を発信しています。「死刑囚の子」として葛藤の日々を送ってきた長男はどういう思いで何を語っているのでしょうか。

母親からの手紙を掲載

ツイッターのアカウント名は「和歌山カレー事件 長男」とされ、紹介画面には本人であることを証明するためか戸籍謄本が貼られています。このアカウントは今年4月に開設され、今年6月上旬時点のフォロワー数は約8000人。母親である林眞須美死刑囚からの手紙などがアップされています。

「母親との交流、過去資料等を日々お伝えしていきます」(ツイッターより)

事件発生当時10歳だった少年は31歳となり、和歌山市内の運送会社に勤めています。

Q.(男の子が写る)このプロフィール写真は?
「家族で七五三に行ったときの(写真)。袴の脱ぎ方がわからなくてトイレでおしっこをもらしてしまうエピソードがあって。きれいに残っているこの写真が僕として気に入っていて、この頃の自分からは想像もできないような未来にはなっているんですけど」(林眞須美死刑囚の長男)

「カエルの子はカエル」と言われ

1998年7月25日。和歌山市でカレーを食べた住民が次々に倒れ、小学生の男の子や女子高生ら4人が死亡しました。当初は青酸化合物が混入されたとみられていましたが、後に猛毒のヒ素が入れられていたことが判明しました。林眞須美死刑囚には4人の子どもがいますが、この年の夏を境にその人生が一変してしまいました。事件後、長男はきょうだいとともに児童養護施設に預けられました。

「職員の方が『やっぱりカエルの子はカエルだな』と、そういうふうに言われたのが記憶に残っていますね。あだ名が『ポイズン(毒)』だったり」(林眞須美死刑囚の長男)

4年後の2002年12月、一審の和歌山地裁は母親に死刑判決を言い渡しました。母親はその後も「全くかかわりがない」と完全否認しましたが、長男が21歳の時(2009年)に死刑判決が確定。最高裁は決め手となった証拠として、自宅から見つかったヒ素とカレー鍋のヒ素の成分の特徴が同じで、眞須美死刑囚の頭髪から高濃度のヒ素が検出されたことなどを挙げました。一方、最大の謎とされた事件の動機については確定判決でも不明とされました。

手紙で気づかされる“母親”

長男は死刑囚の息子であることをひた隠しにして生きてきましたが、母親のことがばれると仕事を辞めされられたり婚約が破談になるなど、自分の境遇を恨むこともあったと言います。今年6月1日、拘置所にいる母親から長男に届いた手紙には…

「3食は規則正しく栄養のバランスよく食べているのかしら?そうじ、せんたくは?と気にしてすごしています。車の運転にはくれぐれも毎日毎日毎日と気をつけるように!」(林眞須美死刑囚の手紙より)

この手紙について、長男はツイッターでこうつぶやいています。

「離れた時間が長過ぎて親子の感覚が薄れてしまっている時があります。ですが面会で会ったり送付される手紙を見るとやっぱり母さんだと気づかされます」(ツイッターより)

「ほとんど1人で生きてきているという状況で、たまに父親と会ったりはするんですけど。そのなかでこうやって母性をもって心配してくれている人っていなかったんですよね、他に。いまだにこうやって僕のことを心配して、手紙だったり送ってきてくれるのは母親しかいない」(林眞須美死刑囚の長男)

「母の言葉を信じる」

たったひとりの母親は今も無実を訴え続けています。弁護団は鑑定の結果、自宅から見つかったヒ素とカレーに入れられたとされるヒ素は同一ではないなどとして、再審=裁判のやり直しを請求。おととし和歌山地裁はこの請求を棄却しましたが、弁護団は大阪高裁に即時抗告。ヒ素の再鑑定などを求めています。

「『やっていない』という母親から逃げて、そのあと死刑が執行されたりすると見殺しにするような形になるんじゃないかとか、自分だけ籍を抜いて名前を変えて和歌山を離れて結婚でもして幸せに暮らす、それは僕としては幸せとは考えた結果呼べないんじゃないかなとか…いろいろ何回も葛藤しながら、今とりあえず出した答えっていうところですね」(林眞須美死刑囚の長男)

長男が出した答えは、やはり「母の言葉を信じる」ということでした。

「信じるという発言をすることは、世間からすると被害者遺族の思いだったり世間の思いを踏みにじる形になるので、軽々しく生半可に発言はできないなと何回も葛藤を繰り返してきて、家族という面で強く信じるという言葉を使っていますね」(林眞須美死刑囚の長男)

試行錯誤を繰り返し発信

ところが去年、長男に大きな不安を抱かせるニュースが飛び込んできました。オウム真理教の松本智津夫元死刑囚らの死刑執行です。その約2週間後に母親から届いた手紙には…

「『いつ殺されるのかもしれない』という思いは、四六時中、頭、体、心につきまとい襲ってくる毎日です」(林眞須美死刑囚の手紙より)

「僕はやっぱり寝る前だったりふとした瞬間に、フラッシュバックのように首にロープがかけられるのを想像してしまったりして、そういうこわさだったり不安はずっとあって」(林眞須美死刑囚の長男)

もうすぐ死刑が執行されるのでは…そんな不安から逃れるため「今、自分にできることをやっておきたい」というのもツイッターを始めた理由のひとつだといいます。寄せられる否定的な意見も飲み込みながら「死刑囚の息子」の終わりなき葛藤の人生が続いています。

「獄中死、刑の執行、再審開始決定のどれかが来る日まで、試行錯誤を繰り返し日々の生活を維持しながら発信を続けさせていただきたいと考えています」(ツイッターより)

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